ANAは「ドル箱」とも言える羽田の発着枠を有利に生かす

「ドル箱」の羽田を巡る応酬は続く

しかし、航空会社にとって羽田といえば1枠(1往復分)につき100億円の売り上げと10億~20億の営業利益が見込める超魅力的な空港。しかも発着枠はいわゆる既得権益で、一度手にすれば撤退しない限り自社のもの。要するに羽田の発着枠は「ドル箱」なのであり、半永久的に利益を得られるとなれば、どこまで配分の差をつければ「公平」と言えるのかは意見が分かれる部分もある。JALは当然、今回の配分について「承服できるものではない」と抗議の声を上げた。

JALも羽田~ホーチミン直行便開設

更にJALは声を上げるだけでなく、対抗策に打って出た。羽田空港の深夜早朝(午後11時~午前6時)の時間帯を使って、配分されなかったベトナム(ホーチミン)便の開設を発表したのだ。

羽田の深夜早朝便は今回増便される昼間の便に比べると交通の便が悪く、新路線を開設しても撤退する航空会社があるため発着枠に空きがある。それを使ってホーチミン線を就航するというわけだ。新路線の就航には国交省の認可が必要で、ANA側も反発しているようだ。ただ、これは筆者の見方だが、JALの手法は法的には問題なく、国交省も認めざるを得ないだろう。

供給過多で安い航空券が出る

そして、利用者の着目点もここにある。ANAだけが羽田~ベトナム線を就航すれば1社独占となる。ところがJALも羽田~ベトナム線を就航するとなれば競争が生まれる。JALは羽田からはないが、成田からハノイへの路線を就航しているのも競争が生じる要因になる。そもそもJALがホーチミン線を開設したこと自体も、競争による利用者メリットだ。

独占状態という視点で見ると、ドイツはANAとルフトハンザの便しかなく、また両社が加盟するスターアライアンスの便だけだ。両社は運賃を共通化できるJV(ジョイントベンチャー=共同事業)を展開しているから、なおさら独占色が濃い。

ANAは成田からもデュッセルドルフ線を新規就航。ボーイング787-8での運航

ただ、ANAはそのドイツを含め、パリ、バンコク、シンガポール、ジャカルタ線などが成田や深夜早朝便を合わせた意味での増便で、ハノイとバンクーバー線は同社初の便となるが、あきらかに供給過多。本来ならば需要と供給のバランスを見ながら便数を増やすものであり、今回は配分された羽田の枠をフルに使っての大増便。つまりは自己都合の部分が強いからだ。

ゆえに、必ず供給に需要がついてこず、安い航空券やツアーが設定される狙い目の行き先が出てくる。もちろん、他社や外国系にもそういうところが出てくる可能性がある。利用者は別表に出ている航空会社を中心に、運賃やツアーをチェックしてみるといいだろう。

筆者プロフィール : 緒方信一郎

航空・旅行ジャーナリスト、編集者。学生時代に格安航空券1枚を持って友人とヨーロッパを旅行。2年後、記者・編集者の道を歩み始める。「エイビーロード」「エイビーロード・ウエスト」「自由旅行」(以上、リクルート)で編集者として活動し、後に航空会社機内誌の編集長も務める。 20年以上にわたり、航空・旅行をテーマに活動を続け、雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアでコメント・解説も行う。著書に『もっと賢く・お得に・快適に空の旅を楽しむ100の方法』『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。