この半導体ニュースのまとめ
・DMPが東京流通センター内に「東京ロボティクス・イノベーションセンター ショールーム」を開所
・AMR、AGF、エッジAIカメラ、ロボットアーム向けビジョンシステムなどを実機展示し、顧客との共同検証に活用
・エッジAIチップ「Di1」やパートナー製品を組み合わせ、製造・物流分野でフィジカルAIの社会実装を目指す
東京流通センターにフィジカルAIの実装拠点を開設
ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)は7月24日、東京都大田区平和島の東京流通センター内に「DMP 東京ロボティクス・イノベーションセンター ショールーム(TRIC)」を開所し、メディア向け発表会を開催した。
同ショールームは、DMPが注力するフィジカルAIの社会実装を加速するための拠点と位置付けられる。自律搬送ロボット(AMR)、自動誘導フォークリフト(AGF)、ドローン、エッジAIカメラ、FA向けロボティクスソリューションなどを実機展示し、顧客企業やパートナー企業が実際に動作を確認しながら、現場課題の具体化や解決策の検討を進められる場とする。
発表会では、DMP 代表取締役会長兼社長CEOの山本達夫氏が、同社の事業概要、ショールーム開設の狙い、今後の展望を説明。その後、東京ロボティクス・イノベーションセンター所長でFA事業部マネージャーを務める吉行功司氏の解説のもと、AMRやAGFによるデモンストレーションが行われた。
「画像を知能化し、現実世界を動かす」企業へ
DMPは2002年に創業したファブレス半導体企業で、GPUや半導体IP、FA/ロボティクス製品、プロフェッショナルサービスなどを展開してきた。
同社のパーパスは「Making the Image Intelligent」。山本氏はこれを「画像を知能化し、現実世界を動かす」という意味だと説明する。創業当初はGPUの開発を中心に事業を進めていたが、2010年代にAIの普及を踏まえた形で、GPUベースのビジョンAI、すなわち画像認識AIへと発展的に展開。現在は、その認識技術をもとにロボットやモビリティを動かすフィジカルAIに注力する段階に入ったという。
山本氏はDMPの位置付けについて、GPUを起点にAIへ拡大した点ではNVIDIAと近いが、DMPはデータセンター向けのハイエンドGPUではなく、組み込み分野に特化している点が大きく異なると説明する。コンシューマ機器、ロボット、ドローン、モビリティなどでは、低消費電力ながら高性能、そして低コストが重要であり、「バッテリで動くGPU/AI」が同社の強みになるとした。
ゲーム機やデジカメで培った低消費電力GPU技術
DMPは2005年、物理描画モデルをハードウェア実装したGPU「K1X」を開発。3Dグラフィックスでは、物体の形状をポリゴンで表現するが、仮想空間上で動かす際に、光源からの光が物体に反射し、人間の目に届く過程を計算する必要がある。この光の反射モデルを金属、プラスチック、透明物体、肌などの反射面の素材にこだわらずに1クロックで高速演算できる回路を実装することで、当時の競合に対して30~60倍の高速処理を可能にしつつ、電力を30分の1~60分の1に抑えることを可能としたとする。
この技術は、2010年に任天堂の携帯型ゲーム機向けGPU IP「PICA200」として採用されたほか、同技術をスケールダウンしたGPU IPはデジタルカメラメーカーにも採用され、累計6000万台以上のカメラに搭載されたという。さらに、テレビ、プリンタ、アミューズメント機器などにも同社のGPU/IPが採用され、これまでに2億台を超える機器でDMPの技術が使われてきたとする。
エッジAIチップ「Di1」でフィジカルAIへ展開
DMPは2025年に発表したフィジカルAI向けエッジAIチップ「Di1」の提供を2026年より本格化させている。
Di1は、FP4の演算に対応する点を特徴としており、生成AIやAIの推論を高効率に処理することを可能とする。これをエッジAIチップとして採用することで、クラウド側のAI基盤とエッジ側のフィジカルAIとのデータ互換性を高め、NVIDIAの環境で学習したモデルをエッジ側で扱いやすくする狙いがある。
また、4chのステレオビジョンにも対応している点も特徴で、ロボットやドローン、モビリティにおいて、周囲360度の障害物認識や距離認識に活用することができる。AMR、ドローン、セキュリティ、モビリティなどへの展開を見込んでおり、インドのドローンメーカーと協力して、デュアルユース可能な次世代ドローンの開発にも取り組んでいるという。
AMR、AGF、ロボットアーム向けビジョンなどの実機を展示
TRICでは、DMPが注力する複数のロボティクスソリューションが展示されている。
中心となるのは、AMRおよびAGFである。物流・製造業向けに、自律走行による搬送やフォークリフト作業の自動化を実現するもので、DMPはパートナー企業のSEER、Kinco ELECTRIC、Guangdong Hinson Technologyなどのコンポーネントやソフトウェアと、自社のエッジAI技術を組み合わせて提供する。
SEERはコントローラやソフトウェア、Kincoはモーターや駆動系、HinsonはLiDARやセンサなどに強みを持つ海外企業で、DMPはこれらのパートナー技術と自社チップ、AI、開発キットなどを組み合わせ、顧客の用途に応じたAMR/AGFソリューションとして提案する。
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AMR/AGFに関しては、自社の半導体というよりもパートナーのコンポーネントと、それらを組み合わせたDMPとしてのAMR/AGF(AMR開発キット含む)の提供というビジネスモデルとなる (資料提供:DMP)
もう1つの重点領域が、ロボットアームに取り付けるビジョンシステム「Cambrian Vision System」である。ロボットアームにカメラを取り付け、AI技術と組み合わせることで、透明な物体や1mm以下の小さな部品の認識、ワイヤハーネスのハンドリングなど、従来のロボットアームでは難しかった作業の自動化を可能にする技術で、国内の大手自動車メーカーや医薬品メーカーなどで導入が進んでいるという。
ドローンではインド企業との連携も推進
TRICでは、ドローン関連の取り組みも紹介された。DMPは、インドのドローンメーカーであるideaForgeと、Di1を活用した次世代ドローンの開発を進めているという。
ideaForgeはインドの大手ドローンメーカーで、民生・防衛の双方に対応するデュアルユース領域で事業を展開している。DMPは、同社の次世代ドローンを日本市場に導入することも視野に入れており、TRICを通じて顧客にソリューションとして紹介していく考えだ。
日本市場では、インフラ点検、災害対応、警備、測量、物流、防衛など、ドローンの用途が広がっており、DMPとしては、エッジAIチップ、ビジョンAI、ドローン機体、ソフトウェアを組み合わせることで、日本の産業現場や公共領域に向けた提案を進めるとしている。
完全予約制で顧客ごとの課題に合わせた提案を実施
なお、TRICの利用は、2026年7月24日時点では完全予約制としている。背景には、製造業、物流業、半導体関連企業、ロボットメーカーなどBtoBの顧客が中心であり、それぞれの顧客ごとに見たい内容や課題が異なるため、事前にどのような課題を持っているのかをヒアリングした上で、どのソリューションを活用すれば解決できるのかを踏まえ、訪問日やデモ内容を決める必要があるためだという。
顧客は明確な目的を持って来場するため、その目的に合わせた形でDMP側がデモや検証環境を用意し、1回の来場で意思決定につながるようなスピード感を重視するという。
コストと性能の両立で日本の製造・物流現場を支援
DMPが見る日本のAMR/AGF市場の課題としては、技術とコストの両面を挙げている。同社では、日本国内のAMRやAGFの技術は、中国をはじめとする海外勢に比べると遅れている面があり、まずは技術の底上げが必要だと指摘する。同時に、日本の顧客はコストに対して非常にシビアで、費用対効果を強く求める傾向があるともしている。
そのため、単に高性能なロボットを提供するのではなく、コストと性能の両方を満たすソリューションの提供を目指す方向でAMR/AGFの展開を図っていく。製造業や物流業の生産性向上に直結し、ROIを実感できる完成品、コンポーネント、開発支援を一体的に提供することで、日本市場における導入を促進していきたい考えだ。
ビジネスモデルとしても、自社の半導体チップを提供するのではなく、SEER、Kinco、Ninson各社のコンポーネントレベルの提供から、自社開発のAMR/AGFの完成品まで幅広いソリューションの提供を狙う。AMR開発キットを活用する形で顧客側で独自開発したAMRとDMPのAMR/AGFをSEERの提供するフリートマネジメントシステム(SEERのコントローラが搭載されていればいずれも認識が可能)上で共存する形で管理することも可能な点も特徴。同社では、多くのロボットベンダが開発キットだけ、自社製品ラインナップだけ、といったDMPのビジネスモデルの一部だけを担うことが多いが、基盤技術、完成品、目的特化型ソリューションをワンストップで提供できることを戦略とすることで、他社との差別化を図るとしている。
TRICを起点にフィジカルAIエコシステムを構築
DMPは今後、TRICを通じて、独自のエッジAI半導体「Di1」、ロボティクス向けコンポーネント、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスを組み合わせたフィジカルAIエコシステムの構築を進めていくことを目指す。
生成AIがサイバー空間での知的処理を拡大する一方、製造・物流・モビリティ・ドローンといった物理空間に存在する現場では、カメラやセンサで現実世界を認識、AIがそれを踏まえた状況判断を行い、ロボットや機械を動かすフィジカルAIの存在が重要になってくる。
DMPは、これまでGPU/IPで培ってきた低消費電力・組み込み向け技術を土台に、エッジAIチップ、ビジョンAI、ロボティクスを組み合わせることで、現場で使える形のソリューションとして提供していく考えで、TRICがその推進のための体験型提案、共同検証、トレーニングの拠点となることが期待されている。







