バースデーケーキも用意したのに……

子連れトラベルライター岩佐史絵、今度は娘と共にずっと憧れていたメキシコのカンクンへ。これまではヨーロッパやアジアばかりで、実は娘をアメリカ大陸に連れて行くのは初めてである。ちょうど娘の誕生日と日程が重なっていることもあり、現地で誕生日を祝おうともくろみ、プレゼントやドレスまで用意して意気揚々とでかけていった。

ロサンゼルスとアトランタで乗り換えというちょっと面倒な、でもすっごく安いフライトだったため、それぞれの空港で3~4時間の待ち時間があり、既に自分でも時間の感覚がわからなくなっている。羽田発の深夜便だったので、娘は機内ではかなりの時間眠って過ごし、ロサンゼルス - アトランタ間の4時間もしりとりをしたり、絵を描いたりして、特に問題もなくクリア。……が、リゾートにチェックインした15時頃にはさすがに疲れたのか、娘はいつのまにかベビーカーの上で爆睡していた。

そっと娘を抱きおこしてベッドに寝かせ、ルームサービスでマルガリータを注文し、本を読みふけっていると、そろそろお腹が空いてきた。娘を起こし、レストランへと向かう。だが食事をしているにもかかわらず、娘はゆ~らゆ~らと揺れ始め、21時前にはまた眠り込んでしまった。

時差の大きい国へ行けば、大人でも時差ボケに悩まされるものである。日本との時差が15時間のメキシコはこれまで旅してきたヨーロッパよりも時差が大きいため、娘にはガツンと時差ボケが襲ってきたようだ。無理やり歯を磨いたが、それでも起きないくらいの爆睡ぶり。まぁ、初日だし仕方ない。

完全に昼夜逆転……

私が床に就いたのは12時くらいだっただろうか。「ママ、お腹空いた! 」という娘の元気な声に起こされた。時計を見れば朝の3時である。途中でちょっと夕飯を食べたとはいえ、前日の15時からずっと眠り続けていたのだから、確かにそろそろお腹の空くころだ。ルームサービスを頼み、少し食べさせたらまた寝かせるつもりが、娘は元気。そのまま朝までDVDを見たり、ぬり絵をしたりして楽しく過ごしたのであった。

翌日の午前中、プールで遊んだりリゾート内を探検したりしてはしゃぎまわる娘。午後からは子供のアクティビティに参加させようかな、とふと娘を見ると、またうとうとし始めている。ここで寝かさないのが時差ボケを早く治すポイントだが、朝の3時から起きていれば眠くなるのも当たり前。ちょっと昼寝をさせようと部屋に戻って寝かせる。だがこれが"昼寝"では終わらなかった。どんなに起こしても、どうしても起きてくれないのだ。目を覚ましてもまたばったりと眠り込んでしまう。まさに時差ボケである。

そうこうしているうちに5日目、娘の誕生日がやってきた。リゾートに着いた初日にケーキとバースデーディナーの手配をしておいたのだが、親の心子知らず。この日も娘は午後からぐぅぐぅ眠り始め、まったく目を覚ます気配がない。子供用にコースを作ってもらったけれど、それにも手をつけずレストランでひたすら眠り続ける。

ディナーの終わり頃、デザートのタイミングで花火とろうそくのついたケーキを運んでくるスタッフたち。5人で列をつくり、「Happy birthday to you~」と歌いながら厨房から出てくる。我々のテーブルまで来て歌い終わると、「ろうそくを吹き消して」とうながしてきた。主役である娘は眠っているので代わりに私が吹き消すと、レストランにいたほかのゲストからどっと拍手がわきおこった。みな口々に「Happy birthday!!」「Make your wish!」などと言ってくれる。わざわざ乾杯をしに席を立って来る人もいる。「こんなすてきなリゾートで誕生日を迎えるラッキーな人は誰かな? 」なんて聞かれるが、い、言えない。「実はここで眠っている娘の誕生日なのです」なんてとても言い出せない。娘よ、今この時間だけは起きていてほしかった、と心底思ったのであった。

今回の娘の時差ボケ、なんと帰国の日まで続いたのが驚きである。策を講じなければと考えていたが、翌年ハワイに行ったときは初日こそ眠り込んでしまったものの、3日目くらいから普通に朝起きて夜寝るリズムを取り戻した。娘が成長しているのか、それともほかの理由があるのかはわからないが、いまだに時差ボケをどうするかは課題である。