京都大学の西村和雄経済研究所特任教授、同志社大学の八木匡教授らの研究グループはこのほど、理数系科目学習者の昇進・就業形態(正規・非正規)・平均所得に関する調査結果を発表した。それによると、大学受験で数学を選択した文系学部出身者の方が平均年収が多く、役職に就いている割合も高いことが明らかになった。

同調査は、日本の製造業の競争力に与える影響を見るため、理系学部出身者における理科学習の偏りと文系学部出身者における数学学習の偏りにより、卒業直後の就職パフォーマンス(初職の企業規模・就業形態)と現在の就業パフォーマンス(現職の職位・現在の所得)にどのような格差が生じているかについて、学習指導要領改訂の影響も考慮しつつまとめたもの。

その結果、文系学部出身者で大学受験時に数学を選んだ人(3,977人)の平均年収は532.2万円で、数学を選ばなかった人(3,795人)の443.1万円より、89.1万円も多いことが判明。また、数学を選んだ人の方が、大企業に正規従業員として就職する割合や、役職者である比率が高いことも分かった。

文系学部出身者の数学受験状況別平均所得(就業者)

理系学部出身者に関して、理科の得意科目別における平均所得を見てみると、物理が得意な人が最も高額で660.9万円。以下、地学が640.6万円、化学が589.9万円、生物が576.6万円と続いた。また、現職の役職者の割合については、地学が69.7%、物理が59.8%、化学が51.3%、生物が44.8%となった。

理系学部出身者の理科の得意科目別平均所得(万円)

理系学部出身者(得意科目別)の初職就業形態における正規従業員の割合を世代別で見たところ、ゆとり以前世代(~1966年3月生)では、物理が96.2%、化学が94.4%、地学が94.2%、生物が92.8%、ゆとり世代(1966年4月~1978年3月生)では、物理が95.6%、化学が92.9%、地学が91.5%、生物が89.5%、新学力観世代(1978年4月生~)では、物理が92.1%、化学が87.9%、地学が92.9%、生物が84.0%となった。

一方、非正規従業員の割合は、ゆとり以前世代では、生物が4.5%、地学が4.3%、化学が3.1%、物理が2.3%だったのに対し、新学力観世代では、生物が15.1%、地学が7.1%、化学が10.3%、物理が7.9%と、最大で10%以上も増えている。また、新学力観世代では得意科目による差も大きく、生物と地学では8%も差が開く結果となった。

同調査は、2011年2月、日本の大学卒業者の額主内容と現在の年収について、インターネット上でアンケート調査を実施したもの。有効回答は1万3,059人で、うち理系学部出身者は4,083人(平均年齢44.4歳)、文系学部出身者は8,976人(同42.5歳)。

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