ブラジルで開催される「2014 FIFAワールドカップ」に臨む日本代表。アフリカ屈指のタレント軍団、コートジボワール代表との注目の初戦は、これまでにアフリカ勢と対峙(たいじ)したときの構図であった「組織力」対「個の力」を超越した先に、勝敗を分けるターニングポイントが存在する。
日本の「組織力」を超越するヤヤ・トゥーレの脅威
ワールドカップにおいて、日本はアフリカ勢に対して2戦2勝の結果を残している。日本の長所である「組織力」が、アフリカ勢が誇る「個の能力」を上回ってきたと言っていい。
しかし、日本時間6月15日の初戦で激突するコートジボワールは、これまで適用されてきた「勝利の方程式」を根本から崩しかねないタレントを擁している。その象徴がトップ下に入るヤヤ・トゥーレだ。
188cm、90kgの巨体ながら運動量が豊富で、スピードもある。味方を巧みに操る一方で貪欲にゴールも狙い、中盤における守備力も際立って高い。「組織力」を無に帰すヤヤ・トゥーレの圧倒的な「個の能力」は、日本にとっても未知の難敵となる。
ヤヤ・トゥーレをケアするのは、遠藤保仁と長谷部誠のダブルボランチが中心となる。しかし、意識が彼一人に傾き過ぎれば組織にほころびが生じ、ワントップに入る国民的英雄のディディエ・ドログバ、右サイドの高速ドリブラー・ジェルビーニョらの存在感が増してくる。
岡崎の「勤勉さ」に象徴される日本人特有の「個」が勝利に導く
守備におけるバランスをハイレベルで維持しながら勝ち点3を奪うことが、日本がグループリーグ突破を果たすための理想のシナリオだ。攻撃面では左サイドで遠藤、DF長友佑都、FW香川真司、FW本田圭佑らが組織的に絡み、コートジボワール守備陣を何度も混乱に陥れるだろう。
そして、左サイドから生まれたチャンスをゴールに変えるのがFW岡崎慎司の仕事となる。所属するマインツで、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人最多となる15ゴールをあげたストライカーの最大の武器は、地味な動きを愚直に繰り返せる「勤勉さ」にある。ザックジャパンにおいては、2列目の右サイドから相手ゴール前へ、最終ラインの裏を執拗(しつよう)に狙い続ける。無駄走りに終わることをまったく厭(いと)わないから、最後は相手が根負けする。
ヤヤ・トゥーレがもたらすコートジボワールの脅威に屈することなく「組織力」を保ち続けたところへ、岡崎が持つ日本人ならではの「個の能力」が上塗りされたときに、日本が勝利する確率が大きく跳ね上がる。
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筆者プロフィール : 藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。