「2014 FIFAワールドカップ」に出場できる23人のサムライの顔ぶれやいかに(写真と本文は関係ありません)

6月にブラジルで開催される「2014 FIFAワールドカップ」に臨むザックジャパンのメンバー23人が、いよいよ5月12日に発表される。これまでにも、数々の悲喜こもごものドラマが生まれてきたこの瞬間。今回はどのような歴史が刻まれるのか、サプライズ組を含めて顔ぶれを大胆に予想する。

長谷部は故障が癒えなくても「確定」

【確定組】

GK: 川島永嗣(スタンダール・リエージュ)、西川周作(浦和レッズ)

DF: 今野泰幸(ガンバ大阪)、吉田麻也(サウサンプトン)、森重真人(FC東京)、長友佑都(インテル・ミラノ)、内田篤人(シャルケ)

MF: 遠藤保仁(ガンバ大阪)、長谷部誠(ニュルンベルク)、山口蛍(セレッソ大阪)

FW: 本田圭佑(ACミラン)、岡崎慎司(マインツ)、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)

今年に入って右ひざを2度も手術し、長期離脱を余儀なくされている長谷部。しかし、個性的な集団をまとめられる卓越したリーダーシップには、アルベルト・ザッケローニ監督も全幅の信頼を置いている。たとえ万全の状態に戻らなくても、4年間の軌跡を刻んできたザックジャパンの不動のキャプテン&精神的支柱としてメンバーに名前を連ねる。

インテル・ミラノの主力として活躍する長友佑都は、ほぼ間違いなく23人に名を連ねるだろう

柿谷と大迫の不安要素は大舞台での経験不足

【有力組】

GK: 権田修一(FC東京)

DF: 酒井高徳(シュツットガルト)

MF: 青山敏弘(サンフレッチェ広島)

FW: 柿谷曜一朗(セレッソ大阪)、大迫勇也(1860ミュンヘン)

左右のサイドバックを務められるユーティリティープレーヤーの酒井高は「ポスト長友&内田」で、長短のパスでゲームを組み立てられる青山は「ポスト遠藤」で、それぞれメンバー入りを果たす。ワントップ候補の柿谷と大迫の懸念材料は、国際舞台における経験不足。大迫は海外へ挑戦の場を求めて結果を残しているが、柿谷はJ1で開幕から10試合連続で無得点にあえぐなど、一抹の不安はぬぐえない。

ここまでで18人。残る5枠は「当落線上組」と「サプライズ組」を合わせて考えたい。

大穴・塩谷がクローズアップされる理由

【当落線上組】(△は当落線上組内での有力選手)

DF: 伊野波雅彦(ジュビロ磐田)、酒井宏樹(ハノーファー)

MF: △細貝萌(ヘルタ・ベルリン)、△中村憲剛(川崎フロンターレ)

FW: 清武弘嗣(ニュルンベルク)、乾貴士(フランクフルト)、齋藤学(横浜F・マリノス)、原口元気(浦和レッズ)、南野拓実(セレッソ大阪)、△豊田陽平(サガン鳥栖)、ハーフナー・マイク(フィテッセ)

【サプライズ組】(★はサプライズ組内での有力選手)

DF: ★塩谷司(サンフレッチェ広島)、田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)

FW: ★大久保嘉人(川崎フロンターレ)、佐藤寿人(サンフレッチェ広島)

DF陣の不安はセンターバックの吉田と右サイドバックの内田がともに故障明けという点だ。4月上旬に千葉県内で行われた代表候補合宿で、ザッケローニ監督は所属チームでセンターバックを務める塩谷と鈴木大輔(柏レイソル)を右サイドバックとしてもプレーさせた上で、こう総括した。

「それぞれが所属するクラブでやっていないポジションで、いけるかなというポジティブな反応があったことはよかった」。

鈴木は昨シーズンから、レイソルで何度か右サイドバックを務めている。指揮官の言葉の対象は、サンフレッチェの連覇に貢献した伸び盛りの塩谷だったと見ていいだろう。一人二役の選手がいれば他のポジションで枠に余裕が生まれるだけに、中盤における守備力とボール奪取能力に長(た)け、センターバックにも対応できる細貝を加えられる。

静かに「天命」を待つ大久保

ユーティリティー能力は前線にも求められる。ワントップと2列目のすべてのポジションを務められる大久保が加入すれば、攻撃の幅が大きく広がる。ザッケローニ監督は、2列目の左サイドから相手の最終ラインの背後をフリーランニングで突ける選手を求めている。大久保はうってつけの存在であり、前回の南アフリカ大会で主力を務めるなど、柿谷や大迫にはない大舞台での経験も持っている。

昨シーズンのJ1得点王に輝いた大久保の決定力の高さは、あらためて説明するまでもないだろう。2年以上もザックジャパンから遠ざかっているが、すべてを達観したように、メンバー発表直前の心境を「人事を尽くして天命を待つ」ということわざに凝縮させている。「それに尽きます。オレからは何も言えないからね」。塩谷とともに大久保がサプライズ選出される可能性は決して低くはない。

ザックジャパンの常連でもある清武は、ニュルンベルクの低迷に連動するようにパフォーマンスが低下。プレーが消極的で、相手に怖さを与えていない。ボランチとトップ下の両方でプレーでき、正確な縦パスを携えているベテランの中村が、大逆転でブラジル行きの切符を射止める余地は十分に残されている。

「ジョーカー」役に豊田をあげる理由

塩谷、細貝、大久保、中村で4人。残る1枠には、齋藤や19歳の南野らのドリブラーではなく、豊田が入ると見ている。試合の流れを変える「ジョーカー」役にはドリブラータイプが求められるイメージが強いが、豊田の武器である最前線における執拗(しつよう)な守備と柿谷や大迫にはないフィジカルコンタクトの強さ、185cmという高さもまた、「ジョーカー」の条件を十分に満たしていると言っていい。

試合終了後に精根尽き果てたかのようにぐったりとしている豊田の姿が、サガンの名物になって久しい。気力と体力の限界をはるかに超えて、まさに歯を食いしばって戦い抜くことができる豊田の存在は、ブラジルの地で過酷な戦いに挑むザックジャパンに必ずやパワーと勇気を与えるはずだ。

筆者プロフィール : 藤江直人(ふじえ なおと)

日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。