――シャア専用オーリスの開発に携わったスタッフは、基本的に『ガンダム』好きのスタッフで占められているのでしょうか?
実はそうでもないんです。いろんなスタッフがいますね。『ガンダム』好きばっかりだと、こだわりがぶつかってしまって、こんな仕事はできないでしょう。その反面で、やっぱり『ガンダム』が好きな人はあちこちにいる。車の開発にはいろんな会社が関わりますけど、中堅社員に『ガンダム』好きが隠れているんです。パーツの開発依頼ひとつとっても、普通ならまず打ち合わせベースで進んでいきますが、「シャア専用オーリス」の場合は、最初の時点でいきなりデザインが出てくる。もう考えてきましたって。『ガンダム』が好きなスタッフがそれぐらい多くいるんです。これは、すごくうれしいことでした。
――柳澤さんは、どういった立ち位置でお仕事をされましたか?
ぼく自身はかなりフラットな立場でいるようにしました。マーケティングをやってるんですから、ぼくがファンの代表になっちゃいけないと思うんです。もちろん大好きな人が大勢いて、わからなくなったら「ファンから見てどうですか?」って、聞きに行ける環境があったからですね。
そしてふたつの視点を持って企画を進めました。トヨタの人間として車をうまく見せて、たくさんの人に買ってもらいたいというのがひとつ。また、ある時はファンの立ち位置にぐっと寄っていって、楽しいこと、面白いことをしようとか。『ガンダム』ファンが持っているシャアのイメージを壊しちゃいけないですし、でも安全性や品質といった、トヨタとしてゆずってはいけないポイントもあるわけです。
――『ガンダム』ファンが社会のあちこちにいるとはいっても、さすがにトヨタというお堅い会社でこのアイディアを通すのは大変だったと思いますが、社内に慎重意見などはありましたか?
当然50歳を超えると『ガンダム』を知らない社員もいます。はじめは企画に対して賛否両論でした。そこで、まずは『ガンダム』の市場分析から始めました。『ガンダム』の市場規模はどれくらいあるのか、ファンはどれくらいいて、その中でお金を出してでも買ってくれる層はどれくらいなのか、と。社内の試算ですけど、日本には1,000万人以上と、けっこうな数の『ガンダム』のファンがいるんです。その中心は30~40歳代で「オーリス」のターゲットと合致している。そこから「『ガンダム』市場規模もウン千億円あるんです!」みたいなところから攻めて、『ガンダム』にはこれだけポテンシャルがあるんですよと、口説いていきましたね。
――そこからはとんとん拍子に?
まだまだです。もちろん市販化がゴールですし、いきなりトヨタを動かすことはできない。まずはコンセプトカーを作って、購入してくれる人がどれくらいいるのか、ファンの声を集めようということになりました。何カ月もかけて調査した結果、商品化してほしいという声が非常に多かった。そういった情報も集めることで、ようやく市販化を実現できるだけの材料が集まっていきました。
――ファンの声は具体的にどのように集めましたか?
まず昨年の「キャラホビ」でコンセプトカーを展示して、「商品化されたらこの車がほしいですか?」「購入を検討しますか?」「いくらぐらいだったら買いますか?」といったことを聞きました。
キャラホビだと『ガンダム』ファンも来ているので、反応もよくて当然ですよね。ところが、全国のショッピングモール等で、同じような展示をしてアンケートを取ったところ、そちらの方が反応がいい。そのあたりを歩いている人たちも『ガンダム』が好きで、こんな車を望んでいるということがわかって、説得材料になりました。
――キャラホビよりもショッピングモールの反応がいいというのは、意外ですね。
勝手な想像ですけど、ファンが深ければ深いほど自分のイメージがあり「このコンセプトカーではダメだ」というのがあったのかも知れません。あるいは「オーリスじゃイヤだ」なのかな(笑)……続きを読む