ハイヒールで足裏や足指の痛みに悩まされている人は多い

自分の足に合わないハイヒールは、親指が変形する「外反母趾」や曲がった指が戻らなくなる「ハンマートゥ」、巻き爪を誘発する。しかし、トラブルは足のみならず身体全身に引き起こすこともある。そうしたハイヒールに起因する不良は、どうすれば回避できるのだろうか。

スタイルアップのつもりがダウンに

整形外科医の中村格子先生

女性にとってハイヒールは、足を長く見せるのみならずファッションとして欠かせないアイテムのひとつ。しかし、整形外科医でスポーツドクターでもある中村格子先生は、せっかくハイヒールを履いても、多くの女性は猫背や腰が曲がって悪姿勢になっていると指摘する。また、ハイヒールを履いている時に足の指や裏が痛くなる“ハイヒール痛”で、快適に履けていない人が多いと言う。

ピップが10代~40代の日常的にハイヒールを履く女性412人に行った調査では、ハイヒールがつらくなる理由として、76%の人が足裏の痛みを、61%の人が足指の痛みを挙げている。また、腰痛(25%)や頭痛(8%)という回答もあった。更に、ハイヒールを快適に履き続けられる時間としては、70%の人が1時間未満と感じていることが分かった。

ハイヒール不良になる3つの原因

こうした痛みの原因として、中村先生は大きく分けて3つを指摘している。ひとつは、そもそもそのハイヒールの高さが自分に合っていないということ、痛みを回避するための身体作りができていないこと、そして、ハイヒールを履いた時の歩き方が良くないことだという。そこで、それらのポイントを教えてもらった。

自分に合ったヒールの高さチェック
まずは適切なハイヒール高のチェック方法から。自分が履きたいヒールの高さまでかかとを上げて、バランスを崩さずに背筋を伸ばして歩くことができるかをチェックする。この時、頭の位置を一定にして、骨盤が上下左右にぶれないことが重要になる。骨盤のずれが分かりにくい時は、腰にひもを当てながら歩いてみるようにしよう。

もうひとつのチェックは、実際にハイヒールを履いた状態で行う。かかとを1cmくらい靴から浮かせ、バランスを崩さずに歩ければ、その高さは自分にとって適切なハイヒール高ということになる。

かかとを上げ、背筋を伸ばして歩けるかチェック

かかとをつけずにハイヒールで歩けるかチェック

足指の筋肉を鍛える
この2つがうまくできないということは、ヒールの高さが自分に合っていないということの他に、足指の筋肉が衰えていることも意味する。ふだん意識をすることはないが、足指などの足部は身体全体を支える土台となっている。その足部には固有筋(内在筋)と呼ばれる筋肉があり、そのほとんどが足の裏側にある。

固有筋が衰えると足のアーチが崩れ、荷重バランスが後方にずれてしまったり、身体全体でバランスをとろうとして猫背になってしまったりする。つまり、ハイヒールでの不調の原因のひとつに、足指の筋肉の衰えが挙げられるのだ。

自分の筋肉の状態が分からない人は、以下でチェックしてみよう。ひとつでも当てはまれば、足指の筋肉が衰えている可能性がある。

・両足でつま先立ちすると、すぐにぐらぐらしてしまう
・足の指で「グー」「チョキ」「パー」のいずれかができない
・スリッパやサンダル、またはミュールが脱げやすい
・足の裏が張りやすい(疲れやすい)
・足裏の中指のつけ根あたりにタコができる
・靴幅が窮屈に感じることがある(なかなか自分の足に合う靴が見つからない)
・腰痛や肩こりを頻繁に感じる

足指の筋肉を鍛える方法として、「グーパーエクササイズ」(足指を開いて閉じる)と「“アーチ力”エクササイズ」(5本の指をそろえ、指を伸ばして足裏にアーチをつくる)を、毎晩左右各10回を目安にして実践してみるといいだろう。このエクササイズをすることで、足指や足部のポンプ機能が促進される。このポンプ機能がアップすると血流が促されるため、むくみや冷えも解消できる。

ハイヒールでは足全体で着地
最後は、ハイヒールを履いた時の歩き方だ。フラットシューズの場合、かかとから着地するのが一番負担が少ないと聞いたことがある人もいるだろうが、ハイヒールだと状況が変わってくる。膝への負担やスムーズな体重移動のために、できるだけ膝を曲げない着地が好ましい。ハイヒールで自然にかかとから着地するには、つま先やかかとからではなく、足全体で着地することがポイントとなる。

ハイヒールの場合は足全体で着地するのがベスト。実際、誤まった認識の人は多い

ハイヒール不良を回避するのみならず、ハイヒールで美しい歩き方を目指したい人は、体幹、股関節、膝関節がぶれないことに注意しよう。そのために、足指エクササイズとともに、簡単な体幹トレーニングを実践してみるのもいいだろう。