CSやケーブルテレビなどで視聴できる映画専門チャンネル・ムービープラスでは、毎月1日を「LOVE Moviesの日」に制定。「何度でも観たい」「何度観ても心が動く」映画を特別編成する本企画。映画放送前にナレーションで映画の見どころを紹介している竹中直人が、自身の「LOVE Movies」について思う存分語るスペシャル番組『竹中直人の"映画好きで何が悪い!"』を4月1日(金)に放送する。

スペシャル番組『竹中直人の"映画好きで何が悪い!"』に出演する竹中直人 拡大画像を見る

この番組は、とあるバーを訪れた客たちがひたすら映画談議に花を咲かせるという設定で進行する。ムービープラスがことし通年特集を組んでいる「監督:クリント・イーストウッド」などについて熱いトークが展開。映画マニアの客として登場するのは竹中のほか、映画監督や俳優として活動する井口昇と、監督、脚本、編集など多岐にわたり映画製作にかかわっている継田淳。また、そんな客たちが集まるバーのマスターを俳優の田中要次が演じている。

番組の収録中、何度も「この番組をレギュラー化してほしい!」と本音をもらしていた竹中が、プライベートでの映画鑑賞やその魅力について話してくれた。

――収録中は素で楽しんでいるように見えましたが

竹中「井口くんと継田くんは古い友達なので、本当に楽しかったです。三人とも根っからの映画マニアなので一般的な話にはならなかったけど、見てくださる人に伝わるかな? あの二人を相手に映画の話をするとなかなか終わらないんですよ。要次くんがいてくれたからある程度まとまった感じですかね。若い俳優と一緒の席で今日のようなトークをすると大変です。マニアック過ぎて白けちゃう人もいるし、僕らの話を聞きながらメモを取り始めたりする人もいる。僕らなんてただ映画が好きで見ているだけなので、そんなに一生懸命に耳を傾けられると先生になったみたいで恥ずかしいんですよ(笑)」

――普段からお二人とは映画談議をしているそうですが、具体的にはどんな話をしているんでしょうか?

竹中「お互いに見た作品の色合いやカメラアングル、キャスティング、音楽などなど挙げていくときりがないですね。だからこの番組が単発じゃなく、レギュラー化すればいいなと思って(笑)。番組が続くなら、誰も見ていないような映画について話したいと思います。たまたまこの番組を見た人が、こんないい映画があるのか!? って思っちゃうような作品について熱く語りたいです」

――それだけ話ができるということは、それだけ多くの作品をご覧になっているということですよね。

竹中「今までどれぐらいの本数を見てきたかは分かりませんが、かなり見ていますよ。自宅にあるVHSやDVD、ブルーレイの数は3,000~4,000本ぐらいかな。このブルーレイっていうのがやっかいですね。映像が本当にきれいだから、VHSなどで持っていた作品を買い直してしまう。『ゴッドファーザー』なんかはそうですね。僕は27歳ぐらいからちゃんと生活できるようになって、その頃からビデオなどを集め始めました。当時は自宅で映画を見られるなんて夢のような話でしたよ。今は映画鑑賞をする専用の部屋を作っちゃいました。」

――映画はおひとりで鑑賞されるんですか?

竹中「映画館には友達と一緒に見に行きます。5人ぐらいで見に行くこともあります。スケジュールの都合でマネージャーと2人で行くことも。でも、高校生の時は一人で見に行ってたなぁ。好きな作品は何度も見に行くので、セリフとか雰囲気を覚えちゃうでしょ。たしか『燃えよドラゴン』が高3の時でした。ブルース・リーがオハラを倒して『ウォーッ!』って吠える場面なんかを覚えてマネしてました。あまりにも感動したので、『リーがすっごいかっこいいんだぜ!』って友達を連れて行ったんです。で、そのオハラを倒す場面になったら、みんな大爆笑しちゃって…。僕のモノマネと同じ顔をしているわけですからしょうがない(笑)。やっていた僕としては『笑うところじゃない、感動する場面なのに…』って悲しくなっちゃったりしてね(笑)。『エクソシスト』の悪魔祓いの場面もそうでした。普通なら絶対に笑い声が起きないシーンなのに、同じ結果になりました…」

左から竹中、田中要次、井口昇監督、継田淳監督。多彩なゲストにも注目

――映画を見る上で、当時と今で変わった部分はありますか?

竹中「いろんな部分で発展しているのはいいことだと思いますよ。シネコンができたおかげで映画を見る部分で自由になったと思います。一方で単館系が犠牲になっちゃっている気もしますけど、何かが発展していくうえで犠牲になるものが出てくるのは世の常かもしれない。そういう意味では、映画に関して僕はいい時代に生まれたと思っています。子供の頃は家にテレビもなかった時代で、家族で映画を見に行くなんて一大イベントでした。もちろんビデオも無かったから、気になる作品を見逃してしまうと"一生見られない!"と本気で思っていた時代。今は見逃しても簡単に見られるじゃないですか。そんな豊かさを感じながら、何かが無くなってしまったという寂しさも感じられる時代に生まれたわけですからね」

――好きな作品を何度も見られる点も現代ならではですよね。

竹中「そうなんですよ。僕は俳優が大好きなので、"あの時のダリル・ハンナが見たい"とか思ったりするんです。あの時のショーン・ヤングの顔、ダニエル・デイ・ルイスのあの場面、あのシーンでのジュリエット・ビノシュの表情が見たいとか。DVDやブルーレイだと見たいところをピンポイントで再生できるのがいいですよね。ただ、その場面だけを見るつもりが、結局全部見ちゃうことが多いんですけど(笑)。仕事が終わって帰宅して、なかなか眠れない時などに見たりすることが多いかな。鑑賞専用の部屋はちゃんと防音をしているんですけど、小さめの音で見ています。先日はリドリー・スコット監督の『エイリアン』を見ました。何度も見ているけど、あらためて"すげぇなぁ!"って。夜中にね(笑)。『ブレードランナー』も何度も見たくなる作品です。美術、照明、キャスティング! もうハリソン・フォードを見ているだけでいい。あの時の彼は色っぽくて大好きなんですよ」

――撮影する機材や技術も進歩していますが、プロとして関心を抱くことも多いのではないですか?

竹中「『スプリング・フィーバー』という作品を見た時に、カメラがものすごく動きまわっていて驚いたんですよ。基本的にそういう画は苦手なんですけど、あの作品は確実に役者の顔を捉えていた。"どうやったらこんなに自由にカメラが動きまわれるのか?"という疑問が湧きました。後でパンフレットを読んだら、手のひらサイズのハンディーカムで撮影したという事実を知ったんです。現代は小さなカメラでもものすごくきれいな映像が撮れるんですよね。もう映像を撮ること自体は誰にでもできる時代なんです。そういう撮る側の視点から見ても映画は自由になったと感じています。僕が映画作りを始めた学生の頃は8mmしかありませんでした。好きな女の子を撮りたくて、美術部に入って映画を撮り始めたんです。『ドキュメンタリー映画を撮ろう!』って呼びかけてお金を集め、フジカシングル8を買いました。あのフィルムは3分しか回せなかった…。2本買っても6分です。値段が高かったのであまりフィルムを買えず、その少ないフィルムを自分で編集して作品に仕上げました。今どきのHDカメラなんて、いくらでも延々と回せるわけですから便利ですよ。ただ、先ほどのシネコンと単館系の話と同じように、やっぱり失われてしまうものもある。1コマ1コマを焼き付けていくフィルムって、ロマンチックじゃないですか。それが無くなってしまうのは少し寂しい気もします」

――竹中さんと同じく、俳優&監督として活躍し続けているクリント・イーストウッドに対する思いをお聞かせください。

竹中「いや、同じなんてとんでもない! 彼は別格ですよ。多くの俳優たちから慕われ、誰もが彼の作品に出たいと言っている。それはすごくすてきなことです。監督って、毎日役者の芝居を見ていられるじゃないですか。だから、すごくぜいたくな仕事だと思っています。80歳を超えても現役を続けている彼の気持ち、分かる気がしますね。役者をやりながら監督にトライする人の多くは1本で終わってしまう。でも、僕もイーストウッドのようにずっと続けていければいいなって思っています。小栗旬くんが監督した時には『1本でやめるなよ!』って言っておきました。説教ではなくて、一緒にやっていきたいという思いです。イーストウッドの最近の作品では『グラン・トリノ』が良かった。歳を重ねたからこそ撮れた作品だと思うし、彼の歌で終わるっていうのがいいね~。やっぱり俳優は声が大事なんだとあらためて思い知らされました。ミッキー・ロークの声も好きなんですよ。ただ、彼は顔が変わってしまったのが残念ですけど(笑)」

『竹中直人の"映画好きで何が悪い!"』は、ムービープラスにて4月1日(13:00~13:30)に放送。同日の26:00、4月5日18:30、4月14日23:00ほかで再放送される。視聴方法はこちら