さまざまな理容器具を展示する理容ミュージアム(東京・代々木)

ムダ毛処理というレベルを超えて、顔剃り(シェービング)には高いスキンケア効果が立証されています。肌の水分量や油分量を上げ、顔全体を明るくする効果あり。産毛や古い角質を取り除き、皮膚の保湿力を高めます。でも、顔剃りは美容院ではできません。

なぜ理容室の独占なのか、全国理容生活 衛生同業組合連合会の鈴木章太さんに聞いてみました。

理容師≠美容師

――シェービングはなぜ理容室の専売特許なのでしょうか?

「理容師法によれば、理容とは『頭髪の刈り込、顔そり等の方法により、容姿を整えること』、美容師法によれば、美容は『パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること』となっています。理容が"そぎ落として整える"サービスなのに対して、美容は"追加して美しくする"サービスといえ、もともと剃刀(かみそり)を使った施術が想定されていないんです」

剃刀を使うことのできる理容師資格を取得するには、顔剃りの実技試験はもちろん、伝染病や感染症、消毒方法などに関する学科試験もあって、両方をパスする必要があります。一方、美容師の資格取得にはそれがありません。

時代劇でおなじみの月代は織田信長が始めた!?

――なぜ、法律は理容師だけに剃刀の使用を認めたんでしょうか?

「それは私にも分かりません。ただ、日本の理容のルーツは江戸時代の髪結職にあるわけで、男性の月代(さかやき)を剃るために剃刀を使用していましたから、自然にそういう流れになったんだと思います」

時代劇でおなじみの月代とは、男性の頭髪を前額側から頭頂部にかけて半月形に剃り落とした髪型。武士が戦場に赴く際にかぶとを被りますが、その際に頭部がむれないようにと髪を剃り上げたのが始まりとされます。

「最初に剃刀で剃り上げたのは織田信長だと言われています。それまでの武士は、痛みをこらえて髪を毛抜きで抜いていたのだとか。しかし痛いし、時間がかかるしで、合理主義者の信長は剃刀で剃ってしまったんだそうです」

織田信長が始めた剃り上げる月代は、またたく間に戦国武将の間に広まり、更に江戸時代になると流行のヘアスタイルとなって、町人もまねをするようになって定着したとされます。そもそも剃刀は、6世紀に仏教とともに中国から朝鮮を経て日本に伝わったもの。お坊さんの頭を剃るための道具でした。

女性も本格シェンービングを求めて理容店に通い始めた

――理容室と美容室の違いといえば、シャンプー台の違いも不思議です。理容室は前かがみのシャンプー台が多く、美容室はあお向けになるシャンプー台。これはなぜでしょうか?

「いろいろな説がありますね。理容室は男性のお客さんが多いので、おなかが無防備になるあお向け型のバックシャンプー台は切腹を連想するため避けられたとか」

――そうなんですか?

「いえ、根拠のない俗説です。逆に、美容室に前かがみのフロントシャンプーがない理由は分かります。前かがみで顔を下に向けてシャンプーすると、水が顔に流れ落ちて化粧が落ちてしまうからだと思います。

でも最近では、理容室もバックシャンプーが主流になってきていますし、椅子に普通に座ったままで髪を洗うスタンドシャンプーも増えてますから、女性の化粧落ちも心配ありませんね」

男性の美容室通いが一般化する一方で、東京などでは「女性のシェービング」を売りにする理容室も増えており、若い女性の間で人気急上昇中とのこと。シャンプー台の問題もなし。女性も、美容室、理容室を上手に使い分け始めているようです。

(OFFICE-SANGA 日下部商店)