「チンクエチェント」をご存知だろうか? イタリア語で「500」を意味するこの言葉は、実は昨年、イタリア本国を中心に欧州で大きな話題となった。伊Fiat Group Automobiles(フィアット グループ オートモービルズ)が発売した新型「Fiat 500」の愛称なのだが、日本では宮崎駿氏の劇場映画初監督作品となる「ルパン三世 カリオストロの城」にて、赤い「Citroen 2CV」に乗ったクラリスを救うため、ルパンが運転する鮮やかな黄色の旧型Fiat 500が登場し、激しいカーチェイスを展開する場面で一躍有名になったキュートなデザインの車である。

旧型Fiat 500

新型Fiat 500

1957年にイタリアで発売されたFiat 500は、昨年7月に50年ぶりの最新型モデルで復活を遂げ、すでに欧州では昨年を代表する人気車となったのだが、いよいよ今年は、日本市場のみの国内オリジナル仕様となるFiat 500が用意されて、大々的に販売がスタートする。日本正式発売を前にして、フィアット グループ オートモービルズ ジャパンのフィアット ブランド本部フィアット カントリー マネージャーとなるティツィアナ アランプレセ(Tiziana ALAMPRESE)氏から、Fiat 500にかける熱い想いとストラテジーをお聞きしたので、最新情報とともにお届けする。

楽しく自然なブランドで愛されたい

フィアット カントリー マネージャーのティツィアナ アランプレセ氏

イタリア南部で生まれたアランプレセ氏だが、筆者も驚くほど流ちょうな日本語で、スラスラと漢字も書けてしまう日本が大好きな素敵な女性である。温泉めぐりも好きという同氏は、イタリア在住時に日本文化の魅力に取りつかれたと語る。ドイツの哲学者オイゲン・ヘリゲル(Eugen Herrigel)の著した「弓と禅」から日本論に接して、西洋文化とは異なる日本文化への興味を惹かれ、日本語の勉強を17歳の時にスタート。特に日本語のひらがなや漢字の文字の美しさにすっかり引き込まれ、いつの間にか福岡の九州大学大学院へと留学し、日本での生活を満喫するに至っていたという。

卒業後はイタリアに戻って、現地に進出してきた日本の自動車メーカーで3年ほど勤め、1992年に現在のフィアット グループ オートモービルズへと入社して、現在に至っている。「もうフィアットに入って15年以上になりますが、とっても楽しかったのであっという間でした。世界でヒューマンな、つまり人間的な仕事に関わって、いろんなことをしてきました」と、同氏は振りかえっている。ロシア、中国、インド、エジプト、トルコなど、まさに世界各地を駆け回り、グローバルマーケティングを成功させた後、再び愛する日本へと戻ってきたという。

「日本でフィアットのブランディングを強化する…」

その使命を帯びて2年前に再来日した同氏だが、まずは正直な感想として、日本市場におけるドイツ車のブランド力の圧倒的な強さに驚いたそうだ。BMW、メルセデスベンツ、アウディ、フォルクスワーゲンなど、すっかり日本ではエレガントなステイタスシンボルとしての車というブランドイメージが安定している。それに比べて、"フィアット"というブランドはどうか? イタリア車は、ドイツ車とは異なるブランドイメージが強みであり、そこを自然に無理しないで浸透させていくことが求められているのではなかろうか…。

フィアット グループ オートモービルズ傘下にはアルファロメオも入っている

実はフィアット グループ オートモービルズ傘下には、フィアットに加えて、アルファロメオ、フェラーリ、ランチア、マセラティのブランドも入っている。日本でも、特にアルファロメオは、高級車のイメージあふれるブランドとして定着してきているようだが、昨年はフィアットのロゴが一新されるなど、今後もっとフィアットとしてのブランド力を高めていくとの認識が新たにされ、重要な節目を迎えた1年だったという。

アルファ スパイダー

アルファ159

アルファ147

アルファ ブレラ

「アルファロメオには、まだまだ女性のドライバーが少ない。でも、フィアットのイメージは、一言では"JOY"、つまりは楽しいライフスタイルなんです。生活の中で、自分が好きなファッションだから服を選ぶ。それはだれかに見せびらかすためではなく、自分が楽しくしたいから…。子どもと一緒に過ごしているだけで、生活は楽しい。だって、ビックリするようなことがよく起きるから…。そんな楽しさを、車でも自然にしちゃいましょう」

昨年一新されたフィアットのロゴデザイン

かわいい、おもしろい、おしゃれ、楽しいを、大きく背伸びして構えなくても実現できてしまう、そんな自然なイメージのブランドでフィアットを成長させ、コアなファンを増やしていきたい…。そう語る同氏だが、まさにこのブランドイメージにピッタリのFiat 500こそが、日本でのフィアット飛躍の大きなカギを握ると期待されているのだ。

「Fiat 500は本当に楽しい車! ちょっとした写真撮影だって、おしゃれに決まっちゃう。小さいけどすばらしいなって言われるのがうれしい」と話す同氏は、日本でFiat 500を愛するサポーターを育てるべく、驚くべき秘策もあると笑いながら語りだした。

楽しくおしゃれに決まるのがFiat 500の魅力!