ガラス張りのオフィスビルとは対照的に、アイスランドの典型的な家々は、石造りの極めて質素な作りのうえに、カラフルでかわいらしい。そのカラフルな家並みはアイスランドの冬の暗さや寒さを吹き飛ばすほど明るく、観光客の目を楽しませてくれる。まるで、童話に出てくるお菓子の家かおもちゃの家といった印象だ。家がカラフルな点については、(1)家がトタン張りで味気がないから色をつけた(2)風が強いのでペンキを何度も塗り直す必要があり、一番安いペンキの色が原色だった(少しでも節約するため)(3)花があまり咲かないので自然の中に"色"が少なく、家に色を塗ったという説が一般的に言われている。
レイキャビックでおそらく市内で最も目を引く近代建築物は、市のランドマークにもなっている、ハットルグリムス教会(ルーテル派教会)であろう。異国情緒満点のこの高さ70mの教会の尖塔にはエレベーターで昇ることができ、展望台からはレイキャビックの街を360度見渡すことができる。筆者が訪れたのは、ちょうど日曜日のミサが行われている時間帯だったため、その周辺を散策しただけであるが、現在は修復工事中で残念ながらその全貌を見ることはできない。
相次ぐサマーハウスの売却……アイスランドの住宅事情
一見、華やかに見えるアイスランドの住宅事情だが、今回ガイドを担当してくれたアイスランド・ホライズン社のスタッフから、アイスランドの経済危機が国民の住宅事情にも及んでいるという話を聞く機会があった。
2008年9月に表面化したアメリカ発のサブプライムローンの波及で、世界金融危機の影響をもろに受けたアイスランド。アイスランドでは住宅を低金利の外貨建てローンで購入するのが一般的で、投資目的に2つ目の家を購入する人も少なくないという。だが、今回のアイスランド・クローナの大幅な下落で、住宅ローン返済に対応できなくなり、休暇を過ごす家として建てられたサマーハウスや住宅を手放す人が急増しているそうだ。ただ、売りに出したくてもなかなか買い手が付かず、途方に暮れている人も多いというのが事実のようだ。
2008年11月時点では、経済規模は最大10%縮小、失業率も8%に上昇すると予測されており、これからさらに国民の住宅事情は悪化すると言われている。国家の経済と人々の暮らしがどれほど密なものかは言うまでもない。