いよいよやってきたボージョレ・ヌーヴォー解禁日
今年もこの日がやってきた。11月第3木曜日。
そう、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日である。日本にこのイベントがやってきたのは1985年だから来年でもう30年、もはや日本でもボージョレ・ヌーヴォー解禁を知らない人はほとんどいないだろう。
事情はわからないが、昨年は行われなかった「ボージョレワイン委員会」による今年のボージョレ・ヌーヴォーの報告記者会見とテイスティングが東京都・飯田橋の「アンスティチュ・フランセ」(旧日仏学院)で行われた。
気になる今年の出来映えは後述することにして、そもそもボージョレ・ヌーヴォーとは何か、簡単におさらいしてみることにしよう。
フランス中東部の南北に長いブルゴーニュ地方の南端部分に位置するボージョレ地区。ここで造られる新酒がいわゆるボージョレ・ヌーヴォーだ。その年の秋(9月)に収穫された若飲み用に適するブドウ品種、ガメイを100%使い、短期間で発酵させてできたワインのことである。
さらに、ボージョレ地区にはクリュ・ボージョレ(10の村)、ボージョレ・ヴィラージュ(38の村)、ボージョレの3つに分かれていて、そのうちヌーヴォーを造っていいのはボージョレとボージョレ・ヴィラージュで、クリュ・ボージョレはヌーヴォーを造ってはいけない。1950年代にこの新酒の解禁に関する大きな動きがあり、何度か解禁日は変動したものの1985年に現在の11月第3木曜日に落ち着き、日本は最初の年からのおつきあいとなる。
ティエリー・ダナ駐日フランス大使は、もともと新酒はブドウの収穫が終わって一息ついたヴィニュロン(農夫)たちが「おつかれさま」の意味をこめて飲んでいたありがたいもの。「いち早く飲めるだけじゃない、そこには文化遺産的意味もある」とヌーヴォーの意義を強調した。
「エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい 期待が持てるヴィンテージ! 」
"50年に一度"といわれた2009年から3年間は安定した品質が続いた後、特質すべき年にはならなかった一昨年と昨年であったが、どうやら今年は喜んでいいヴィンテージとなったようだ。
春先の晴天続きでブドウは順調に育ち、夏には雨で気温が低いこともあったが、9月の収穫期には再び天候は回復し、ブドウは完全に熟した状態で収穫できたという。
来日したボージョレワイン委員会会長のジル・パリス氏は、「自然の女神が私たちを甘やかしてくれた」と天候の恵みをたたえた。さらに今年の出来栄えを「アロマがひき立ち、しなやかさがあり、タンニンも溶け込んでエレガント、ストラクチャーも強いし余韻も長い、完璧なバランス」とこれ以上ポジティブな言葉はないほどの賛辞を並べ、2年連続で輸出量が落ち込んでいるというヌーヴォーの市場もこの2014年のヴィンテージで回復できるだろうと自信を見せた。
2014年のお味は?
というわけで、今年のヌーヴォーをテイスティング。会場に並べられた86種類のワインすべてを試飲するのは無理だったが、色調は極めて濃い。ダークパープルで、グラスに注いだら向こう側が見えないほど。ほとんどのワインがこの色調だった。
香りと味わいは造り手によってまちまち。傾向としては、ボージョレのほうが通常ヌーヴォーで表現されるイチゴやラズベリーといった赤い果実を連想させるものが多く、色とのギャップがある。味わいに関してはタンニンをそれほど感じずフルーティー。一方ボージョレ・ヴィラージュは、ブラックベリーや煮詰めたチェリーのような黒い果実系の香りが目立った。タンニンはあるが、いたって滑らかでふくよかなボディの印象。いずれも果実味の凝縮感がすごい。確かに、2014年は期待が持てるかもしれない。
ともあれ、我々にとっては年に一度のお祭りである。ヌーヴォーというこの時期ならではのツールを使って、仲間が集い、おいしいものを食べたり楽しくおしゃべりをしたりすればいいのである。今年も大地の恵みに乾杯!