東京ビッグサイトにて、2010年7月7日~9日の3日間開催された「デジタル パブリッシング フェア2010」において、『「大好き」が、ここにある。』というキャッチコピーを基にGoogleブースの隣りに陣を構えた『Fan+』(ファンプラス)。この『Fan+』は、NTTプライム・スクウェアと角川コンテンツゲートがタッグを組んで、ファン・オタク・マニアに向けて全く新しいエンタテイメントのカタチと価値観の創造を目指す新たなプラットフォームとして立ち上げられた、ハイブリッドコンテンツの集合体である。

『Fan+』のブース。正面に記されたキャッチフレーズは、"「大好き」が、ここにある。"

『Fan+』では、コンテンツプロバイダーが所有する動画・写真・テキスト・音楽などの素材を使ったオリジナルのリッチコンテンツをユーザーが自分の趣味趣向に合わせてMy Boxという自分専用箱にコレクションしていく。もちろん、マルチデバイス(ケータイ、スマートフォン、PCなど)対応で、大好きなコンテンツにいつでもアクセス可能となっている。

また、『Fan+』で提供されるコンテンツは、雑誌にたとえるなら「新撰組」特集という、幕末の注目点を一部に絞ったページよりもさらに小さいところに焦点を当てた「土方歳三」という人物をピックアップ。さらにその生き様、素顔などの核心に迫るコンテンツ類が数多く用意されている"場"とイメージしてもらえればいいかと思う。あらゆるジャンルの「専門誌」の集合体、つまり、ファンのライフスタイルを豊かにするために広く浅くではなく、あえて狭く深く追求するために用意されたプラットフォームが『Fan+』である。

今回は、サービスインに向けて準備中の『Fan+』取締役企画部長 兼 プラットフォームサービス部長の井上淳也氏にお会いする機会ができたので、『Fan+』の現在の構想や目指すところを伺ってみた。

『Fan+』取締役企画部長 兼 プラットフォームサービス部長の井上淳也氏

――はじめに、『Fan+』とは何ぞや? というところからお聞きしたいのですが。

「ひとりひとりにとって、僕はこれが欲しかったんだよっていうものがある場所=『Fan+』という存在にしたいと思っています。現在、インターネットの世界には、ありとあらゆる情報がならんでいます。しかし、自分が本当に欲しいモノまでたどり着くまでに、ものすごい労力を使わなければいけない場合があって、しかもある特定の分野ではたどり着くことができないかもしれない。そういった分野で、これは面白いよね、楽しいよねっていう、今はネット上に無い情報を持っている人たちに集まっていただいて、"こういうのが見たかったんだ"っていう形を『Fan+』で提示していければいいなと考えています」

――正式なスタートはいつごろとお考えでしょうか。

「今秋にはスタートできるようにがんばっているところです」

――出展する人たちは個人の方? それとも法人なんでしょうか?

「基本は法人契約なんですが、"僕ひとりで会社をやってます"とか、"アシスタントをひとりつけてやっています"っていう方でもOKです。つまり、そういう小さなユニットでやられてる方でも参加していただける、ということを目標に準備もしています」

――たとえば、インターネット上の動画の話をする際に『YouTube』や『ニコニコ動画』は避けて通れないと思います。これらは個人がコンテンツを製作して発表する場だったりします。『Fan+』は企業のコンテンツを出展するというのを基本としつつ、個人の作品を発表する場にも成り得るのでしょうか。

「『Fan+』は法人契約という形であるからこそ、ある程度コンテンツを継続的に提供し続けることが可能だと考えています。ですから、逆に個人で会社を作って運営していただければ、『Fan+』上での運営も可能ということになります。無料でもいいから見て欲しいというのであれば、それこそ『YouTube』や『ニコニコ動画』などの場所がありますが、ここで目指しているのは、"このコンテンツなら500円を払ってでも見たい"という、それなりのクオリティがある方(会社)に集まっていただきたいと」

――今のお話しを聞くと、たとえば一般ユーザーでは、なかなかアイドルや女優の写真集などのコンテンツ製作は難しいけれど、出版社や製作会社などが積極的に出店していればそういったものも可能になると。

「そうですね。そういった形が、まさにビンゴです」

――では、どちらかというと、企業がエンドユーザーに向けてコンテンツを配信するといった考えでいいのでしょうか。

「今のエンドユーザーは、(情報について)とても興味のあることと、ちょっと知っておきたいことという、それぞれのニーズの二極化が強くなってきていると感じています。そして、ちょっと知りたい分野については、それこそ『YouTube』とかでヒットすればよくて、ヒットしなければ諦めてもいいと。でもそうではなくて、この分野だけは本当に好きで、その情報を得るためだったらお金を払っても構わないというような人も増えているので、ひとりひとりの思い入れのあるモノが載っている、購入できるという所を『Fan+』は目指しています」

――お話しからイメージすると、一般ユーザーが『Fan+』というゲートをくぐったら、たとえば「アイドル」「映画」「鉄道」「アニメ」など、様々な分野のコンテンツが開かれていると。

「"ゲート"という呼び方でもいいですし、"ショッピングモール"という言い方でもいいと思います。たくさんの専門店がならんでいるといったイメージですね」

――なるほど。では、料金体系についてお聞きします。『Fan+』の場合は一般ユーザーが、そのいわゆる"ショッピングモール"に入る際に料金が発生するのでしょうか。もしくは、その専門店でデータを購入した際に課金されるのでしょうか。

「まず、『Fan+』ではユーザーの方に会員登録をしていただきます。そうすると、そのユーザー会員だけのMy Boxというバーチャルな"箱"を持つことができます。そこに、自分の"大好き"なモノをどんどん入れていただくという形になります。ですが、会員になってMy Boxを持つということに対しては、一切料金は発生しません。空の箱には何の価値もありませんからね。その後、会員がMy Boxに"大好き"を入れる際に、購入していただくということになります。そもそも、My Boxを持っていただくという行為の前に、"大好き"を購入したいというモチベーションが発生していると思います」

――いわゆる"気になるコンテンツ"を登録して購入を決めたときに、まずカートに入れるといった方式とも違うということになりますか?

「そうですね。"大好き"を見つけてもらって、ダイレクトに購入ボタンを押していただくといった形になります」

『Fan+』のブース。関係者に説明を求める来場者が、後を絶たないほどの賑わいを見せていた