屋内と屋外では、熱中症になったときの対処法が異なるってご存じ?

屋外で熱中症になってしまったときの対処法を知っている人は多いだろう。だが意外かもしれないが、屋内にいても、たとえ睡眠中だとしても熱中症になりうるのだ。では、その対処法は屋外のものと一緒なのだろうか。熱中症研究の第一人者である横浜国立大学教育人間科学部の田中英登教授に聞いてみた。

屋外での熱中症対処法

まず、屋外での熱中症対策についてしっかりと理解しておこう。環境省が主導となってまとめている「熱中症環境保健マニュアル2014」にもあるが、ポイントは大きく分けて4つある。

涼しい場所への避難

風通しがよい日陰やクーラーが効いている室内などに避難させる。

脱衣と体の冷却

衣服を脱がせて、体から熱を放散させやすくする。ベルトやネクタイなどはゆるめて、風通しをよくさせてやるとよい。続いて、露出させた皮膚に水をかけて、うちわなどで体を冷やす。このとき、氷のうなどがあれば脇の下や太ももの付け根の前面、股関節部分などに当てるようにしよう。体表近くに太い静脈がある場所を冷やすのが、最も効果的だ。また、体の冷却はできる限りすばやく行うのがよい。

水分と塩分の補給

冷たい水を飲ませることで、胃の表面から体の熱を奪う。大量の発汗があった場合は経口補水液やスポーツドリンク、食塩水(1リットルの水に1~2gの食塩を含む)が有効。意識がはっきりしているようだったら、冷やした水分をしっかりと与えることが大切だ。

医療機関へ運ぶ

自力で水分摂取ができないようだったら、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処法だ。医療機関で輸液などをしてもらい、肝障害などのチェックをしてもらうことが好ましい。

屋内での熱中症対処法

一方、屋内ではどうだろうか。田中教授によると、屋内では脱水症状を起こすことで熱中症になることが多く、睡眠時にもあてはまるという。睡眠時の熱中症の対処法ポイントは、「焦らずに様子をうかがう」だ。

「睡眠から目が覚めた直後は血圧が低下している状況ですから、立ったときにふらついて倒れてしまうことがあります。脱水により、熱失神(立ちくらみ)などを伴う軽度の熱中症状態になっていたらなおさらです。そのため、ベッドからすぐに起き上がることなく、横になったままで水分補給をして、少し体の状態を見てから活動することが大事になってきますね。摂取する水分も、真水よりも塩分が入っているスポーツドリンクなどの方がいいです」

対処法が屋外と屋内で異なる熱中症。「備えあれば憂いなし」という言葉もあるように、しっかりと事前に対処法を知っておくことで、いつ「その時」がやってきてもいいようにしておこう。

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記事監修: 田中英登

横浜国立大学教育人間科学部の教授(保健体育講座)でもあり、医学博士でもある。主な研究課題は「運動時の体温調節機構に関する研究」「スポーツ活動時及び生活における熱中症予防」などで、セミナーや講演などで熱中症にまつわる正しい情報の発信にも努める。