自分のためにメモはとらない
――書評ブロガー・プログラマー・投資家と幅広く活躍している小飼さんのメモ術を教えていただけますか?
開口一番申し訳ないのですが、私はメモをとりません(笑) 確か小学校高学年か中学生ぐらいの時からとらなかったですね。記憶力がよかったので、むしろ忘れることのほうが大変でした。ただし例外があって、人との約束や取材のアポイントメントはiCalにメモしています。
私は人のためにメモすることはあっても、自分のためだけにメモすることはないのです。
――書評を書く際にも、メモはとらないのですか?
あえて言うなら書評そのものがメモ。清書を前提にした中間ファイルのようなメモは書きません。「題名」と「締め」さえ決まればあとは自動書記みたいなものです。私にとってアイデアはあまりにも自然に出てくるので、むしろそのアイデアをどうやって取捨するかのほうが重要なのです。
――小飼さんはどんな基準でアイデアを取捨していますか?
「未来の自分が見てもピンと来るかどうか」で判断しています。この場合の「未来」は記事を書いたことは覚えていても、内容を忘れている程度の未来ですが。そもそも人間の「忘れる」という能力は素晴らしいものなんですよ。なぜなら忘却は脳内から情報が消え去ったわけではなく、「思い出しにくくなる」だけだから。例えばパソコンは大量に情報を記憶することはできても、「忘れる」ことはできません。これは人間ならではの能力なのです。
アイデアが出ないって本当?
――通常は「アイデアが出ない」と悩む人のほうが多いと思うのですが
多くの人たちはせっかく何かを思いついても、「どうせダメだろう」と否定しているのです。過去に自分が発案したことがうまくいかなかったとか、誰かから怒られたという記憶でもあるのか、アイデアを出すことを自分に禁じている。私が見たところ、アイデアが出ないと言う人のほとんどがそうですね。だから自分に制約を設けなければいくらでも出てくるはずなんです。もちろんそうやって出されたアイデアにもダメなものは多いですよ。しかしいいアイデアが出る可能性もゼロではない。仮に1,000個のアイデアのうち、1個しかいいものがなかったとしても、その1個があればいいのです。
――いいアイデアの数を増やすためにできることはありますか?
質のいいアイデアを出せるかどうかは、その人がどれくらいアウトプット⇔インプットというサークルを繰り返しているかです。この世に一度も転ばないで自転車に乗れるようになった人はいるでしょうか? 誰もが何度も転んで、自転車に乗る感覚を覚えていったでしょう。いいアイデアを出す方法は、自転車の練習とまったく同じなのです。
(撮影 : 中村浩二)
次回は、「人目に触れる―フィードバックの重要性」についてうかがいます。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
元中国新聞記者。2008年に始めた著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。現在は、企業や教育機関、公共機関などにポッドキャストを中核としたサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、堀江貴文さん、石田衣良さん、寺島実郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える。
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