お金は、"節約しなきゃ"と思いながら漫然と使うより、「使う時は思いっきり使う」「ここは引き締める」というメリハリを利かせた方が結果的には貯まります。では、メリハリ遣いができるようになるためにはどうしたらいいのでしょうか? Amazonのビジネス部門ランキングで1位にもなった『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ 飛ぶように売れるのか?』の著者である、ブランド・コンサルタント江上隆夫さんに話しをうかがいました。
無印良品が売れる理由は"コンセプト"にあり
江上さんによると、「無印が売れている最大の要因は、無印良品の"コンセプト"にあると考えています。無印良品は"コンセプト"がすごい。"コンセプト"をつくる力、使う力がすごいのです」とのこと。ちなみに無印の"コンセプト"のポイントは、「これがいい」ではなく「これでいい」としたこと。「これがいい」「これでなくてはいけない」というような強い嗜好性を誘う商品ではなく、「これでいい」という理性的な満足感を追求しています。
こうした"コンセプト"は幅広い分野で重要になると江上さんは考えています。「明確な"コンセプト"は、力を一点に集中させます。その結果、全ての活動に大きな推進力を与えます。"コンセプト"には力を束ねる性質があるのです」(江上さん)。
"コンセプト"を使ってお金を貯める
では、この考え方をお金を貯めるために活用してみましょう。自分のお金に対しての"コンセプト"(=自分はどういった方向にお金を使う人間なのか?)がしっかりしていると、お金の使い方にメリハリが出て、結果、お金が自然に貯まるというサイクルがつくれるはずです。
その、お金についての"MYコンセプト"をつくるには、どうしたらいいでのしょうか? 江上さんいわく、「あなたがお金を使って手に入れたいのは、モノでもサービスでもなく、何らかの"心理的な価値"です。自分が必要としている"心理的な価値"は何か? それを考えてみることが、あなたのお金についてのコンセプトを考える重要なヒントになります」とのこと。
また、「例えば、ファッションなどで憧れの商品を手に入れることは、"自己重要感"(自分のことを価値ある存在に感じること)を手にいれることにほかなりません」と、江上さんは言っています。
"コンセプト"をライフスタイルに落とし込む
具体的に考えてみましょう。筆者は家計簿をつけながら、「どこにお金を使うと自分は満足するのか? 反対に、どのお金は抑えることができるのか?」などと、いつも自問自答しています。筆者の"MYコンセプト"は、「心地よいわが家で、大切な人たちとの時間を過ごす」です。ですから家は何度もリフォーム(イメージとしてはカスタマイズが近い)していますし、食器やタオル、シーツといった生活雑貨にもお金をかけます。
反対に、出歩くのが好きではないので、家族での外食もめったにしませんし、友人との会食は、自宅でのランチかホームパーティーが多いです。わが家は別名「公民館」。人が集まる場所としてコップやお皿、お箸といった備品もそろっています。
これらを単価で考えてみます。例えば、家族で外食を月に2回したとすると、月額3万円(1回1万5,000円X2回、子どもは食べ盛りの男の子3人なので外食費は割高です)になります。友人との会食はランチ2回と夜の飲み会1回として計算して、月額1万4,000円(ママ友とのランチ会単価は3,000円前後程度、夜の飲み会は8,000円)。
これらのほとんどを「我が家」で済ませられると、年間およそ50万円前後を「心地良いわが家」にかける費用として捻出できます。つまり、この50万円を存分に活用できるので、"節約"の意識なく好きなことを好きなようにし、気がつけばお金に余剰が出ていた、ということにつながってくるのです。
トライ&エラーで"コンセプト"を磨く
当たり前ですが、1回コンセプトを作っただけではお金は貯まりません。「つくって、使う。使って、変える。結果を見て、効用に気づく」と江上さんは表現していますが、トライ&エラーで"コンセプト力"を磨くことが大切です。
筆者も子どもが生まれるまでは、「心地よい空間で、大切な人たちとの時間を過ごす」という"コンセプト"だったので、外食費に多大はお金を支払っていました。こうして"コンセプト力"を磨く=自分のお金に対しての基軸をしっかり自覚し、トライ&エラーをしていくことが、お金を貯める力となっていくことでしょう。
※本文と写真は関係ありません
プロフィール : 江上 隆夫(えがみ たかお)
ブランド・コンサルタント/クリエイティブ・ディレクター:ココカラ代表取締役。大手代理店で20年近く広告とブランド構築にかかわり、コンセプト力を磨く。2005年独立後は数億から100億単位の広告制作やブランド運営に行っている。主な受賞歴に朝日広告賞、日経広告賞グランプリ・優秀賞、日経金融広告賞最高賞、東京コピーライターズクラブ新人賞など。今年出版の初の著書『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか』が3万部超のベストセラーになった。ブランドカンパニーラボ
筆者プロフィール : 楢戸 ひかる(ならと ひかる)
1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。生活に役立つ情報を「主婦er」にて更新中。