都外川八恵(ととかわやえ)氏

明日はプレゼンテーション。緊張するが、自信を持って臨みたい、相手先の信頼を勝ち得て、見事プレゼンを成功に導きたい。できるビジネスマン(ウーマン)なら、そんなとき、ここ一番の"勝負服"で臨むのは当然のこと。

だけど、勝負服ってどんなのがいいの? どんな色の服を選べばいいの? スタイリングとカラーコンサルティングのプロである「COCOLOR(ココカラー)」代表の都外川八恵さんに聞きました。

「好きな色」と「似合う色」は違うことが多い

―プレゼンに臨むに当たっては、まず自分の気持ちに"前向きスイッチ""自信スイッチ"を入れる必要がありますよね。そのための服装選び、カラー選びのポイントを教えていただけますか?

「自信を持つ、というだけなら、その人の内面的な心の持ちようなわけですから、自分の好きな色を選べばいいと思います。ブルーならブルー、黒なら黒、人それぞれですよね」

―思ったより簡単な分け方なんですね。

「ただし、その好きな色が、果たして他人の目から見て『似合う色』であるかどうかが大切です。社外プレゼンなど、プレゼンターのパーソナリティーがお相手にまだあまり知られていない場合には、『似合う色』を身につけていたほうがファーストインプレッションが良いと思います」

―『似合う色』とは?

「『似合う色』は、人によって微妙に異なる肌の色合いによって違ってきます。人間の肌の色というのは、どんな人種であっても、赤から黄色系の暖色系の色相をベースに、その明度、彩度が変化した色なんです。そして、同じ日本人であっても、肌の色には微妙に差異があります。

私どもの仕事は、そんな一人ひとり異なるお客さまの肌の色合いに合わせてファッションやカラーのコンサルティングをしていくわけです。『似合う色』は文字通り『十人十色』なんです。

あえて一般論で言うとすると、日本人はネイビー(深い青)が似合う人が多いです。よく日本人は黒やグレーが似合うと言われてますが、それはあまり正しくないですね」

「見られたい自分」を演出する戦略的な色選び

―例えば、プレゼンの目的にあわせて色を選ぶことはできますか?

「戦略的にプレゼンの時に着ていく服のカラーを選ぶ、という方法がありますよ」

―戦略的にとはどういう視点なのでしょうか?

「相手に自分のイメージをどう印象づけていくか、という戦略です。

例えば自分を「決断タイプ」に見せたい、華やかなオーラで人を引き寄せる主役タイプの人間なんだと印象づけたいなら、「黒」か「赤」を選ぶ。黒は、孤独、独立心、完璧主義、威厳、粘り強い、そんな印象を人に与える色なんです。赤は、ドラマチック、スピード、決断力、目立ちたがり、負けず嫌い……。

また「創造タイプ」、自分の感性や世界観で勝負するクリエータータイプの人間なんだと印象づけたいなら、「紫」か「ターコイズ(トルコ石のブルー)」を選ぶ。紫は、個性的、美意識、精神性重視、ミステリアス、こだわり、の色。ターコイズは、洗練、アンチルール、クリエイティビティ、新規性、プライド、などを感じさせる色なんです。

次に「協調タイプ」、人に寄り添う奉仕の精神にあふれる謙遜タイプと訴えたいなら、「グレー」や「水色」が良いですね。グレーは、控えめ、おとなしい、用心深い、デリケート、ソフト、スマートといった印象を与え、水色は、思いやりや気配り、謙虚、サポート、品性などを相手にイメージさせるんです。

最後は「堅実タイプ」です。「青」「茶色」がこのタイプの人の色です。青は、信用、ストイック、冷静、常識的、慎重、世間体などを表す色。茶色は、堅実、品質重視、信頼、現状維持、自然志向、頑固といった印象をもたらします」

―なるほど、プレゼンする相手に自分をどんな人物としてアピールしたいか、それによってカラーのチョイスをするわけですね。

「はい。人間は相手を見るとき、バストアップ、もっと言えば顔の周辺のVゾーンに目がいきます。ですから、服装のカラーコーディネートを考える際には、胸元のスーツ、シャツ、ネクタイで作られるVゾーンをどんな色で印象づけるかが大切です。

もっと詳しくカラーコーディネートについてお知りになりたいなら、私の著書を読んでください。もちろんコンサルティングもいたしますので、ぜひお気軽にご連絡ください」

■プロフィール
都外川八恵(ととかわやえ)
COCOLOR(ココカラー代表/カラーコーディネーター、パーソナルスタイリスト)。主な著書に『ファッションスタイリング検定3級テキスト<分析・分類編>』(繊研新聞社)『配色&カラーデザイン プロに学ぶ一生枯れない永久不滅テクニック』(ソフトバンククリエイティブ社)