あなたは仕事で「万年筆」を使っているだろうか。クライアントと向き合う時、社内のちょっとした打ち合わせのとき、スーツの胸ポケットから、あるいはシックなペンケースから、すっと万年筆を取り出すと、それだけで「あいつ、やるな」という空気が生まれそう。今回は万年筆の「インク」について、セーラー万年筆 西本さんにお話を伺った。

西本さんは現在、日本橋タカシマヤのセーラーフレンドリーショップに勤務、「ntさん@日本橋の万年筆屋さん(twitterID:@enu_tea)」として公式Twitterも運営している。万年筆ファンがはまるという「インク沼」って一体!?

インク沼とは?

西本さん:
万年筆のインクは黒や青のイメージがあると思いますが、最近は技術が進んでいまして、白系以外のインクでしたらほとんど表現できるんですよね。こちらは弊社の定番のカラーインクですが、かなり豊富な色合いでしょう。名前も日本の四季をイメージしています。好きな色を集めるうちに、「気づいたらこんなにインクが増えてしまった…」というのを、自虐して「インク沼にはまる」と言っています(笑)。

雪が降ったらグレー系の色が売れたり、その時のシチュエーションにあったものを求める方が多いのも、面白いですよね。明るい色を万年筆に入れて軸との組み合わせを楽しむとか、初音ミクちゃんカラーにしたり自分の推しメンのカラーにしたり、自己表現できる余地があるのも、万年筆とインク沼の面白いところです。

豊富な種類のインク。万年筆の軸と組み合わせるのが楽しそう

インクってどういう仕組み?

知れば知るほど深いインク。そもそも、どんな仕組みなのだろうか。

西本さん:
3つ代表的な入れ方があります。1つが、カートリッジインク。使い切りのインクですね。カートリッジをぐっと入れて、すぐに使うことができます。

こちらはカートリッジ式

2つ目は、コンバーターというものです。ボトルからインクを吸い上げる時に使う部品ですね。ちなみにこちらは先日twitterでも反響が大きかった万年筆なんですよ。赤インクなのですが、ペン先に赤インクが染みこんで素敵でしょう。個人的にスケルトンの軸がすごく大好きで。書く楽しさもありますが、眺める楽しさというのもありますよね。

コンバーター式

最後は吸入式。モンブラン、ペリカンは伝統的に吸入式モデルを使用していますが、最近は弊社を含む国産メーカーも採用しているモデルが増えてきています。ボトルインクの中にペン先を入れ、尾栓を回転させることでインクを吸入します。

インクで気を付けたいのは、乾き(ドライアップ)です。日常的に書いていれば問題ありませんが、「最近、万年筆で書いてないなぁ」という期間が2~3週間ほど続いた時は、1度チェックした方が良いかもしれませんね。お店にお持ちいただければ、簡単な洗浄やメンテナンスは無料で承ります。「何かおかしいなぁ」と感じたらお気軽にお持ち下さいね!

Twitterで反響が大きかったという、ペン先に赤インクが染みこんでいる様子

調子が悪くなったらそれまで、と消耗品のイメージが多い文具だが、手入れを続ければ長く使うことのできる万年筆。色とりどりのボトルを机に並べたら、かっこいいかも…と想像している時点で、インク沼に一歩足を踏み入れているのかもしれない。