今年は新宿・歌舞伎町が生まれて60年の節目だという。コマ劇閉館のニュースをはじめ、最近はあまりいい話がない、"昔の繁華街"となりつつある歌舞伎町。

そこへ「もう一度この街を元気にしようじゃないか」と、新宿区、歌舞伎町商店街振興組合などが立ち上がり、日本たばこ産業、歌声喫茶「ともしび」、NPO法人ラテン文化センターIMPACTO LATINO、よしもとクリエイティブ・エージェンシーなどの協力を得て「歌舞伎町フェスタ2008」が開催されることとなった。開催期間は10月31日~11月3日。新宿ミラノ1、歌舞伎町シネシティ広場、東京都健康プラザ・ハイジアの3会場をメインとし、歌あり笑いありのイベントが4日間にわたって"混沌"と繰り広げられた。

オープニングの客層を見ると、完全に年金世代の方々のみという感じ。これは嵐の前の静けさか。歌舞伎町全盛時代を彷彿とさせる盛り上がりが起こるのか

初日となる30日は、シネシティ広場でオープニング・セレモニーが行われ、中山弘子新宿区長の挨拶ののち、女性サックス奏者・矢野沙織の生ライブ演奏でフェスが開幕。このイベントの特別顧問でもある中山区長は、「今年は歌舞伎町にとって変わり目の節目。戦後、この場所には歌舞伎座などの大きな劇場がやってくるはずだった。しかし大きな建物がつくれないなどの法規があるなどで、実現はできなかったが、これからは『歌舞伎町ルネッサンス』として動き出し、この歌舞伎町で企画や制作も行なえる情報発信地として発展させたい」と冒頭語った。

中山弘子新宿区長の挨拶から歌舞伎町フェスタが始まった

藤田氏は「コマ劇やプラザが閉まったりしても、古き良きものがある歌舞伎町にみんなに来てもらいたいし、再生していってもらいたいという気持ちもある」とも語った

矢野氏「12月に新しいアルバム『GLOOMY SUNDAY』が出ます。初めてオーケストラと競演するアルバムです」

しかしプログラム表を見ただけでは、このイベントの狙いがいまいち、ピンとこない。"よしもと"のお笑いショーをはじめ、歌声喫茶ともしびの"同窓会"、ラテン音楽ライブ、ビジュアル系バンドのコンサートなど、それぞれのお祭りが"カオス的"に勃発しているのだ。実行委員会の藤田敏夫氏は「街の名前である"歌舞伎"にちなみ、『歌って踊って笑って』というコンセプトのもと、プログラムを構成した。また、例えばラテンは、多民族国家・文化共生という歌舞伎町らしさを象徴しているということで、取り入れた」と説明していた。

また、見事なライブを披露した矢野沙織氏は、平日23時のニュース『報道ステーション』(テレビ朝日系)のオープニング音楽のサックス奏者であることでも知られる。彼女は歌舞伎町について「危ないところもあるし、感化されるところもある街。俳優さんやミュージシャンがいっぱいいる街でもあり、よく遊んでいたので、コマ劇がなくなる話を聞いた時はとても寂しかった。それに、子供や若い子が歌舞伎町からいなくなった。昔はスケーターなどの友達もいっぱいいたのだけど……。浄化と活性化ってどうやって両立していけばいいのだろう」と語った上で「(「歌舞伎町フェスタ2008」を機に)どんどん新しくなってくれればいいと思う」と期待を込めた。

歌舞伎町は終戦直後、焼け野原の新宿に歌舞伎を上演する施設を建設し、それを中心とした芸能施設を集めるという都市計画のもとに今から60年前の1948年に名づけられた。その計画こそ実現しなかったものの、歌舞伎町は芸能文化の発信地としていち早く復興を成し遂げ、世界有数のユニークな繁華街になったという