スバルの2013年度世界販売台数は、およそ82万5,100台だった。前年比で13.9%増という驚異的な伸びだが、これを牽引するのが米国での好調な販売状況である。同期の米国販売台数はおよそ44万1,800台。スバルのクルマは現在、半分以上が米国で売れているのだ。

スバル新型「レガシィ B4 Limited」。6代目「レガシィ」は「アウトバック」「B4」のみの展開となる

同期の国内販売台数は約18万1,600台だから、米国の売上はおよそ2.5倍となる。しかし、ほんの5年前までは国内と米国の販売台数にさしたる違いはなかった。2008年度の米国販売台数はおよそ18万8,200台。対する国内販売台数は17万8,800台である。

この極端なまでの米国市場シフトに貢献したのが、先代の「レガシィ」シリーズであることは間違いない。4代目に比べて全長で100mmほど、全幅で50mmほど拡大した5代目「レガシィ」は、国内では賛否両論を巻き起こした。今年フルモデルチェンジされた6代目「レガシィ」もまた、このボディサイズ拡大路線を継承したものとなっている。

セダンに求められる品格を満たし、アウトドアに溶け込む柔軟さも

新型「レガシィ B4」の全幅1,840mmというサイズは、トヨタ「クラウン ロイヤル」よりも40mm広い。初代「レガシィ」は、トヨタでいえば「コロナ」「カリーナ」あたりが競合車種にあたっていたことを考えると、隔世の感がある。だからこそ、4代目までの印象が強いユーザーは、新型「レガシィ」は当時と別物と考える必要があるだろう。

新型「レガシィ B4」では、「スバルのセダン」として欠かせない基本性能を磨き込み、質感を大幅に高めたという

搭載されるのは2.5リットルの水平対向4気筒エンジン。これに近年のスバルが力を入れるCVTを組み合わせている。大型のセダンボディに対し、最高出力175PSのエンジンとCVTでは不足を感じるのではないか? との疑問は当たらないと言っていいだろう。4WDにもかかわらず、車両重量は1,530kgと軽め。前述の「クラウン ロイヤル」と比べれば、ちょうど100kg少ない。軽快な走りが楽しめる。

タイプとしては、完全にグランドツーリング向け。疲労感のないゆったりした走りを長距離味わうのに適しており、峠道をくねくね走りたいなら「WRX S4」あたりを、という意図が感じ取れる。だが、大型セダンとなってもコンフォート性より、スポーティ性を主張しているところは、なんだかんだいって、やはりスバル車だという印象を受けた。

デザインは内外装ともじつにコンサバティブ。象徴的なのはインテリアで、こちらもコンフォート性よりスポーティ性が強くにじみ出ているデザインだ。「マークX」と「クラウン」、「アコード」と「レジェンド」、「スカイライン」と「フーガ」など、なぜか一定のボディサイズを超えると、スポーティとコンフォートがくっきり分かれる日本のセダン界だが、「レガシィ B4」は大型化してもスポーティ側にとどまっている印象だ。

エクステリアは、ボディサイズの拡大をデザイン上、有効に活用したとのアナウンスがあったが、筆者はその恩恵をあまり感じなかった。ともあれ、冠婚葬祭なんでもござれのセダンに求められる品格といったものは十分以上に満たしている。一方で、アウトドアの雰囲気に溶け込む柔軟さもある。

とにかく新型「レガシィ」の改良は地味だ。走りもデザインもインテリアも、真面目にコツコツとブラッシュアップしたことはわかるのだが、日本市場には少々持て余すサイズであることも含め、2~4代目あたりのようなスポットライトを浴び続ける役目は期待しづらい。つまり、圧倒的に「通」好みのクルマになったという印象だ。

ただ、繰り返すようだが、つくり自体はじつに誠実。このデザインに惚れ、大型化したボディサイズも願ったりかなったり、というユーザーにとっては、きわめて満足度の高い1台になるのではないだろうか?