この半導体ニュースのまとめ
・島津製作所、大阪大学、DOWAパワーデバイスがCu-AlN基板の新製法を実用化
・青色半導体レーザーを用い、銀を使わずAlN基板へ銅電極を直接形成
・従来基板比でヒートサイクル耐久性を3倍以上に高め、AIサーバーなどへの展開も想定
島津製作所は8月25日、大阪大学接合科学研究所およびDOWAパワーデバイスとの共同研究により、マルチビーム積層造形法を用いた銅-窒化アルミニウム基板(Cu-AlN)の実用化に成功したことを発表した。
AlN基板へ銅粉末を供給しながら青色半導体レーザーを照射することで、銀を含むろう材を使わず、銅電極を直接形成できる。島津製作所によると、同様の技術は世界初だという。
銀を使わずAlN基板へ銅電極を直接形成
Cu-AlN基板は、銅の高い熱伝導性とAlNの熱伝導性・電気絶縁性を生かし、主にパワー半導体デバイスの放熱用絶縁基板として使用されている。
従来は、銀を含むろう材を用いて銅とAlNを高温で接合する活性金属ろう付け法が一般的だったが、製造時間の長さに加え、接合後の残留応力による基板の変形や亀裂、接合部の剥離、銀マイグレーションによる絶縁信頼性の低下などが課題となっていた。
今回、開発された新プロセスでは、銅に対する光吸収効率が高い青色半導体レーザーを利用し、AlN基板上で銅粉末を溶融させて直接コーティングする。ろう材を使用しないため、銀マイグレーションの原因を排除できるほか、残留応力を抑えながら銅とセラミックスを強固に接合できるという。
3者は2022年11月から共同研究を進めてきており、島津製作所は青色半導体レーザーを用いた銅コーティング装置と加工プロセスの開発を担当した。
ヒートサイクル耐久性を3倍以上に向上
新プロセスで作製したCu-AlN基板は、高い放熱性能に加え、従来基板と比べてヒートサイクル耐久性が3倍以上に向上したという。
ヒートサイクル耐久性は、低温と高温を繰り返した際に、基板や接合部が亀裂や剥離を生じずに耐えられる性能であり、高温動作や急激な温度変化が発生するパワーモジュールでは、長期信頼性を左右する重要な指標となる。
また、マルチビーム積層造形法は3D造形技術を利用するため、AlN基板上に任意形状の銅回路を形成できる。細線パターンや複雑な回路形状にも対応可能で、放熱性や絶縁性だけでなく、高密度配線や製品の小型化にもつなげられるとしている。
パワー半導体からAIサーバまで用途展開へ
3者は今後、パワー半導体デバイスに加え、光通信機器、通信衛星、AIサーバ、医療用レーザーなどで同技術の利用検証を進める。
半導体の高性能化や高密度実装に伴い、パワー半導体だけでなく、AIアクセラレータや光通信部品などでも、限られた空間から効率良く熱を逃がしながら、電気絶縁性と長期信頼性を確保することが求められている。
銀を使用しない直接接合による高い絶縁信頼性、低残留応力、ヒートサイクル耐久性に加え、3D造形による回路設計の自由度を生かし、従来工法では対応が難しかった高密度・高放熱基板への適用を目指すとしている。

