人気・実力ともにスター級のシェフたち。いずれも軽い気持ちではなかなか行けないお値段のお店で腕をふるっています

「ミクニ マルノウチ」のオーナーシェフ三國清三さん、「分とく山」の野崎洋光さん、「ル・シズィエム・サンス・ドゥ・オエノン」のドミニク・コルビさん、「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」のステファノ・ダル・モーロさん、「四川豆花飯荘」の遠藤浄さんというそうそうたる著名シェフ5人によるスイーツが一皿で食べられるメニューが東京駅近くの丸ビルにある丸の内カフェ easeに期間限定で登場しています。そのタイトルは、「スターシェフによる味覚のスイーツパレット」。

通常は、高級の類に入るレストランのシェフたちのオリジナルメニューが一皿で味わえるうえ、ドリンク付きで1,000円! それぞれ、店頭購入できるいわゆるパティスリーは持っていないレストランばかり。お店の自慢の味をお得な値段で食べられるうえ、はしごする時間も交通費もかからないっていいとこ取りですね!

実は、この味の競演、これまでの「旬のシェフズランチ」という企画に続くもので、今回初めてスイーツにチャレンジしたそうです。こんなスターシェフたちの競演の実現までのお話を、企画から携わった三菱地所の商業施設業務部の井上友美さんに聞いてきました。

「ワンプレートでの共演は初めてです。活動を続けて5年目の丸の内シェフズクラブならではのチームワークで実施できました。ランチメニューでの展開の場合、時間帯がお昼に限られてしまい、召し上がっていただける方が限られていました。スイーツにすることで、閉店まで提供できるため、多くの方に楽しんでいただければと思っています」(井上さん)

このワンプレートのテーマは「大人の味覚レッスン」。味覚は、舌の上と口の中に1万個あると言われるセンサー、「味蕾(みらい)」によってキャッチされる感覚。そこで「甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、うま味」の「五味」を人が感じ、判断するとき、脳の中の異なる部位がそれぞれ反応し、味の差を感じるといわれています。

「『食べる』という生命の営みに直結する重要な感覚、『味覚』の発達のピークは12 歳までですが、おいしさや味の違いを知って『風味』を楽しむこと、食べるプロセスを大切にすることは大人の人生を豊かにしてくれます。さらに味わい分けることで脳も活性化されます。丸の内シェフズクラブは大人にこそ、味覚のレッスンが必要と考えています」(井上さん)

和食、中華、イタリアン、フレンチの5人のスターシェフが「五味」をテーマに、オリジナルスイーツをプロデュースしているのですが、5人それぞれに『甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、うま味』の担当を割り振り、順番に従って食べることで、味の差をより感じる一皿になっています。

美味しい食べ方は、トマトから時計回りに順番に食べること。あっちを一口、こっちをまた一口なんて食べ方をするのは避けましょう

テープルに設置されたパンフレットには、食材の産地だけでなく、農場や生産者の名前まで載っています

今回は「しばり」として、テーマ食材に沖縄県の食材が選ばれています。一皿の上の、「料理の鉄人」対決っぽいですね。

これだけのシェフがそろう上、味のバランスも取らなければならないと、実現はハードルは高かったと思いますが、どのようなステップで決めたのでしょうか? シェフ同士であれを作りたい、この食材を使いたいと、けんかにはならなかったのでしょうか?

「まず、味覚を学ぶということも皆さんで相談をしました。お勉強ではなく、ワクワク楽しめるフェアにしたいねということで、スイーツにし、1人で1つの味をプロデュースしてもらいました。

味の担当についても、各シェフとの作戦会議の中で、意外性を求めたり、シェフが興味あるところにチャレンジしようなど、役割分担をしました。『甘味』をあえて洋風ではない野崎さんに。チョコではなく、小豆で甘味を表現いただきました。『うま味』には、味覚の授業の先駆者として三國さんで。コルビさんは、初めて沖縄で出会って気に入ったという紅イモと海ブドウをセレクト。

遠藤さんは、ルーツの香港で大人気の美的ソースからヒントを。ステファノさんは、皆さんとのお話で『苦味』を表現できるのは、彼が適任ということで。実は計画から1ヶ月での実施だったのですが、無事に完成してほっとしています(笑)」(井上さん)

有名シェフが集まった企画がわずか1ヶ月で完成したとはびっくり!! でも、それができるのは、やはりアイデアを無限に持つ食のプロフェッショナルだからこそなのでしょうね。

さて、お得なプレートを早速いただいてきました!

「トマトのコンポート、ハチミツとメープルヴィネガー風味」を頂点に置いた状態で、時計回りに順番にいただくのが鉄則。うま味→甘味→塩味→酸味→苦味の順で、食材のおいしさに加えられた味のアクセントをひとつひとつ確認しながらいただきましょう。

逆周りになると、苦味が口に残ってしまい、あとの味わいの繊細さを感じにくくなってしまいます。それぞれが2、3口サイズなので、1口目で味のハーモニー全体を味わい、2口目でその構造をパンフレットを見ながら確認するなんて楽しみ方も面白そう。

もちろん、味も絶品! スイーツのコースをいただいいているようで、これで本当にドリンクもついて1,000円?と、何度もパンフレットを見直しちゃいました(笑)。

うま味 「トマトのコンポート、ハチミツとメープルヴィネガー風味」 三國清三さん(mikuni MARUNOUCHI オーナーシェフ)料理のうま味の主役になるトマトをコンポートにしてスイーツに。熟したトマトそのものうま味をハチミツとメープルヴィネガーのソースでいただきます

甘味 「沖縄の宝船」 野崎洋光さん(分とく山 料理長)沖縄産の小豆と寒天でつくった羊羹。繊細な甘味を感じて

塩味 「紫いものサブレ・ディアマン、海ぶどうのクリスタリゼ」 ドミニク・コルビさん(ル・シズィエム・サンス・ドゥ・オエノン エグゼクティブ・ディレクター)紅芋のサブレの上の砂糖漬けの海ぶどう。塩味は、その下に隠れています ※実際に提供されるのは1皿1枚です

酸味 「石垣サンゴとほんのり酸っぱい美的ソース」 遠藤浄さん(四川豆花飯荘 東京店 料理長) 甘い完熟のパパイヤに泡盛漬けの梅ソースが酸味をプラス

苦味 「島にんじんのコンポートを詰めたビターなトリュフ・ショコラ」 ステファノ・ダル・モーロ(アンティカ・オステリア・デル・ポンテ 総料理長) 苦味のあとに、アクセントに飾られたさとうきびをかじってゴール

「食育」というと、子供の健康や感覚を養うための言葉のように感じがちですが、大人もまだまだ成長できるのですね。あなたはこの味の差をちゃんと認識できる自信はありますか? スターシェフたちからの素敵な挑戦状を受け取りに、丸の内に行ってみてください。

●開催概要

食育丸の内プロジェクト「スターシェフによる味覚のスイーツパレット」
期間:2 月 8 日(金)~21 日(木) ※2月18日(月)は丸ビル休館日のため休み
会場:丸の内ビル1F 丸の内カフェ ease
提供時間:14 時~22 時 30 分 (木・金は 23 時 15 分まで)各日限定数で終了
価格:1,000 円(ドリンク付き)+500円でステファノさんプロデュースのスペシャルホットワイン