6月2日の劇場公演でAKB48を卒業する大島優子が、宮沢りえ主演の映画『紙の月』(2015年公開)に出演することが23日、明らかになった。本作は、大島にとってAKB48卒業後、初めて出演する映画となる。

映画『紙の月』に出演した大島優子(右)と主演の宮沢りえ

原作は、直木賞作家・角田光代の同名小説。『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などで知られる吉田大八監督がメガホンをとった。宮沢演じる平凡な主婦・梅澤梨花が起こす、大金横領事件が描かれている。大島が演じるのは、梨花が契約社員として勤めるわかば銀行のテラー(窓口係)・相川恵子で、映画オリジナルの役。仕事に無頓着で欲するままに生きる天真爛漫な性格で、梨花の転落を加速させる。宮沢の7年ぶりの主演作で、先輩や上司の役には小林聡美や近藤芳正が名を連ねており、女優として独り立ちする大島にとって貴重な機会となった。

撮影を終えた大島は、「これほどまでに繊細な現場は初めてでした」と語る。「登場人物の心情が複雑に描かれていく中で、その歯車の1つとして、自分に与えられた役をどう演じるか考えることがとても面白かったです」と振り返り、「吉田監督のきめ細やかな指示は、自然体でリアルなキャラクターを作ってくださいました。もっと長い時間、監督のもとで学ばせていただきたかったです!」と名残惜しそうだった。

主演の宮沢については、「絹のような繊細さと強く美しい輝きを併せ持つすてきな女性で、完全に魅了されてしまいました。今回ご一緒できたことをとてもうれしく思っています」とコメント。共演の小林についても、「小林聡美さんはとても柔らかい雰囲気の方で、緊張していた私に気さくに話かけてくださいました。けれど、お芝居になると隅さん(小林演じる隅より子)が持つ厳しさや壁のようなものを感じ、いろいろな表情を持つ小林さんに惹き込まれてしまいました」とその魅力を伝えた。

一方の宮沢は、女優としての大島を「監督からの注文に対して、それを飲み込んで吸収して表現する瞬発力がある方だと思います」と評価し、「今をときめくAKBのメンバーの方ですけど、とても古風な瞬間と、キラキラしている瞬間があって、すてきです。色んな顔をもっているし、堂々とされているので、若いのに頼もしいなと感じています」とぞっこんの様子。小林も、「のびのびとしていて、明るくて、ほんとにすてきな女優さんだと思います。あらゆる世代に、同じオープンなマインドというか、年上の人だから固くなったりせず、みんなにフラットな感じでコミュニケーションがとれる方」と絶賛していた。

現場での大島は、吉田監督の目には「現実にしっかり根を下ろした存在感と、捕まえようとしてもうまくつかめない浮遊感を併せ持つ人」と映った。起用の理由は、「映画オリジナルの相川という役には、リアリティを前提としつつ、人間離れした悪魔的な雰囲気も求めていたので彼女がピッタリだと直感的に思った」。吉田監督は「この"相川"が、原作から出発して映画へとジャンプするためのキーとなる大事な役」と分析し、「この映画の切り札=ジョーカーとして期待してほしい」と太鼓判を押している。