ただ、機体の故障や不具合にしろ事件にしろ、ひとつ指摘されるのは同便の安全管理の問題だ。偽造パスポートで簡単に搭乗できた事実は、セキュリティの甘さを指摘されても仕方がない。東南アジアではパスポートをはじめ偽造書類が多くつくりやすいと言われるが、その対策は万全だったのか。

マレーシア航空機が拠点としているクアラルンプール国際空港

日本の高い安全基準

また、事故や故障だったとすると安全管理の問題が出てくる。航空業界では国連に属する国際航空民間機関(ICAO)が中心となり、航空安全のためのロードマップを加盟各国に提供するなど、ここ最近は特に安全管理に力を入れているといえる。

特にアジア地域に絞ってみると、1990年代から2000年代に入ると安全性が格段に向上し航空機事故が激減している。ただ、細かく見ていくとどこまで厳しく管理するか。その最後の判断は国による。

思い出されるのはエアアジア・ジャパンが日本国内を飛んでいた時のことだ。アジア最大級の格安航空会社(LCC)であるエアアジアを親会社に持つエアアジア・ジャパンは、日本のANAとの共同出資によるLCCだったが、運航方針はエアアジア寄りだった。

そのため、ウェブサイトが日本人には使いづらい、サービスが日本的ではないなどと言われ、搭乗率の低迷などもあって2013年10月末で両社は提携を解消。エアアジア・ジャパンは日本国内線から撤退した(その後、ANAグル―プ100%出資のバニラエアとして運航を再開)。その撤退理由のひとつが、「日本とマレーシアの運航基準の違い。エアアジアが日本の基準の厳しさのために思うように路線を増やせず業を煮やした」(関係者)と指摘する声があるのだ。

アジアの空の問題点

一般に日本は運航基準、安全基準が厳しいと言われる。それを象徴するような出来事があった。エアアジア・ジャパンとジェットスター・ジャパンが国土交通省から厳重注意を受けた時のことだ。

両社が運航するエアバスA320型機では水平尾翼上部の駆動装置を定期点検する際、全体の目視点検に加え、ナットやワッシャーなどの構成部品が正しく取りつけられているかを点検するよう義務付けられている。ところが、両社は取り付け状態の点検をしないまま数カ月間飛行していたのである。

ICAOのデータによると、東アジアおよび東南アジアの座席供給量は2005年~2012年の7年間で43%も増えており、今後も需要・供給とも増大するのは間違いない。航空自由化も進んでいる。

先に自由化を進めたEUは前述したICAOの基準を元に独自に監査を行い、基準に満たないと判断した航空会社のリスト(いわゆるブラックリスト)を作成し、域内での飛行と離着陸を禁止している。この中には、フィリピンやインドネシアなどアジアに国籍を持つ航空会社もいくつか含まれている。

今回のマレーシア航空機の失踪から、こうしたアジア域内での安全管理の問題を考えざるを得ないのである。

筆者プロフィール : 緒方信一郎

航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『もっと賢く・お得に・快適に 空の旅を楽しむ100の方法』など。