脅威的な予約殺到で大人気…

パンダ

フィアット カントリー マネージャーのティツィアナ アランプレセ氏によれば、そもそも当初から「Fiat 500」の復活を狙って、新モデルの開発へと着手したわけではないそうだ。すでにAセグメントのコンパクトカーとしては「パンダ」(Panda)が存在する。次なるモデルとして、より環境に優しいエコフレンドリーな車を意識し、小さくてもパワフルかつ安全性が高い、新デザインの次世代カーの開発を進めた時に、ふと今も根強い多数の愛好家によって大切に乗られ続けている、愛称「チンクエチェント」のFiat 500の存在がクローズアップされ始めたという。

「最先端の車の開発を目指していたので、何か古い自動車と一緒のものにしてしまう考えなどは、全く頭にありませんでした。けれど、チンクエチェントって、小さいのに、すばらしいモビリティを実現した車という良いイメージが、今でも本当に強く、イタリア人の心には特別な記念すべき存在として生き続けているんですね」と、同氏は語っている。

多くのイタリア人にとって今でも記念すべき特別な存在である旧Fiat 500

いざFiat 500として、最高の新モデルで復活させることが決定してからは、いわゆる"フィアット・コミュニティー"とも呼ぶべきファン層を取り込み、旧Fiat 500を上回る新たなサポーター層を構築すべく、ブランディング力の向上を狙った活動が全力で多方面に展開されてきた。特にインターネット上での"チンクエチェント復活"PRが功を奏してきたようで、50年前の旧Fiat 500発表と同じ日付を狙って、7月にイタリア各地で開催された新型Fiat 500の発表イベント前にも、すでにFiat 500の特別オフィシャルサイトが大きな注目を集めてきたという。

これが新Fiat 500だ!

昨年、イタリアやフランスを中心とする欧州各国で正式発売されたFiat 500だが「通常の1年の生産台数が、わずか1カ月で予約済みになってしまいました。今もFULLY BOOKED(予約いっぱい)状態が続いている…。ものすごいことになってますね」と、同氏は説明している。多彩なボディカラーから、内装デザイン、アクセサリーオプションに至るまで、ユーザーが好みの1台に仕上げられる点も、非常に好評のようだ。

カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたFiat 500

単なる人気先行ではなく、昨年は終わってみれば、欧州22カ国の著名モータージャーナリストで構成される国際カー・オブ・ザ・イヤー選考委員会で、Fiat 500がダントツトップで「カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたほか、欧州新型自動車評価プログラム(Euro NCAP)の安全性能試験で五つ星評価を獲得、2007年度の最高の乗用車ボディー品質と安全基準の達成が評価されて、Automotive Circle International(ACI)から「EuroCarBody 2007」第1位に選出されるなど、クオリティ面でもハイレベルな仕上がりが十二分に評価された年でもあった。自動車業界にとっては、昨年は世界的に厳しい1年となったようだが、こうした中でも、Fiat 500の好調によって、Fiat Group Automobiles(フィアット グループ オートモービルズ)は好業績を記録するハッピーな年だったと、同氏は振り返っている。

最高の乗用車ボディー品質と安全基準の達成も評価された

日本向け特別オリジナル仕様車の製造スタート!

1.2リッター/1.4リッターのガソリンエンジン搭載モデルと、1.3リッターのディーゼルターボエンジン搭載モデルがラインナップ

いまだに欧州でも品薄状態…のFiat 500だが、日本で発売を心待ちにしているファンも少なくない。欧州では1.2リッター/1.4リッターのガソリンエンジン搭載モデルと、1.3リッターのディーゼルターボエンジン搭載モデルが用意された。旧Fiat 500のデザイン継承にこだわった点もあってか、左ハンドル&5速/6速マニュアルトランスミッション(MT)車のみをラインナップしている。しかしながら、今春に予定される日本オリジナルモデルのFiat 500は、右ハンドルで、オートマチックトランスミッション(AT)とMTモードを自由に切り替えられる「デュアロジック」が搭載された特別仕様になる。販売価格は200万円台前半からに設定されるようだ。

この日本向けのFiat 500が、ついに昨年末に同社のポーランド工場で製造ラインに乗り、いよいよ日本国内での発売も現実味を帯びてきた。すでに昨年は日本各地で、イタリア本国仕様車ではあるものの、多彩なイベントにFiat 500を出展して、さらなるフィアットブランドの浸透を図るPRプログラムが展開されたようだが、まだ日本では「ほんの準備段階に過ぎず、今年はすごいことが起きるから期待していてほしい」と、アランプレセ氏は語っている。