現在、神楽坂で開催されている「神楽坂まち飛びフェスタ2008」。そのメインイベントのひとつである「お座敷遊び入門講座」が25日、東京神楽坂組合において2回行われた。40人ほど入れる会場はいずれも満席。参加者はなかなか体験できない芸者さんたちとの交流を楽しんだ。

目の前で繰り広げられる華麗な舞

東京神楽坂組合の2階、ふだんは稽古場として使われる会場は、舞台部分も含めるとだいたい40畳ほどの広さ。金屏風が置かれた正面舞台の右手に、三味線、囃子、唄を担当するいわゆる「地方(じかた)」さんが陣取る。客層は女性が7割ほど。男女とも年齢層は幅広く、外国人の姿もあった。ちなみに、取材したのは2回目の講座だが、1回目は男性が多かったとのこと。両方合わせると、ちょうど男女半々になるそうだ。

まずは「をどり」が披露された。優奈さんと鈴乃さんによる「紅葉の橋」が始まると、会場はなんとも言えない粋な雰囲気に包まれる。華麗な舞に見とれてしまうだけではなく、芸者さんの存在感や、三味線、唄の優雅な響きに圧倒され、引きこまれ、贅沢な気分になってきた。妙なものだが「ああ、やっぱり自分って日本人だったんだな」と再認識。今までまったくと言っていいほど接点のない世界なのに、すんなりと踊りや音楽がからだに染み込んできて心地好い。

まずは優奈さん(右)と鈴乃さんによる「紅葉の橋」が披露された

地方のみなさん。三味線(ぼたんさん)、唄(夏栄さん、眞由美さん)、囃子(由みゑさん)

続いて桃子さんによる「ひと里」。桃子さん、優奈さん、鈴乃さんによる「奴さん」。最後は同じく3人による「さわぎ」。日本舞踊の多彩な魅力と奥の深さが、短い時間ながらも伝わってくる構成となっていた。15分はあっという間に終了。まだまだじっくりと鑑賞したい気分だった。

泉鏡花が神楽坂を唄にしたとされる「ひと里」

三人揃ってひと際華やかな「奴さん」の舞

最後は「さわぎ」で締めくくられた

お座敷ゲームで大盛り上がり

「をどり」の次は、お座敷ゲーム。芸者さんたちが見本を見せてくれた後、お客さんが参加した。最初の「涼しくなったら」では、照れているせいかまだまだ硬さが見られた参加者だったが、すぐに会場は和やかな空気に。続いての「虎々」は虎(四つん這い)、加藤清正(槍を構える)、老母(杖をつく)を演じてじゃんけんのように勝敗を決めるゲーム。金屏風を挟んでふたりが並び、曲に合わせて踊り、勝負する。虎は加藤清正に負け、老母は虎に負け、加藤清正は老母(母親に槍は向けられないため)に負けるという仕組み。お座敷の定番ゲームのひとつだ。

最後の「金比羅ふねふね」も有名なお座敷ゲーム。卓上にお銚子の袴を置き、向かい合ったふたりが交互に手を差し出す。袴があるときはパー、相手が袴を取ったときはグーを出すというもので、これを「金比羅ふねふね」の唄にのって行う。手の出し方などを間違った方が負けだ。シンプルだが、リズムに合わせて正しく手を出すのはなかなか難しい。しかも、だんだんと曲が速くなっていく。参加者の勝敗がつく度に、会場は大きな歓声に包まれた。

お座敷ゲームの「虎々」。左がおばあさんで右が虎なので虎の勝ち

こちらは右の槍が負けとなる

「金比羅ふねふね」。この場合はパー

箱を取られたらグーにする

次々と手が上がった質問コーナー

3つのゲームを30分あまり満喫した後は質問コーナーが設けられた。化粧は自分ですることや、カツラを使うようになり始めたのは戦後らしいということ。稽古は師匠からマンツーマンで受けられるのは1回2、30分程度で、あとはそれぞれが研鑽を重ねること。現在は2、3カ月の研修でお披露目となること。芸者さんはお酒が飲めなくてもいいこと。などなど、次々と質問が飛び交う。踊りの流派、京都との違いなど、花柳界を知る人からの質問も少なくなかった。

お客さんも参加してゲームを楽しんだ

(c)神楽坂まち飛びフェスタ実行委員会

最後の質問コーナーも盛り上がり、花柳界への関心の高さがうかがわれた

東京神楽坂組合の外観

神楽坂の料亭は現在6軒。芸者衆は30人ほど。かつてに比べればかなり少なくなってはいるものの、芸者になりたいという若い女性は増えているという。景気が真っ先に響いてくるこの世界。厳しい状況が続いているのも事実だが、このすばらしい伝統芸能が今後どのように受け継がれていくか見守っていきたいものだ。

なお、一般の人も鑑賞できる神楽坂芸者衆総出演の踊りの会「神楽坂をどり」は来年4月4日、新宿区立箪笥(たんす)町区民センターで開催される。開催日が近くなった頃に、東京神楽坂組合のホームページに詳細が掲載される予定。同ホームページでは神楽坂花柳界についての情報も知ることができる。