「日本で一番高いところに行ってみたい」。そうした想いに"世界遺産登録"という要素も加わって、富士登山に憧れを抱いている人もいるだろう。筆者もそのひとりであった。とはいえ、登山経験はほぼゼロ。そこで、標高3,776m・地上との気温差約20度という富士山に、登山経験があまりない人が挑むにはどうしたらいいのか、登山して分かったことをまとめてみた。

富士登山を楽しむには前準備が欠かせない(須走ルート七合目~本七合目)

まず、第一に言えることは「万全な準備なしに富士登山はできない」ということ。今回、登山歴の長い友人に登山計画の段階からサポートしてもらい、登山を決行した。そもそも富士山には4つの登山ルートがあり、開山日もそのルートによって異なる。また、五合目の駐車場に自家用車の駐車を規制する「マイカー規制」もある。

開山期間
・山梨県側(吉田口):7月1日から9月14日まで
・静岡県側(須走口): 7月10日から9月10日まで
・静岡県側(富士宮口、御殿場口): 7月18日から9月10日まで

マイカー規制
・吉田口
7月10日17時から8月31日17時まで

・富士宮口
7月10日17時から9月10日17時まで

・須走口
7月11日12時から7月13日12時まで
7月18日12時から7月21日12時まで
7月25日12時から7月27日12時まで
8月1日12時から8月24日12時まで
8月29日12時から8月31日12時まで
9月5日12時から9月7日12時まで

・御殿場口
マイカー規制なし

開山期間に合わせて山小屋宿泊付きのバスツアーも組まれているが、個人で行く方法もある。今回、筆者たちは個人で行くことにし、以下の条件を踏まえて計画を立てることにした。

優先する条件
・身体への負担も考慮し、安全なプランを
・混雑回避

優先しない条件
・山頂でのご来光

須走口五合目へは御殿場駅から登山バスに乗る

登山者は休日に集中するため、混雑を回避するために日曜日に五合目に入り、登山は月曜日に実施することにした。ルートは「富士登山オフィシャルサイト」を参考にして、須走ルートを選択。須走五合目までは最寄りの御殿場駅から登山バス(約1時間)が走っている。なお、都内から御殿場駅に行くには電車のほか、小田急箱根高速バスを使って、新宿や横浜、羽田空港からアクセスすることもできる。

今回、「高度障害(高山病)」を回避するため、五合目の山小屋に宿泊することで高度順応(高度順化)をすることにした。また、須走ルートの上りには、各合目(六合目、本六合目、七合目、本七合目、八合目、本八合目、八合五勺、九合目)に休憩できるスポットがあるので、その都度5~30分程度の休憩を入れてプランを立てた。

以下は「富士登山オフィシャルサイト」を参考にして作成した筆者たちの登山計画である。休憩を入れて上りは6時間30分、下りは3時間で予定を立てたが、こちらはあくまでも一例である。筆者は登山経験はほぼゼロだが、毎日何かしらの運動をしており、多少は体力がある方なので、実際に自分ならどのくらい休憩した方がいいのかは、各自で考えていただきたい。

各合目には休憩ができるスポットが用意されている(須走口七合目)

上り
03:30 須走口五合目出発
04:00 休憩(10分)
04:40 六合目到着(10分休憩)

04:50 六合目出発
05:20 本六合目到着(10分休憩)

05:30 本六合目出発
06:20 七合目到着・朝食(30分)

06:50 七合目出発
07:20 本七合目到着(10分休憩)

07:30 本七合目出発
08:00 八合目到着(5分休憩)

08:05 八合目出発
08:25 本八合目到着(5分休憩)

08:30 本八合目出発
08:50 八合五勺到着(10分休憩)

09:00 八合五勺出発
09:30 九合目到着(5分休憩)

09:35 九合目出発
10:05 吉田須走口山頂(休憩20分)

10:25 お鉢めぐり(90分+昼食30分)
12:25 お鉢めぐり終了(休憩10分)

下り
12:35 吉田須走口山頂出発
13:05 本八合目到着

13:05 本八合目出発
13:15 八合目到着

13:15 八合目出発
13:30 本七合目到着(10分休憩)

13:40 本七合目出発
13:55 七合目到着

13:55 七合目出発
14:45 砂払い五合到着 (10分休憩)

14:55 砂払い五合出発
15:35 須走口五合目到着

登山にあたり、準備したものは以下である。筆者は用意していなかったが、登山中、多くの人がストックを使用していた。山小屋でもストックよりも太い木の棒(金剛棒)を売っており、また、記念の焼き印もしてくれるので、現地で仕入れてもいいだろう。そのほか、山頂の寒さを考えると、ホットドリンクが飲める保温性のある水筒があると心強い。こちらも登山計画同様、体質なども考慮して自分に合った用意をしよう。また、山小屋に泊まる人は、着替えや歯磨きセット、防寒具などの用意も必要となる。

登山路には岩肌が粗い道もある

登山中に身に付けていたもの
・速乾性の素材を使った長袖シャツ
・ストレッチ素材の半袖シャツ
・ストレッチ素材の長ズボン
・スパッツ
・スポーツ用ソックス
・登山靴
・帽子(ハット)
・アイウエア
・手袋
・時計

登山中にバックパックに入れていたもの
・レインウエア(上下)
・フリース
・予備の速乾性の素材を使った長袖シャツ
・水・飲料(1.5L程度)
・朝食(おにぎりセット)
・行動食(登山中に食べるあんぱん、梅キャンディ、チョコレートなど)
・日焼け止め
・タオル(砂ぼこり対策)
・ヘッドライト
・お金(トイレにも使うため小銭を多めに)
・ザックカバー
・携帯電話
・カメラ
・ルートマップ
・筆記用具
・ウェットティッシュ
・ゴミ袋

持参していなかったが必要・便利だと思ったもの
・ストック
・トイレットペーパー(登山中のトイレ使用のため)
・救急セット
・保温性のある水筒
・酸素ボンベ

スマートフォンの通信環境に関しては、「富士山で3キャリアの通信速度をチェックしてきた」を参考にしていただきたい。次は、実際に登山して分かったことや、富士登山にかかる費用などをまとめて紹介しよう。

※記事中の情報は2014年7月取材時のもの