出産は家族が1人増えるといううれしい出来事だが、当然のように今後、金銭的な負担も増える。出産に関する一時金や給付金など、もらえるものはしっかりと請求してもらって今後に備えよう。出産前後はバタバタとしてしまって忘れがち。前もってチェックしておこう。今回はファイナンシャル・プランナーの内田まどかさんに出産に関する一時金・給付金について解説していただく。
「出産一時金」
まずもらえるものの王道「出産一時金」は、どの健康保険に入っていてももらえます。妊娠4カ月以降の出産(流産や人工中絶でも可)が対象で、出産時に42万円(産科医療補償制度に加入していない病院での出産や在胎週数などが要件に達していない場合は39万円)もらえます。また、行政や勤務先により「付加金」や「お祝い金」がもらえることもありますが、申請しないともらえないことが多いので、調べてみましょう。
出産一時金も事前申請が必要ですが、自分で受け取らず、病院に直接払うこともできます。出産費用は高額なので、足りなければ差額を支払い、あまれば差額を受け取ります。
「出産手当金」と「傷病手当金」
仕事を続けようと思っているママの中で、産休の間、給与の支払いがないか一部支払われない場合、「出産手当金」がもらえます。期間は出産前42日、出産後56日で、基本的には1日につき標準報酬日額の2/3の金額がもらえます。
つわりなどの体調不良でも、いわゆる「ドクターストップ」で働けなくなった場合は「傷病手当金」の対象になる場合もあります。「傷病手当金」とは仕事以外の病気やけがで連続して3日以上仕事を休んだ場合、4日目からもらえる制度です。1日当たりのもらえる金額は「出産手当金」と同じですが、重複した場合は「出産手当金」が優先されます。これは産休中の給料代わりなので、専業主婦や国民健康保険加入者は支給対象となりません。
「医療保険」
切迫早産や高血圧症候群で入院したり、帝王切開で手術をしたりした場合、生命保険会社などの医療保険に入っていると「入院給付金」や「手術保険金」の対象になります。帝王切開をした後に医療保険に加入していると対象外になっていたり、入院保険金に手術保険特約が付いていない場合もあるので、確認してみましょう。しかし、通常の分娩は病気ではないので対象にはなりません。
「高額療養費」と「医療費控除」
「高額療養費」は1カ月の医療費が自己負担分を超えた場合、医療費が戻ってくる制度。「医療費控除」は、1年間の医療費合計が10万円を超えた場合、超えた分だけ税金がかからないようにする制度です。医療費が戻ってくるのか、税金が戻ってくるのか、と考えると少しはわかりやすくなるかもしれません。
一般的な収入の人を例にすると、1カ月に8万円ちょっと医療費がかかると、超えた分は申請すれば戻ってきます。ですが、月末に入院して翌月はじめに手術となり、検査費用で前月5万円、手術費用に翌月5万円などと分散してしまった場合、残念ながら払い戻しはありません。
出産の場合、手術の時期などは自分で決められない場合も多いとは思いますが、ある程度選択できる余裕があれば同じ月にまとめてしまいましょう。
医療費控除に関しては、家族全員の医療費が10万円(もしくは所得の5%)を超えた場合、超えた分だけその年の収入から「控除」することができ、税金が戻ってきます。この「家族」には、「扶養している実家の母」なども含められるので、必ず全員分をまとめましょう。一般的には一番収入の多い人(多く税金を払っている人)で確定申告をした方が戻りがよいです。税金を払っていない人に戻る税金はありませんので、あくまで「税金を払っている人」です。
また医療費控除は、医療費合計額から出産一時金や手術給付金など、もらったお金は差し引き、さらに10万円引いた残りに対してなので、「労は多いけれど戻りは意外と少ない」かもしれません。しかし、通院のためにバスや電車などを使った場合は認められますし、出産時にタクシーを使ったときも認められますので、きちんと記録を取っておきましょう。