国内で最大の大地を誇る北海道。広大な大地に加えて、アイヌ民族という文化的な広がりを持つ北海道ゆえに、名字にもその土地ならではの傾向がありそうだ。そこで調べたところ、北海道にしか見られないある傾向があった。「さいとう」さんの多さである。
1,2位は全国でも常連、3位はやや常連
北海道で1番多い名字は「佐藤」さん。北海道にはおよそ16万4,000人の「佐藤」さんがおり、「佐藤」さんは全国でも1番多い名字となっている。2位は「高橋」さんで、およそ9万6,000人。「高橋」さんも全国で3位という名字です。なお3位には、全国順位13位の「佐々木」さんがランクインしている。
北海道ならではで注目なのが、15位の「斎藤」さんと18位の「斉藤」さん。どちらも主な読み方は「さいとう」さんであり、2つの名字を足すと合計人数はおよそ6万4,000人で5位になる。全国で「斎藤」さんと「斉藤」さんが20位以内にランクインしているのは北海道だけであり、北海道は全国的に見ても「さいとう」さんが多い都道府県と言える。
70%が全国順位でもベスト30入り
蓋を開けてみると、北海道の名字ランキングベスト30のうち、70%が全国順位でも30位以内の名字であることが判明した。単純に、北海道の人口が全国第8位(2010年国勢調査人口より)だからということもあるだろうか、北海道ならではの歴史も一因かもしれない。
農民などにも名字が義務付けられた「平民苗字必称義務令」が発令された明治8年(1875)には「屯田兵」も施行され、開拓者などをきっかけに北海道への移住者が増加した。名字が一般化されるタイミングで北海道に人が集まったことは、今でも全国的に多い名字が北海道に多いのと、全く無関係ということではないだろう。
一方で開拓者の中には自分が初代ということで、新しい名字をつけたという人たちもいる。例えば、北海道には「歳桃(さいとう)」さんという名字がみられる。「歳桃(さいとう)」という名字は東北から移民してきた方の子孫という説もあり、上記の通り、人数の多かった「さいとう」さんの一部がこの名字を名乗ったと考えられる。
全国に10人など、アイヌゆかりの希少姓も
他にも、北海道に関連する名字としては、アイヌ語を起源とする珍しい名字や地名がもとになった名字が存在している。例を挙げると、「珍名」さんは全国におよそ20人しかいないとても珍しい名字だが、語源はアイヌ語で足を意味する「チン」、水や川を表す「ナ」から来ているとされている。
「知里」さんは全国におよそ10人の希少姓で、由来はアイヌの豪族チリパ・ハエプト翁と言われている。北海道の地名に由来を持つ名字としては「門別」さんもあり、北海道沙流郡門別町(現在は日高町)がルーツとなってる。他にも、地名に由来する「旭川」さん、雪に関連し北海道にみられる珍しい名字として「煮雪(にゆき)」さんなどがある。どちらも全国におよそ10人の珍しい名字だ。
北海道には本州などから移民としてやってきた名字の人、移民後、新しくつけた名字の人、アイヌをはじめとした北海道に関連したルーツの名字の人が住んでいる。名字が土地や歴史と密接に結びついているといわれていることも納得できる。
※ランキングは、月間400万アクセスの「名字由来 net」アプリと「名字由来 net(Web)」の名字データベースから、電話帳データをもとに北海道・全国で実世帯が確認できるもののみを集計し、人数の多い順に抽出。100人未満四捨五入により算出している。本文と写真は関係ありません
筆者プロフィール : 名字由来 net(リクルーティング スタジオ)
月間400万アクセスの「名字由来 net(アプリ・Web)」や月間200万アクセスの「無料 赤ちゃん名づけ」アプリなど、名字・名前・家系図に特化したサービスをアプリとWebで提供している。「名字由来 net」はApp Store 総合第1位200万ダウンロード、「無料 赤ちゃん名づけ」は App Store ジャンル第1位の実績。2014年5月には、名字情報を生かしたシミュレーションゲームアプリ「戦国村を作ろう」をリリースした。