若者のホームレス化や機能不全家族などの社会問題を克明に切り取った映画『こもれび』で、監督・脚本・編集を務めた小澤雅人監督の最新作『風切羽』が6月22日(土)より公開される。
『風切羽』は、実の母や姉から虐待を受け児童養護施設で暮らす少女・サヤコと、道行く人々に声をかけながら自分探しを続ける少年・ケンタの姿を描いた物語。児童虐待、体罰、親に愛されない子…という数々の問題を浮き彫りにしながら、二人の心の交流を描いている。
本作のサヤコ役で映画初主演を務めたのは、ドラマ、映画を中心に活躍する秋月三佳。2010年のデビュー以来、立て続けに映画に出演し、2013年だけで6本の公開作が待機中という注目の女優だ。そんな彼女が「私にとって大きな一歩になった」と語る本作には、どんな思いが込められているのだろうか。
――難しいテーマの作品ですが、どのように役作りをされたのでしょうか?
「たしかに、『風切羽』は今まで私が出演した作品の中でも特に深いテーマ性を持っています。撮影前に、監督から関連書や映像作品などを教えていただいて勉強しました。もちろん、それはひとつの方向性を探るうえで参考になったのですが、読んでいるだけ、見ているだけではどうしても客観的に。“こういう境遇の人って本当にいるんだ”とか“かわいそうだな”って。でも、それじゃダメだと思ったんです。そこで、台本と自分の感覚の隔たりを少しでも埋めるために、夜中に街を歩き回ってみました。それはほんの小さな体験で、サヤコと同じ感覚になれるわけではないかもしれませんけど、今回の役と作品には、それぐらいの思いを持って挑みました」
――小澤監督は自ら脚本も手がけていますが、厳しい演出だったのでは?
「むしろ、細かい指示はほとんどありませんでした。お芝居に関しては本当に自由にやらせていただけたんです。逆に難しいと思うこともありましたけど、圧倒的に“良い経験をさせてもらった!”という思いが強いですね。劇中で、サヤコがお姉ちゃんの家に行くシーンがあるんです。そこでひとつの事件が起きてしまう場面なんですけど、演じている私自身の感情も本当に大きく揺れ動きました。細かい段取りを踏む形ではなく、感じるままにお芝居しました。あと、ケンタ役の戸塚純貴くんと自転車の二人乗りをして、自転車から落ちたり、飛び乗ったりするシーンもあるんです。撮影が終わってから、足や腕にアザがあるのでビックリしました(笑)。演じている時は、本当にサヤコになりきれていたから、痛みを感じなかったんだと思います」……続きを読む