なるほど、世間で酷評されている理由も何となくわかる出来ではありましたが、でも僕はハリウッドのスタッフはちゃんとやるべき仕事はやったのではないかと思うのです。
というのもですね、「ハリウッドがドラゴンボールを映画化するらしい」と聞いたときの世間のリアクションを思い出してほしいのですけど、ほとんど全員が「無理だろ!」とツッコんでましたよね。
そりゃそうです。
……そもそも、ドラゴンボールを実写化して成功する青写真がまったく描けないのですから。 だいたいいくらピッコロ編だけとはいえ、90分であの世界観を表現し、かつ面白いものを作るのは無理です。
いやまあひょっとしたら、僕たち凡人には思いもよらぬ素晴らしい実写化の方法が絶対にないとは言いませんが、でも僕が監督でこのオファーを受けたなら絶対途中で逃亡すると思います。
つまり、ハリウッド大作と同じような正攻法での勝負は最初から無理だったわけで、そうなると本作のとるべき道は2つしかありません。
「毒にも薬にもならないような地味で無難な映画」として仕上げるか、「ネタ満載のB級アクション」として仕上げるか、です。
もちろん正解は「B級アクションの道」ですよね。
確かにツッコミどころは多かったのですが、逆にいうとツッコめるのは原作を知っているからであり、その意味では「観客のほとんどが原作を知っている」という稀有な素材であるドラゴンボールを選んだのは正解だったと言えるのかもしれません(ちなみに原作を知らない方が見るとただのダメ映画だと思います)。
ならば、本作をきっちりとツッコミどころ満載な逸品に仕上げてきたハリウッドスタッフは、むしろしっかりやるべき仕事をやったと言えるのではないでしょうか。
……とまあ精一杯擁護してみましたけど、本作にドラゴンボール的なモノをちょっとでも期待して見に行くのは、地雷原だとわかっていて突っ込むようなものなのでご注意を。
行くならば、どういう映画なのかをわかった上で友だちや恋人と一緒に見に行くのがお勧めです。
それなら少なくとも、映画鑑賞後のディナーでの話題に困ることはないでしょうから。
そんな『DRAGONBALL EVOLUTION』は、ただ今全国ロードショー中です。
DRAGONBALL:EVOLUTION(C) 2008 Fox,Based on DRAGONBALL series by Akira.Toriyama.DRAGONBALL TM & (C) Bird Studio/Shueisha, Inc.