この分析機器ニュースのまとめ
・Shimadzu Tokyo Innovation Plazaは2022年10月に竣工した最先端のラボ体験を提供する共創拠点
・先端分析手法の開発、顧客への技術サポート、社外連携という3つの役割を担う
・約150~160台の装置と4つのラボを活用し、顧客や研究機関との協業を推進
島津製作所が神奈川県川崎市殿町の国際戦略拠点「キングスカイフロント」に構えるオープンイノベーション拠点「Shimadzu Tokyo Innovation Plaza(Shimadzu TIP)」。
同施設は、分析機器そのものの開発ではなく、分析機器を顧客の課題解決へつなげるための分析手法、いわゆるアプリケーションの開発を担う拠点として位置づけられており、測定対象に応じて前処理、分析条件、使用する装置、データ解析方法を組み合わせ、顧客ごとに適した分析のレシピを生み出してきた。
先端分析手法の開発、顧客支援、社外連携を推進
そんなShimadzu TIPが担う役割は大きく3つあるという。第1は、社会課題の解決に向けた先端分析手法の開発である。顧客が持ち込んだ試料や課題に対し、クロマトグラフ、質量分析計、分光分析装置、X線装置、材料試験機などを組み合わせ、最適な測定方法を検討する。
第2は、顧客への技術サポートである。装置購入前の見学や実試料を用いた性能評価に加え、導入後の分析条件の検討などにも対応する。また、新たなラボの設置を計画する顧客には、装置配置や排気設備、試薬・ガスの管理、実験排水の監視など、ラボ運用の参考となる環境を示す役割も担っているという。
第3は、大学や研究機関、企業などとの社外連携である。共同研究用のラボを設け、パートナーと数カ月から1年程度にわたって分析手法や新用途を探索するほか、講演ホールやラウンジを学会、シンポジウム、技術セミナーなどに活用している。
約100人のスタッフと4つのラボを配置
施設は2022年10月に竣工し、2023年1月に開所した。地上4階建てで延床面積は9503m2。約100人のスタッフが在籍し、その約8割を分析装置に精通するアプリケーション技術者が占める。約150~160台の分析装置が設置されており、顧客のさまざまな課題解決に向けたサポートや協業が行われている。
全4階建ての建屋の1階から3階に、分析対象や用途に応じた4つのラボが配置されている。1階の「Material Science Laboratory」では、材料試験機、マイクロフォーカスX線CT、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などが設置され、材料の強度、表面、内部構造などの評価などが進められている。例えばX線CTは、リチウムイオン電池をはじめとする工業製品の非破壊検査にも利用されているという。



1階の「Material Science Laboratory」の様子。物理的な引っ張り強度などの物理的な分析からX線CTといった非破壊検査、そして電子顕微鏡やSEMといった分子・原子レベルの様子を知るための装置まで幅広くそろえられている
2階には2つのラボが配置。1つ目の「Healthcare Science Laboratory」には、液体クロマトグラフ(LC)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、四重極飛行時間型質量分析計(QTOF)などを設置されており、医薬品、疾病マーカー、食品、PFASなどの分析に対応するほか、血液などを扱うバイオハザード対応ラボも備える。
2つ目は「Optics Science Laboratory」で、全有機体炭素計(TOC)、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)、ICP-MSなどが設置されている。このほか、大学や企業との共同研究に用いる3つの小規模ラボも設置されている。
3階の「Green Science Laboratory」には、ガスクロマトグラフ(GC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)などを約35台配置。石油化学、エネルギー、環境分野などの分析手法の開発に活用されているほか、装置購入前の試料測定にも利用されるという。
ここで注意する必要があるのは、同施設は有償の受託分析サービスを行っているわけではなく、こうした分析はすべて分析手法の開発や技術支援を目的に行われているということ。有償の分析サービスそのものはグループ会社の島津テクノリサーチが担当しており、島津テクノリサーチそのものは同施設内にオフィスを構えていないものの、イベントなどで同施設を活用しているという。
研究者や顧客をつなぐイベント機能も整備
4階にラボはなく、186席のメインホールが設置されている。学会、国際会議、セミナーなど、島津製作所が関係するイベントがたびたび開催されている。メインホールはパーティションで2会場に分割できる仕掛けとなっており、それぞれの会場で異なる発表を行うといったことも可能だという。
また、4階の中央部分には、初代島津源蔵による民間初の有人軽気球飛揚をモチーフにした球体「Globe」があり、内部に約30人ほどのクッションが配置された円形ホール「ICHIHANA Hall」が設けられている。ICHIHANAは「最初」や「真っ先」を意味する古語の「一端」に由来し、先駆者であり続けるという思いを込めたという。
キングスカイフロントには、国立医薬品食品衛生研究所をはじめ、大学、研究機関、企業など約80機関が集積しており、同社の分析装置がそうした研究所などで活用されているケースもある。また、多摩川を挟んで羽田空港があることから、国内のみならず国外からの研究者や顧客も訪れやすいというメリットもあり、共同研究、学会、イベントなどのオープンイノベーションを通じて交流を深め、新たなニーズを分析手法の開発へ反映させる場として期待されている。
分析装置は、同じ機種でも試料の種類のほか、前処理や測定条件、解析方法によって得られる結果が変わってくる。そのため、顧客側も単に高度な装置を導入するだけで、抱えている課題を解決できるとは限らない。Shimadzu TIPを通じて、そうした顧客との対話を通じて、必要な分析結果や精度を確認し、装置の選定から前処理、測定、データ解析までを含む分析手法の最適な使い方を作り出す取り組みが進められることで、同社では金融を除くあらゆる産業分野における分析という課題解決の実現につなげ、よりよい社会に向けたイノベーションの創出を支援していきたいとしている。












