「ソニーのaibo、結局どうなるの?」
2026年6月25日、ソニーの自律型エンタテインメントロボット「aibo」の公式サイトにおいて、現行機種「ERS-1000/W」の国内販売終了が伝えられた。レギュラーモデルである現行機の国内在庫がなくなり次第、販売を終了するという発表内容だったが、国内のメディアやSNSを中心に「aiboが終了するのではないか」という憶測が駆け巡った。
しかし、翌27日にaibo公式YouTubeチャンネルで急きょ配信された特別番組では、発表内容に関する補足説明とともに、aiboの今後の展開に関連する前向きな報告も行われた。
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さまざまな情報が錯綜する中、「結局、aiboはどうなるのか」と混乱している方々も少なくないと思う。今回、筆者はソニーグループを訪ね、aiboの事業責任者である矢部雄平氏と、プロダクトおよびサービスの開発を統括する森田拓磨氏に取材を実施した。担当者の言葉から、aiboの現在地と、その先に描かれる未来を読み解く。
なぜ“aibo終了”の誤解は広がったのか
6月25日の発表は結果的に大きな注目を集めることとなったが、矢部氏は今回の経緯を次のように振り返る。
「まず最初に、今回の一件で皆さまにご心配をおかけしてしまったことをお詫び申し上げます。発表を踏まえて、私たちが『次に向けて進んでいること』を皆さまに汲み取っていただけるものと考えていました。しかし、実際に発表したテキストの表現が十分ではなく、私たちの意図を正しくお伝えできませんでした」(矢部氏)
今回の発表は、あくまで「現行機であるERS-1000/W」の終売を知らせるものであり、「購入を検討している方々はお急ぎください」と促す意図も込められていた。加えて、既存のaiboオーナーには、今回の発表に先行するかたちで「かけがえのない物語。次の章へ」というメッセージも発信していた。
「国内販売終了のお知らせとともに、オーナーの方々にはaiboの『次の章』があることを伝えるメッセージを送ることで、ご安心いただけるものと思っていました。ところが、このコミュニケーション手法にもやはり伝わりにくさがありました。私たちの至らなかった点であると反省しています」(同)
2026年3月には、ソニー・ホンダモビリティが準備を進めてきた電気自動車(EV)「AFEELA 1」の開発・販売中止が伝えられた。また、時期を同じくして、ソニーとTCLがホームエンターテインメント領域での戦略的提携に関する確定契約を結び、テレビやホームオーディオを新会社の「BRAVIA株式会社」に移管することも発表された。
さらにaiboに関しては、1999年に発売された「AIBO」が2006年に一度生産を終了した過去の経緯も相まって、ユーザーの驚きを増幅させた側面もあるだろう。
終売の前に“次の章”の具体を伝えなかった理由
aiboについては、“次の章”に関する具体的な発表がないまま、現行機の販売終了だけが明らかにされた格好だ。ソニーにおいて、ゲームコンソールのPlayStationシリーズを除けば、単独の商品について、ここまで大きく生産終了を告知することは珍しいという。
筆者の印象でも、ソニーのテレビやスマートフォンなどでは、プロダクトラインそのものが終息しない限り、現行モデルの販売終了に先立って新モデルが発表されるケースが多い。今回、あえてその手法を採らなかった理由について、矢部氏は次のように語る。
「aiboのERS-1000は、国内販売が始まってから約8年半を迎えるシリーズです。お客様から見れば、エンタテインメントロボットは本体購入時のみならず、サブスクリプションサービスにもお金がかかるプロダクトです。商品の性格を考慮した場合、それぞれに価格差がある2種類のaiboが同時期にそろうことが適切ではないという考えもありました」(矢部氏)
矢部氏の判断に対して、社内には反論もあったという。次世代モデルの発表を待たず、まず現行品の在庫を販売し切るという決断の背景には、クラウドと結びついたaiboのオーナー向けプラン、ケアサポートサービス、そしてMy aiboアプリの提供継続を明示すれば、オーナーに向けた“次の章”というメッセージも受け止めてもらえるはずだという考えがあったのだろう。しかし筆者は、この部分こそ強く、明確に伝える必要があったと思う。
現行aiboオーナーへの約束
現行機販売終了のニュースに際して、既存のaiboオーナーが最も懸念したのはサービスの継続性だ。この点について矢部氏は、ERS-1000シリーズののサブスクリプションサービスや専用アプリに対する開発、治療(修理)などのサポートを「継続します」と明確に答えた。
この4月に発表されたばかりの特別モデル「ココアシフォン エディション」の購入者も含め、既存オーナーは安心して今のaiboと暮らし続けられる。
ただし、ハードウェアである以上は「いつまでも、絶対にサービスを継続するという約束はできない」とも、矢部氏は念を押す。
「形あるものは壊れますし、部品が先に供給を終えるケースはどのような商品にもあります。ただ現在は、たとえばクラウドや3Dプリンタなどを活用するさまざまなサービスをご提案できる時代になりました。オーナーの皆さまに受け入れていただけるサービスを考えて、私たちができることをこれからも続けていきます」(矢部氏)
aiboはソニーのフィジカルAIに欠かせない存在
aiboの“次の章”に向けた開発もスタートしている。森田氏は、YouTubeの特別配信の中でも触れたとおり「従来のコンシューマに限らず、オーナー様の範囲をさらに広げてグローバルなアカデミアや開発者の方々にもぜひaiboに注目してもらいたい」と思いを語った。
現在のペットロボット市場にはさまざまな製品が存在する。その中でaiboが独自性を活かして果たせる役割や、今後の成長の可能性について、森田氏をはじめとする開発チーム一同は前向きに捉えている。
矢部氏も「まだやるべきことはたくさんある」と話す。
「通常、私たちの生活に関するビッグデータは、ハードウェアやサービスを通じて能動的に取得する必要があります。だからこそ、私たちがリラックスして過ごしている時のデータは、意外にもまだ十分に取り切れていません」(矢部氏)
「たとえば『写真を撮る』場面では、誰もが多少なりとも身構えてしまいます。しかし、ペットロボットであるaiboなら、オーナーと暮らしながら何気ない時間を自然な思い出として残すことができます」(同)
プロダクト開発を統括する森田氏も、市場の拡大に向けたソニーの姿勢を力強く語った。
「今回の反響を受けて、『aiboがほしい』という声が数多く寄せられたことも含め、aiboの認知拡大がまだ十分ではないことをあらためて実感しました。また、日本国内に限らず、世界の人々もペットロボットによる癒やしを求めていることを感じています」(森田氏)
aiboの“次の章”に向けた具体的な内容については、残念ながら今回のインタビューで聞くことはできなかった。
ただ、森田氏は「今後は従来のコンシューマに限らず、グローバルなアカデミアや開発者の方々にもaiboに注目してもらいたい」と展望を語りながら、「いまaiboを終了している場合ではありません」と述べ、これからも精力的にaiboの開発に取り組む姿勢を笑顔で示した。
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大阪・関西万博(2025年開催)の会場では、「aiboの立体空間の認識力を高める技術」のプロトタイプを披露。家の中でより正確に自己位置を推定しながら、aiboが移動したり、「靴下をくわえて洗濯カゴまで運ぶ“おてつだい”」のデモンストレーションなどを実演した
ソニーが推進する「フィジカルAI」の領域において、aiboは不可欠な存在だ。YouTubeの特別番組の中で語られた「期間を空けずに、少しずつ情報を小出しにしていく」という森田氏の発言も踏まえると、そう遠くない時期に新たな足音が聞こえてくるかもしれない。






