――キャストのみなさんに関してはいかがですか。
園「でんでんさんは以前から悪役で使いたかったんです。演出に関しては『とにかくマシンガントークで』というお願いだけしました。でんでんさんは知らないと思うけど(笑)、『グッドフェローズ』のジョー・ペシのような感じで。詐欺師ってとにかくベラベラしゃべるんですよ。僕も経験上、知っていますし(笑)。吹越さんは毎回僕の映画にちょっとだけ出てもらってたんですけど、そうしているうちにだんだん思いが募って、今回こうした形でたっぷり出てもらいました」
――黒沢あすかさん、神楽坂恵さん、梶原ひかりさんら女優陣も本作では体当たりの芝居を披露してます。
園「女優に関しては僕の中で"おだて型"と"いじめ型"に分けていて、今回の作品に関しては神楽坂さんをいじめ型、黒沢さんをおだて型で演出しました。時々、その選択を間違えて失敗することもありますけど(笑)、三人とも期待に応えてくれたと思います」
――でんでんさん演じる村田とその妻・愛子(黒沢あすか)が遺体を解体するシーンで、解体前に大量のローソクを灯しますが、何か意味があるのでしょうか。
園「特にありません。祭壇でも置こうかな、という程度の気持ちです。ただ、犯罪を犯す人って時として妙なこだわりを持っていたりしますよね。ですから彼らなりの儀式というか、それを表現してみたところはあります」
――また、劇中では社本が妻・妙子(神楽坂恵)と訪れるプラネタリウムが印象的でした。
園「あれは性善説の象徴です。地球っていうのは青くて丸くて美しくて、人は話し合えば仲間になれる、みたいな。結局、社本のそんな価値観は村田によって粉々に打ち砕かれるわけですが、同時に社本にとってプラネタリウムは自分の人生の価値の無さを悟るための装置でもあるんです。どれだけ欲にまみれようと、どれだけ清く正しく生きようと、宇宙から見たらあんまし変わらないね、という」
――恐らく誰もが息を呑むであろう衝撃的なラストシーンですが、監督の中では理想的な最後でしたか?
園「はい。でも、スタッフ全員からは反対されましたね。みんなは主人公がマカロニウエスタンのように『あばよ』って捨て台詞を残して車からタバコを投げて颯爽と去って行く、というふうに終わって欲しかったみたいだけど、やっぱりこういう残酷劇は最後まで残酷であってこそ潔いわけで。僕としては最初からあの形で終わるつもりでした」
――誤解を恐れずに言えば、あのラストシーンにはある種の気持ち良さというか、見方を変えれば突き抜けた爽快感すら感じました。
園「それでいいと思います。だからこそ僕もあそこでスケーターズワルツを流したわけですし。この作品はエンターテイメントだし、実に前向きなメッセージが込められているんです。最近、みんなが中高年の応援歌的な映画を作っているので僕も作ろうかなって思って始めたんですけど、作っているうちにみんなだんだん悪(わる)になってしまっただけであって(笑)」
――確かに、方向性が間違っているだけで、登場人物はみな己の心というか欲望に真っすぐですよね。
園「渡辺哲さんの役は、最初ジャン・ギャバン的なイメージを描いてたけど、どんどん暴走してあんなキャラになってしまいました(笑)。でも、その方が見てる人にも活力になるんじゃないかなと思うんですよ。道ばたでお年寄りに親切をする人を見て心が温まっても、ものすごく励まされることってなかなかありませんよね。やっぱり『おいおい、すげえことやってるなこのオヤジ』というくらいの方がインパクトがあるし、心にも残る。僕の場合、そういう高揚感の積み重ねを意識して作品作りをやって来たというのはありますね。僕は常に"面白い映画"を撮りたいだけなんです。泣ける映画とか笑える映画とか、結果的にそうであればいいだけであって、最初からそこを目指してはいません」……続きを読む