このロボット関連ニュースのまとめ

・清水建設が建設現場向けAIロボットの研究開発を本格化、フィジカルAIの現場実装を開始
・ヒューマノイドロボットによる現場巡回や、ロボットアームによる塗装作業の実証を推進
・建設業に特化したAIエコシステムを構築し、労働力不足の解消と生産性・安全性向上を目指す

建設現場向けAIロボットの実証を本格化

清水建設は7月8日、建設現場における労働力不足の解消と、生産性・安全性の向上を目的として、AIロボットの現場実装に向けた取り組みを開始したことを発表した。

同社ではAIロボットを、カメラやセンサなどによって現実世界の状況を把握し、ロボットや機械システムを適応的に制御するフィジカルAIの代表的な技術と位置付ける。従来の建設現場向けロボットは、あらかじめプログラムされた動作を行う専用機として利用されることが多かった。一方、AIロボットが実用化できれば、現場環境の変化に応じて判断し、複数の作業を担う汎用機として活用できる可能性がある。

建設現場は、作業の進捗に伴って日々環境が変化する。また、建設業では人手による作業が依然として多く、熟練技能者の高齢化や担い手不足も課題となっている。清水建設は、こうした建設業の作業特性を踏まえ、環境変化に適応しながら物理的な作業を行えるヒューマノイドロボットに着目した。

Torch Towerでヒューマノイドによる巡回を実証

すでに同社は、手にカメラを持った状態で自律歩行するヒューマノイドロボットによる現場巡回の実証を進めている。

同社が施工を進める「Torch Tower(トーチタワー)」の建設現場で実施した実証では、ヒューマノイドロボットが手にカメラを持ち、1.0m/sの速度で自律的に歩行したという。ロボットは現場の状況を感知・判断しながら、あらかじめ指定された経路を巡回した。

同社では、カメラで撮影・取得した映像をマルチモーダルLLM(大規模言語モデル)を駆使したAI技術によって解析することで、管理業務である現場巡回の効率化につなげることも検討している。現場巡回は、安全確認や進捗確認などに欠かせない業務である一方、人手と時間を要する作業でもある。AIロボットによる巡回と画像解析を組み合わせることで、管理業務の省力化や異常検知の高度化につながる可能性がある。

  • カメラを手に建設現場を巡回するヒューマノイドロボットの様子

    カメラを手に建設現場を巡回するヒューマノイドロボットの様子 (出所:清水建設)

ロボットアームによる塗装作業も実証

また同社は、ヒューマノイドロボットによる現場巡回に加え、ロボットアームによる塗装作業の実証も進めている。

この実証では、作業者の動作をロボットアームに模倣学習させることで、塗装作業をロボットが実行できるようにすることを目指している。建設現場では、熟練者の動作や判断が品質を左右する作業が多く存在する。こうした技能をAIモデルとして学習・蓄積し、ロボットへ移植できれば、作業の自動化だけでなく、技能伝承の観点でも意味を持つ。

  • ロボットアームによる塗装作業の様子

    ロボットアームによる塗装作業の様子 (出所:清水建設)

特に、熟練技能者の高齢化が進む中で、高度な建設技能をどのように次世代へ継承するかは業界全体の課題となっている。AIロボットへの技能のモデル化・アーカイブ化は、単なる自動化にとどまらず、日本の建設業が持つ現場技能をデジタル資産として残す取り組みにもつながる。

建設業に特化したAIエコシステムを構築へ

AIロボットの現場実装には、単にロボットを導入するだけでは不十分であり、清水建設では建設現場でのフィジカルAI実用化に向け、建設業に特化したAIエコシステムの構築が必要だとしている。

具体的には、建設現場におけるデータ収集・分析およびシミュレーション、AI学習モデルの構築、ロボットへの実装(実証試験)というサイクルを継続的に回すことが求められるとする。現場環境は案件ごとに異なり、工事の進捗によっても変化するため、AIモデルやロボット制御を現場データに基づいて改善し続ける仕組みが重要になる。

同社は今後、こうしたAIエコシステムを構築することで、建設作業におけるロボット化の適用範囲を広げていく考えである。将来的には、巡回、検査、塗装、搬送、軽作業、危険箇所での作業支援など、さまざまな作業への展開が期待される。

ソニーなどと連携し、建設業界の先陣を切る

清水建設は、AIロボットの開発や現場実装に向け、ソニーなど複数企業の技術協力を得ながら取り組みを進めているという。

建設現場向けAIロボットの実用化には、ロボット本体の運動性能だけでなく、画像認識、マルチモーダルAI、センサフュージョン、SLAM、遠隔監視、作業計画、シミュレーション、データ基盤、エッジコンピューティングなど、幅広い技術が必要となる。建設会社単独で完結できる技術領域ではないため、ロボティクスやAI、センサ、通信、半導体、ソフトウェアに強みを持つ企業との連携が重要になる。

建設業界では、将来的な労働力不足への懸念が一段と高まっている。清水建設としては、国内建設業界の先陣を切る形でAIロボットの実用化を進めていくことで、労働力不足の解消、生産性向上、安全性向上に加え、熟練技能の継承にもつなげたい考えだ。

AIがサイバー空間から現実世界へ広がるフィジカルAI時代において、建設現場はその代表的な応用先の1つとなることが期待される。日々環境が変化し、多様な人手作業が存在する建設現場で、AIロボットがどこまで実用化できるかは、今後の建設DXやロボティクス活用の進展を占う取り組みとなりそうだ。