不入流 師聖の古塩将人さん

汗ジミや食べこぼしなど、洗濯ではなかなか落とせない衣服のシミ。大切な服にシミができてしまったけど、どうすればいいか分からない…そんな困った経験をした方も多いのではないだろうか。そこで今回、宅配クリーニング「リネット」でシミ抜きを担当し、仕上がりの高品質を担っている"名人"古塩将人さんにお話を伺った。古塩さんは不入(いらず)流というシミ抜きの流派の師聖で、業界ではいわずと知れた達人だ。

短時間できれいに落とすのが不入流の極意

「不入流の一番の特徴は、短時間できれいに落とすことです。そのため、1日でたくさんの服をクリーニングすることができます。もちろん雑にやっているわけではありません。

もう一つの特徴としては、利用する薬品の数が少ないことが挙げられます。普通は、10~20種類は使うのですが、不入流では3~4種類だけです。これも短時間で落とすというところにつながるのですが、使う薬品が少ないほうがそれを選ぶ時間を短縮でき、その分、効率良くたくさんの服を洗うことができます。

元々、父がクリーニング店を経営しており、それを継ぐ形で始めました。実は最初は会社員として仕事をしながら、不入流の勉強をしていたのです。不入流の看板を背負って仕事ができるようになったのは、勉強を始めて1年後、師範になってからでした。その後6年ほどかかって、弟子を取っていいというレベル(師聖)になれました。もちろん、今でも勉強は続けています」

シミについての基礎知識

まずは、シミの種類について伺いたいのですが…

「シミの種類は主に2種類あります。一つは食べこぼし(6~7割程度) 、もう一つはえり、そで、すそ、わきのシミです。それと性別によっても、シミの種類は違います。男性はポケットに物や手を入れたりしているので、ポケットが汚れていることが多く、女性は化粧品の汚れや、夏などはノースリーブの上からジャケットなどを羽織っていたりするので、ジャケットのわき部分などがシミになっていたりします」

シミの種類によって、落ちにくいものはありますか?

「シミの種類では、たんぱく質のシミが落としづらいです。具体的には、卵、牛乳、血液などです。たんぱく質の汚れは温めてしまうと落ちづらくなるので、お湯などでふいたりしてはいけません。たんぱく質用の薬品を使ってシミ抜きを行います」

ちなみにたんぱく質のシミと、普通のシミの区別は、古塩さんの目視で判別している。たんぱく質のシミは、シミの境界線が少し盛り上がって見えるそうだ。まさに達人の目である。

「生地の種類で言えば、シルクやテンセルのシミを落とすのが難しいです。シルクは繊維が細かいため、ゴシゴシふくと糸切れが起きてしまいますので気をつけてください」