――かつてはタグが生まれて定着し、そこから盛り上がってカテゴリに成長し、カテゴリの再編で議論が起きたりもしました。今はそういうことがあまりないように思います。

タグに由来する従来のジャンルに関しては、今まさに極大化している最中なので、過渡期なんだと思います。これらがマス的になったとき、次の新しいものを求める空気も出てくるのではないでしょうか。運営側としてはそこに期待したいし、煽ってもいきたいと考えています。ただ、なかなか難しいところですね。メジャーなコンテンツは獲得できる手段がある程度ありますが、そうではなくユーザーレベルから生まれるもの、それこそ「初音ミク」のような存在はそう簡単には出てきません。もしかすると、来年には二極化してくるかもしれませんね。いわゆるマスっぽいものに興味があるユーザーを対象とした領域と、従来のniconicoらしさを求める人を対象とした領域です。まだ具体的には見えていませんが、そこを分けていくのもいいかもしれません。ただ、最終的にniconicoをコントロールするのはユーザーです。そこは変わりません。

――わかりました。ところで、新バージョンの「GINZA」についても伺いたいのですが……。率直に伺いますが、Zero以降のバージョンアップは毎回ユーザーから猛反発を招いていますよね。

別にユーザーを困らせようとしてやっているわけではないんですよ。バージョンアップに関してはエンジニアリングに考える必要があります。niconicoの中で、色々な機能を実装しているのですが、そうした新しい企画を出した際、アーキテクチャ的にそういうものが実装できる環境がプログラムされていないことが多いんです。たとえばですが、もしniconicoのプレーヤーが一度も変わっていなければ、7年前のプログラムなわけですよね。これをPCだと考えると、7年前のPCで何ができるんだという話になります。そこで最先端の設計思想で考えると、欲しい機能を取り入れようとしたときにそもそものりませんということになって、作り直しが必要になるわけです。新しいものを考えたとき、それが古き良きものを愛していた人にとっては必ずしも使いやすいものとして定着していないことは数多くありうることです。

――たしかにその通りだと思いますが、ユーザーが不満に思っているのはむしろ動画説明文などの要素が見難くなったとか、広告の場所とか、そうした細かい見え方の問題や、動画プレーヤーの重さなどの快適さの部分ではないでしょうか。

見え方についてはもちろん重視しています。内面的な機能も考えるとこっちの方が効率的だし合理的だよねという考え方のもとに設計しています。とはいえ、リリースするまではテストケースでしかないので、最終判断は投入した後に出てきます。「GINZA」はまさに今、その段階にあります。

――不満の大きい部分は改善されていくということですね。

ただ、投入したものを元に戻すという選択肢はありません。たとえば新しいカメラが発売されたとして、その評判が悪くても、元のモデルを再度発売することはありませんよね。そうではなくて、改善した新しいモデルを出す。ものづくりとはそういうものなんです。ユーザーの声を聞き、ブラッシュアップしていくしかありません。また、携帯電話のサービスをやっている時からそうなのですが、ユーザーの環境がそれぞれ異なっていることも大きいのです。誰がどんな環境で動かしているか網羅していかないといけないわけですが、どのラインに合わせるのか、バランスをとるのが難しいというのはあります。

――よくわかります。ですが、Zero、Q、GINZAとバージョンアップを重ねるたびにユーザーからは厳しい声が聞こえてきています。

そこに関してはみなさん以上に我々は真摯に受け止めています。内部的にも「やっぱり原宿って良かったよね」という声があったりもします。そこは今後のブラッシュアップに期待していただきたいですね。すでに現場でも動きは出ていますから。2013年はイベントに力を入れていたわけですが、2014年はそれを引き続きやっていきながらも、システム開発や構築を意識してサービスに還元していきたいと考えています。やっぱりエンジニアリングのドワンゴですからね。


超会議、電王戦、町会議という大きなイベント目白押しだった2013年のniconico。一方でGINZAへのバージョンアップで原宿が使用不可になるなど、ユーザーからの不満の声が聞こえた年でもあった。2014年はよりユーザーレベルでのコンテンツが盛り上がるような仕掛けや、システム開発などの根本的な部分をブラッシュアップしていく年になるという。一人のユーザーとして、2014年もniconicoの動向を見守っていきたい。