日本酒業界を取り巻く厳しい状況

ここで日本酒業界の現況に触れておこう。現在酒造免許を持っている蔵元は約1,700あるが、酒造りを行う蔵元は毎年数十という単位で減少している。これに比例するように、全国新酒鑑評会への出品数も減少している。現在「延長」されている中小酒造業者に対する免税措置が打ち切られた場合、1つの蔵元につき700万円~800万円の負担増となる試算もある。

「これでは杜氏の給料も払えなくなり、酒造りを行う蔵は半減する」と訴える関係者もいた。この免税措置を受けていない大手蔵元の社長は、「免税措置が無くなれば数年で蔵元数は300程度に落ち着くのではないか」とも話していた。

各ブースをまわって、関係者と言葉を交わす日本酒造組合中央会の辰馬章夫会長(写真中央)

さらに最近はファンドによる強引な買収、外資の参入計画も話題となっている。このような時代を迎え、日本酒造組合中央会はどのような方向に舵を取るのだろうか。辰馬章夫会長に話を聞いた。

日本酒フェアや業界の現況に関しては、「全国新酒鑑評会は蔵元の文化・技術力の競演です。文化は多様性を持ってこそ、価値があるもの。蔵の数が減っている今、私たちは品質を大切にしなくてはいけません」と語った。また、近年海外で日本酒が好評なことについて、「今は和食と合わせて認知されている段階。まずは口に入れていただくことが大切だと考えております」とコメントした。

海外の人々が日本酒を飲む機会を増やすための活動の1つとして、酒サムライによる海外セミナーが挙げられるという。酒サムライは、日本酒文化を広く海外に伝えていくため、2005年に結成された。また、「モンドセレクションやIWC(インターナショナルワインチャレンジ)を通して、日本酒が評価されるようになってきています。このようなジャンルで挑戦する蔵元も増やしていきたいですね」と意欲を見せた。

日本酒造組合中央会は年に4回、海外での日本酒展示・試飲会を行っている。今年は7月2日に中国・北京での開催を予定しているそうだ。約20の蔵元が現地入りし、日本酒をアピールするという。

そして、今年も5月12日にIWC SAKE部門のメダル受賞酒が発表された。出品数は359点、そのうち18点が金賞を受賞した。ワイン文化の俎上でどのような酒質が高評価を得ているのか。IWCの受賞品を利き酒して体感することは、とても大きな意味合いを持つだろう。日本酒フェアでは金賞を受賞した日本酒全ての利き酒が可能である。そういった点も非常に魅力的であろう。

IWC金賞酒を利き酒できる。古酒も4銘柄が金賞になった

日本酒にも"ソムリエ"並みの資格を

海外で日本酒の評価が高まる中、きちんと日本酒文化を伝えていくための準備も始まっている。日本酒造組合青年協議会は昨年、「『日本酒資格制度(仮称)』創設に関する提言」を出した。これはワインにおけるソムリエに相当する、「公益性のある」資格制度を提言したものだ。

日本酒フェアの最大の魅力は、将来を展望した様々な取り組みを肌で感じることが出来る点にある。IWC SAKE部門金賞酒の利き酒、長期熟成酒研究会の利き酒など、毎年繰り返すことによって様々な発見があるだろう。来年の日本酒フェアも楽しみである。