東映は30日、2012年のラインナップ発表会を東京・千代田区の東京會舘で開催した。60周年のアニバーサリーイヤーにあたる今年は2本の記念作品をはじめ、力作揃いの顔ぶれとなった。アニメーション作品、特撮作品については別記事にまとめた。そちらも合わせてご覧いただきたい。
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開会のあいさつに登壇した岡田裕介代表取締役社長は「最近は映画人が減って嘆かわしい現状が続いているが、前年より成績が良いのは東映だけなんです。これはどこかで言いたかった」と自社の好調ぶりをアピール。「60周年記念作品は『はやぶさ(遙かなる帰還)』『(北の)カナリア(たち)』と鳥ばかり飛ばしておりますが(笑)、芸術的な映画を頑張って作っていきたい」と力強く抱負を語った。
それでは発表された2012年公開予定作品を1つずつ見ていこう。アニメーション作品、特撮作品については
『はやぶさ 遙かなる帰還』
2003年5月9日、宇宙へと飛び立ったはやぶさ。その旅路には燃料漏れ、姿勢制御不能、そして行方不明になるなど数多くの苦難が待ち受けていた。山口(渡辺謙)指揮のもと、全身全霊で復旧に努めるが……。
東映創立60周年記念作品として"前期"の大任を担う本作。「宇宙開発には非常に長い年月がかかるということを知った」という滝本智行監督は、「私は東映大泉で、和泉聖治さんら先輩監督に助監督から育ててもらいました。宇宙事業も映画も、人から人へとつながっていくという点で共通するものを感じ、"継承"をテーマに撮りました」と作品への想いを語った。
プロジェクトマネージャー山口を演じる主演の渡辺もこの作品に非常なる情熱を傾けているそうで、PRキャンペーンも「渡辺さんに尻を叩かれて全国を回っています」(滝本)とのこと。
出演は渡辺謙、江口洋介、夏川結衣、小澤征悦、中村ゆり、吉岡秀隆、石橋蓮司、藤竜也、山崎努ら。2月11日(土)公開。
『僕達急行 A列車で行こう』
大企業で働くマイペースな小町圭(松山ケンイチ)と、下町の鉄工所の跡取り息子・小玉健太(瑛太)が、大好きな鉄道を通して友情をはぐくみ、恋に仕事に悪銭苦闘する姿をのびやかなユーモアで描く。
昨年12月に急逝した森田芳光監督の遺作となった本作、昨年のラインナップ発表会では2011年11月の公開予定となっていた。白倉伸一郎プロデューサーはこのことに触れ、「出演俳優の他作品との兼ね合いから、公開を翌年3月に延ばしてもらえるよう監督にお願いしたんですが、『出来たての温かいうちに観てもらいたいのに、なぜそんなにずらさなくてはならないんだ』と激怒されました」と知られざる舞台裏を明かした。これには「11月ではなく3月というこれから春に向かう季節に、新生活を控える若者に観てもらいたい作品だから」という理由もあったという。森田監督の遺志は"ラストエール"という形で作品に染みこんでいる。
出演は松山ケンイチ、瑛太、松坂慶子、貫地谷しほり、笹野高史、西岡徳馬、ピエール瀧、伊武雅刀ら。3月24日(土)公開。
『HOME 愛しの座敷わらし』
父・晃一(水谷豊)の転勤で高橋一家は岩手へと引っ越してきたが、ログハウスときいていた住まいは築200年の古民家だった。妻の史子(安田成美)、娘の梓美(橋本愛)は田舎暮らしに不満。楽しんでいる様子の息子の智也(濱田龍臣)、母の澄代(草笛光子)にもそれぞれ事情があり家族はぎくしゃくしてしまう。そんなある日、高橋家に不思議な出来事が起こり始める。
第139回直木賞候補作「愛しの座敷わらし」(萩原浩 著)を「相棒」シリーズのスタッフが映画化。和泉聖治監督は「相棒チームと水谷さんで、何か温かい映画をやりたいね、と話したところからスタートしました。震災の後だったので岩手県ロケを中止しようかという動きもあったのですが、こんな時期だからこそ、と県が迎え入れてくれました。まさに故郷の原風景、幸せを毎日感じられるロケでした。家族で観られる温かい日本映画に仕上がっています」。
4月28日(土)公開。
『外事警察 ~その男に騙されるな~』
警視庁公安部外事課。その行動は徹底的に秘匿され、家族にもその正体を明かさず、任務遂行のためなら民間人をも利用する。今まで誰も手をつけられなかった"日本の裏側"を、取材に取材を重ね『ハゲタカ』のスタッフが映像化。2009年にNHKでテレビドラマとして放映、絶賛されたクオリティをそのままに完全映画化に挑む。
堀切園健太郎監督は「相手の外国を、今もっとも脂っこい韓国にしたのですが、主演の渡部篤郎さんも韓国俳優の胸を借りたい、とおっしゃってくれました。いわゆる韓流スターではなく、実力派俳優のキム・ガンウさんにオファーし、田中泯さんももともと細い方なのですが『この役に呼ばれた』と10キロもの減量をしてくださって。現場は手に汗握るシーンの連続でした。NHKでできないことをやろうと、原子力爆弾や半島情勢などに踏み込んでます。問題作として扱われたい」と意欲を見せた。
出演は渡部篤郎、キム・ガンウ、真木よう子、尾野真千子、田中泯、遠藤憲一、余貴美子、石橋凌ほか。6月2日(土)公開。
『愛と誠』
1970年代に連載された梶原一騎原作・ながやす巧作画の同名漫画を三池崇史監督が映画化。超不良・太賀誠(妻夫木聡)に、純粋なお嬢様・早乙女愛(武井咲)が常軌を逸した愛情を捧げる。
メッセージビデオで登場した三池監督は武井咲を「すごい女優ですよ。何年に一度出てくるかどうかという逸材ですね。本物の才能を持っているけど、まだ完全には出来上がっていない。もし、目の前に武井咲演じる早乙女愛が現れたら人生捨ててもいい、それぐらいの女優です」と絶賛した。
6月16日(土)公開。
『臨場』
都内で発生した無差別通り魔事件。犯人は心神喪失が認められ遺族の思いも虚しく無罪に。2年後、この無罪を勝ち取った弁護士、精神鑑定をした医師が次々殺され、通り魔事件の遺族に疑いがかかる。警視庁鑑識課検視官・倉石義男(内野聖陽)は被害者の最期の声を拾い、執念で真犯人に迫ろうとする。
事件の被害者の死体から情報を集める検視官。この特異な職種に焦点を当て、リアルで緊張感溢れる映像と内野聖陽演じる主人公の強烈な個性で好評を博した同名テレビドラマを映画化した。
出演は内野聖陽、松下由樹、渡辺大、平山浩行、益岡徹、高嶋政伸ほか。6月30日(土)公開。
『苦役列車』
1987年。19歳の北町貫多(森山未來)は中学を出て以来、日当5,500円の港湾での日雇い労働でその日暮らしの生活を続けている。貫多には、若者にとって必要不可欠であろう恋愛(女)も、友情(友人)もない。貫多をそうたらしめたすべての原因は、彼の自業自得の素行の悪さと劣等ぶりに加え、父親の犯罪からくる引け目だった。そんなある日、港湾労働で知り合った専門学生・日下部正二(高良健吾)に久々に友情めいた感情が生まれる。
第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名小説を映画化。山下敦弘監督は「物語としてはシンプルなので、キャラクターが全体を引っ張っていかなくてはならない。若手俳優でそれが出来るのは森山くんだけだと思いオファーしました」とキャスティングの真意を明かした。北町が想いを寄せるヒロインは山下監督の大ファンだという前田敦子が演じるがこの点については、「僕もテレビでAKB48を見て、有名人だということは知っていたので初対面のときは緊張したんですが、向こうから『あ、本物だ』と言われ顔が真っ赤になりました(笑)」。
7月14日(土)公開。
『莫逆家族 バクギャクファミーリア』
かつて関東一の暴走族として暴れ回った火野鉄(徳井義実/チュートリアル)とその仲間たち。十数年が過ぎ、普通の男として生活していたが、仲間の娘が乱暴されことから、かつての結束を取り戻し、自らのルールの中で仲間やその家族を守ることを決意する。
原作は田中宏のコミック「莫逆家族」。熊切和嘉監督曰く、「普段はまったく不良っぽくない」チュートリアルの徳井義実が髪を金色に染め、10キロの増量と加圧トレーニングで肉体改造を敢行して主演の大役に臨む。
出演は徳井義実、林遣都、阿部サダヲ、玉山鉄二、大森南朋、北村一輝、井浦新、倍賞美津子ほか。9月公開。
『新しい靴を買わなくちゃ』
北川悦吏子が監督と脚本、岩井俊二がプロデュースを務め、全編パリで撮影したというラブストーリー。キャストは未発表だが、パリで偶然出会った男女の3日間を描く作品となるようだ。今秋公開予定。
『北のカナリアたち』
東京郊外で図書館司書をする川島はる(吉永小百合)は、20年前は北海道の離島で教師として働いていた。最期の教え子だった6人の子ども達の美しい歌声と思い出に浸っていたとき、その6人が起こしたという事件を知る。はるは20年ぶりに教え子たちを再会することを決心する。
東映創立60周年の"後期"を飾る大作。北海道は利尻・礼文島の厳しい自然を舞台に壮大な物語が展開する。"カナリア"をタイトルに冠していることから"歌声"が重要なファクターとなる。ふさわしい歌声をを捜し求め、3,100人もの子どもたちのオーディションを敢行した。現在、体感温度-30℃にもなるという極寒の利尻島でロケの真っ最中だが、現場取材をした新聞記者は「これだけ厳しい現場は他にない」と感想を漏らしたという。監督は『大鹿村騒動記』の阪本順治。そして「美しさは厳しさの中からしか生まれない」を持論とするカメラマン木村大作が撮影に当たっている。
出演は吉永小百合、柴田恭兵、仲村トオル、里見浩太朗、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平ほか。
11月3日(土・祝)公開。
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