――そんな中、niconicoは2014年以降、どのような方向に進んでいくのでしょうか。

まず、単純にユーザーは増えてほしいし、より多くの人の情報共有の場になっていってほしいですね。それから、メディアの活動拠点になってほしいと思います。それぞれが事業を展開していることから、うまくいかない部分もあるかもしれませんが、そこはうまく事業利益を享受できる形でやっていければいいなと。

その意味ではブロマガが定着したのも2013年だと言えますね。ブロマガは動画だけでなく、ニコ生やテキストなども使える、いわばメディア作りの場所。ブロマガで成功している人もいますし、niconicoというプラットフォームの上でメディアが成立するんだということを証明できたのではないかと思います。

――2013年はチャンネル機能をユーザーにも開放した「ユーザーチャンネル」が話題になりました。また、以前から行われているクリエイター奨励プログラムもそうですが、niconicoとしてはクリエイターがきちんと作品の対価を得られるようにという方向に進んでいますよね。

コンテンツがどんどん生まれる環境を作るためにどうするかを考えるのが運営側の発想です。儲かるというよりは、活動のための資金になればということですね。最初はクリエイター奨励プログラムでniconicoが支援していたわけですが、さらにユーザー自身もクリエイターを応援できるようにということで作った場がユーザーチャンネルです。作品を作ることで活動資金を得て、さらにコンテンツが増えていく。そうするとネットの中がちゃんとした経済圏になりますから、その流れを推し進めていきたいですね。

2013年10月に「ユーザーチャンネル」の説明会を開催

――とはいえniconocoも含むネットユーザーの中には、まだまだネットコンテンツにお金を支払うことを嫌う向きもあります。その点で「タブーに踏み込んだ」という懸念はなかったのでしょうか。

もちろん、ありました。こうした案が出たとき、最初に過敏に反応したのはやはり現場でした。「嫌儲」という言葉は運営には染み付いた言葉なので、やはりナーバスにもなります。発表した後はtwitterをチェックしまくっていましたよ(笑)。10人いたら10人が賛成してくれるわけではないでしょう。ですが、間違ったことでないのなら、やっていく過程で正しい方向に向いていくことを信じたいですね。恐怖は常にあります。「嫌儲」という考え方そのものがダメということではありませんが、それだけになるとネットから事業的なものが育まれなくなって、世の中を動かす新しいものは生まれにくくなると思います。

もっとも、これは逆にネットだからこそ打破できることでもあると思っています。世の中は日常的に目に見えない空気に常にコントロールされていて、インパクトのある発言があったとしても、拡散できる手段がリアルにはなかなかないですよね。たとえばデモをやっても、マスメディアが取材してくれないと広がらないし、ニュースになると今度は一部だけが切り取られることもある。しかしネットであれば意見を出す場所がきちんとあって、賛成と反対の人が話し合える空間が生まれます。仮に受け入れられなくても、そこから方向性を変えることだってできますから。

――まずはあえて波風を立てていこうというのがniconico的なやり方というわけですね。ところで、そのniconocoの核となるコンテンツについても伺いたいのですが、最近はアニメの公式放送も当たり前になり、それ以外にも外部からniconicoをツールとして利用するケースが増えてきました。それはそれで盛り上がっているのですが、古くからのユーザーとしては初期の頃の新鮮さが薄れたような印象も受けています。そのあたりについてはどうでしょうか。

そこは苦慮しているところです。メジャーなコンテンツを獲得したことで色々な人に参加してもらえているのですが、それってテレビ的な方向性の話なんですよね。そうではなくて、ユーザーレベルでコンテンツを盛り上げていくことに関しても取り組んでいないわけではないのですが、もう少し考え方を整理してスピンアウトできる場所を整備しないとダメだと感じています。これは2014年の課題ですね。……続きを読む