自動車メーカーブースを回ると、それぞれの温度差が感じられておもしろい。所狭しと開発中の新技術を並べているところもあれば、いつか見たようなシミュレーターをひとつ置いてあるだけのブースもある。技術開発を行なっていないメーカーはないだろうから、展示の少ないメーカーは、まだ見せられない極秘の技術を開発中なのだろうかとも考えてしまう。ここでは自動車技術の主役ともいえる動力機構をまとめてみる。
ハイブリッドは安定技術に
「人とくるまのテクノロジー展2007」を見る限り、ハイブリッドはすでに主役の座を去りつつあるようだ。もちろんハイブリッドが古いというわけではなく、すでに安定した技術になりつつあるということだろう。乗用車メーカーではハイブリッド車を展示したブースはほとんどなく、トラック系のメーカーでいくつか見られた程度。
たとえば三菱ふそうは「キャンター」のエコハイブリッドシステムを展示。エンジンにはクリーンな小排気量のタイプを使用し、モーターの力で不足する動力を補う考え方だ。発進時にはモーターのみとすることで、クラッチの寿命も長くなるという。
もちろんハイブリッドが安定した技術だといっても課題は少なくない。たとえばバッテリーの寿命やモーターの軽量化などだ。そういった技術は部品メーカーを見るのが手っ取り早い。TDKのブースでは世界最高磁力をもつ磁石を展示していた。従来材質に比べ磁力材のエネルギー密度を20%向上させたもので、同じエネルギーを得るならモーター体積を12%減少できるという。ハイブリッドだけでなく、来たるべき電気自動車や燃料電池にとっても重要な技術になるはずだ。
電気自動車はインフラがポイント
ガソリンや水素といった燃料を持たず、蓄えた電力だけで走る電気自動車。その特性から近距離を中心としたコミューター的な使い方が似合う。今回のショーでは三菱自動車とスバルのブースに電気自動車が展示されていたが、どちらも軽自動車ベースのものだった。
三菱の「i MiEV」はリヤ・ミッドシップにエンジンをマウントした「i」(アイ)をベースにしたもので、このパッケージングを活かし、床下にリチウムイオン電池、リヤにモーターを搭載している。2006年度の研究車両では航続距離130kmだったが、本年度のストリートモニター車では160kmをめざすという。小型高性能モーターを使用し、ベース車(ガソリンエンジン)と最高出力は同じながら、最大トルクは2倍近くを発生している。そのため80km/hまでの加速は1.5秒も向上している。
スバルの「R1e」は、同車の「R1」をベースにした電気自動車。東京電力との共同開発によるもので、航続距離は1回の充電で約80kmと、短距離移動のコミューターに割り切った作りとなっている。その代わりというわけではないが、バッテリーは7万km(7年)メンテナンスフリーだという。
「i MiEV」「R1e」ともに、家庭用電源(100V/200V)、および三相200V電源での充電が可能。特に「R1e」は東京電力と共同開発した急速充電器も合わせて展示していた。3ウェイ充電が可能のなのは、充電ステーションなどがほとんどないインフラを想定し、できるだけ充電の機会を増やすため。電気自動車そのものはすでに実用レベルに達しているが、ポイントはインフラの充実。将来的にはファミリーレストランなどにも充電器が設置されるというが、本当にそうなれば電気自動車は一気に広がるはずだ。
ディーゼルに陽が当たる日
次世代自動車の主役といわれている燃料電車だが、今回のショーではあまり多くはなかった。ホンダが「FCXコンセプト」を、マツダが「RENESIS」水素ロータリーエンジンを展示した程度。両者ともあちこちのショーで公開されたもので、特に目新しいというわけではない(もちろんそれぞれの技術そのものは素晴らしい)。
それより目についたのは、スバルが展示した水平対向ターボディーゼルエンジンだった。昨年日本で発売されたメルセデスベンツのディーゼルも好調とのことだが、日本メーカーも乗用車にディーゼルを積む日が再び来るようだ。
スバルのディーゼルエンジンは水平対向であるため、バランサーシャフトを持たなくても振動が少ないのが特徴。また、ターボユニットをエンジン下にマウントすることで、低重心が可能としている。このディーゼルエンジンは、2008年に欧州での発売を予定しているが、ぜひ日本にも登場させてほしいと思う。