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過度のノルマや限度を超えた長時間労働で、労働者を酷使する「ブラック企業」。厚労省が9月から立ち入り調査を逐次始めているが、海外の研究ではこのほど、「ブラック企業」に象徴されるような長時間勤務の父親を持つと、子供の行動に悪影響が出ることが明らかになった。

ベルリンの社会科学センターの研究員が1400人超の子供を追跡調査

研究は、ベルリンの社会科学研究センターのLi上級研究員とオーストラリアの4人の研究員らによって行われた。論文は「Journal of Marriage and Famaily」に掲載されている。

過去には、母親のワークライフバランスが子供に与える影響をまとめた研究は多数あったが、父親の労働時間が子供に与える影響について調べた研究は少なかったため、今回の調査に踏み切ったという。

研究チームはオーストラリア西部に住む5歳の子供を対象に調査を開始。子供の片親(大抵は母親)に対して、子供の行動に関する質問項目に回答してもらった。回答が得られた1,440人の親には、子供が8歳時点と10歳時点でも同様に、行動に関する質問に回答してもらい、最終的に1,360人の追跡データを得ることができたという。

父親が毎週55時間以上労働していると、息子が攻撃的な行動を取りやすい傾向に

データをまとめたところ、父親が毎週55時間以上働いている家庭では、5~10歳の子供が高レベルの攻撃的行動を取りやすい傾向があることが明らかになった。特にこの傾向は息子で顕著に見られ、娘では見られないという。なお、研究に参加した家庭では、父親の16~20%が、毎週55時間以上勤務しているとされている。

一方、今回の調査では母親の労働時間と、息子・娘の行動に関する何らかの関係は見られなかった。ただ、研究チームは「オーストラリアの母親はパートタイムで働く傾向が強く、今回の研究では長時間労働をしている母親の数が十分ではなかった」と付け加えている。

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息子のエネルギー発散の場の減少や、子育てのサポート不足が原因?

息子のみが攻撃的行動を取りやすくなる傾向の理由について、Li上級研究員は「子供は同性の親との交流や過ごす時間が不十分だと、行動にまつわる問題を抱えやすくなるかもしれない」と説明。父親が長時間会社で労働していると、男子のエネルギー発散の場となりうる、スポーツやゲームで一緒に遊ぶ時間が少なくなることも原因の一つとして考えられるとしている。

また、長時間労働で疲弊した父親は、家庭内で子育てのサポートをしなくなりがちで、その状況が母親に過度のストレスや重荷を感じさせ、結果として子育ての質が低下している可能性も指摘している。

今や日本において、社会現象にもなりつつある「ブラック企業」。オーストラリアにおける、今回の残念かつ衝撃的な結果は、単なる「対岸の火事」ではすまなさそうだ。