- 中国テック産業の大規模展示会、香港エレクトロニクス・フェア/InnoEXの現場を見た
- 香港エレクトロニクス・フェアでは中国系メーカーの最新トレンドが見えた
- InnoEXでは人型ロボットや大型ドローンなど“実運用を前提にした技術”を多数展示
- 中国市場で急速に進むAI・ロボティクス実装の現在地を体感できる展示会だった
香港貿易発展局(HKTDC)は、2026年4月13日から16日まで4日間にかけて家電製品や電子部品などの総合見本市「香港エレクトロニクス・フェア(春)」とイノベーション・テクノロジー専門の展示会「InnoEX(イノエックス)」を香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催しました。
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香港コンベンション&エキシビションセンターで開催された「香港エレクトロニクス・フェア(春)」と「InnoEX(イノエックス)」の様子。香港エレクトロニクス・フェアはOEM/ODM色の強い展示会として知られるが、今回はロボティクスやAI、「低空経済」関連展示が増加。中国圏のテック産業が“単なる受託製造”から“AI・ロボット活用”へシフトしていることを感じさせるイベントとなっていた
香港は中国本土(特に深セン・大湾区)のサプライチェーンと国際市場をつなぐハブとして機能しています。そのため、香港エレクトロニクス・フェアはガジェットや新製品探し、OEM(相手先ブランド名製造)やODM(独自設計による製造)先の発掘など、日本も含めた周辺国のメーカーやバイヤーにとって重要な機会となっています。
一方、InnoEXは香港を中心に世界中から最先端テクノロジーを持つ企業や国・地域がブースを出展しています。2026年のテーマは「Innovate・Automate・Elevate」で、AIやロボティクス、低空経済などの最新技術や産業応用事例を紹介していました。
今回は香港貿易発展局の招待で取材に参加しました。外国プレス向けに行われたプレスツアーの模様から、今回の香港エレクトロニクス・フェアとInnoEXの注目ポイントを紹介しましょう。
香港を中心とした経済圏のメーカーや工場が多数出展
香港エレクトロニクス・フェアには、香港や深セン、台湾、東莞(ドンガン)、北京や上海などさまざまな場所からメーカーや工場が出展しています。
自社ブランドを持ち、製品を製造・販売するメーカーだけでなく、製品の色やデザインを変えたり、ロゴを付けたりして相手先のブランドとして提供するOEMメーカー、さらには製品の設計から製造まで一手に請け負うODMメーカーまで混在しています。
香港エレクトロニクス・フェアは自社ブランド製品を海外に展開したいメーカーや、OEM/ODMメーカーもしくは部品サプライヤーとして企業に採用してほしいメーカーや工場が最終製品や製品サンプルを展示しています。そのため、家電やデジタルガジェットの最新トレンドが分かるのが大きな特徴です。
2023年10月に「香港エレクトロニクス・フェア(秋)」を訪れた際には、ポータブル電源や住宅向け蓄電システム、電動自転車などが多くのブースで展示されていました。今回はLED美顔器などの美容家電や、スマートペットトイレなどのペット関連機器などが増えたようです。
特に多くのブースで展示されているのが、虹色に光るBluetoothスピーカーやアナログレコードプレーヤーなどのオーディオ機器です。ここ数年では完全ワイヤレスイヤホン(TWS)の展示なども増えているように感じます。
Hong Kong LeHang Technologyのブースでは、一般向けの「HAVIT(ハビット)」とスポーツ向けの「HAKII(ハキー)」という2つのオーディオブランドを展示していました。
HAVITブランドでは空間オーディオにも対応するノイズキャンセリングヘッドホン「HAVIT Space S1」や、完全ワイヤレスイヤホン「HAVIT Space T1」などを展示。HAKIIブランドではIPX5の防水性能を備えており、環境ノイズキャンセリング機能も搭載するスマートサイクリングオーディオグラス「HAKII WIND II」などを展示していました。
「Robopark」には中国各地のメーカーからロボットが集結
InnoEXは今回が初の大規模エリア展開となった、ロボット企業が集まる「Robopark」が目玉の一つになっていました。
AI2 Roboticsのブースでは、ロボットがコーヒーを入れてくれるデモを行っていました。ロボットが自らコップホルダーのボタンを押して紙コップを取り出し、コーヒーメーカーに設置。ボタンを押してコーヒーを抽出したら、コーヒーの入ったコップを来場者に手渡すというものです。
「Alphabot-cube」と呼ばれるロボットにはカメラが搭載されており、360度の視野を持っています。人間のようなフォルムに2本のアーム、器用な手(人の手に近い多指ハンド)を備えており、さまざまな機械と連携して作業できるのが特徴です。
「コーヒーを入れるだけでなく、産業サービスでも稼働しています。早い段階から自動車、半導体、バイオテック分野で取り組んでおり、既に商用導入と受注実績があります。2025年9月には、有名な製造メーカーから1,000台の発注をいただき、彼らの工場に導入されることになりました。工場内では部材のハンドリングや組立工程の補助などを行っています」(担当者)
Alphabot-cubeは深センや北京、上海など中国の主要都市に展開しており、「コーヒーを入れるだけでなく、アイスクリームを提供したり、エンターテインメントを提供したりできます」と担当者は語っていました。
英国パビリオンではAIやドローンなどの機器・サービスを出展
英国パビリオンでは、AIや不動産テック、ロボティクス、教育、ドローンなど、英国のテック企業が出展していました。そのうちいくつか紹介しましょう。
Haylo Tech(ヘイローテック)は、読字障害や発達障害など神経多様性(ニューロダイバージェント)を持つ子ども向けに学習を支援する「Haylo(ヘイロー)」を提案していました。
学習中に分からない箇所を指さすと、カメラが写真を撮ってAIが文字認識し、骨伝導スピーカーで読み上げてくれるというものです。ディスプレイは非搭載で、スマホアプリとの連携を行わないスタンドアロン型のデバイスのため、「気を散らすものなしに、パーソナライズされた学習体験を提供できます」とHaylo Tech創業者でCTOのSachin Deshpande氏は語っていました。
Extreme Fliers(エクストリーム・フライヤーズ)のブースでは、小型ドローン「Micro Drone 3.0 NEO」を展示していました。操縦に慣れていなくても、ボタンを押すだけで飛行できる自動操縦機能のほか、手をかざすだけでドローンが追跡してくれるAIトラッキング機能、映像をスマホアプリにストリーミングできるフルHDカメラを搭載。創業者のVernon Kerswell氏は2026年5月に発売予定だと話していました。
upLYFT(アップリフト)は、スポーツ時の体の動きを可視化してトレーニングに生かす「Track C1」と、医療機関向けにリハビリに生かす「Track M1」という2種類のウエアラブル機器を出展していました。
どちらも繊維にセンサーが埋め込まれており、Track C1はアスリートの動きをAIによって可視化することで怪我につながる動作傾向を早期に検出することも可能とのことです。
医療向けのTrack M1は2026年末までにFDA(米国食品医薬品局)の承認を取得して病院に展開する予定とのことです。手術や怪我をした人がこれを着用して自宅に帰り、病院やクリニックの外でリハビリができるようになります。
「リハビリへの取り組みが向上し、リハビリの質が高まります。医師や理学療法士が患者の回復状況をモニタリングできる点が最も重要なポイントです」(担当者)
「低空経済」ゾーンなど最新の産業向けテクノロジーも注目
InnoEXでは香港パビリオンが大々的に展示を行っていました。その中でも注目を集めていたのが「低空経済」ゾーンです。
低空経済とは主に 高度1,000m以下(場合によって3,000m以下)の低高度空域を利用した経済活動全般を指す概念で、中国政府が2024年に「新たな成長エンジン」として国家戦略に位置付け、世界的に注目を集めています。
低空経済ゾーンでは数多くのドローンとそれを活用したソリューションが展示されていましたが、その中でも特に目を引いたのがロボットアームを搭載する超大型ドローンです。
このドローンは最大100kgの搭載量を持ち、建設現場での物資の運搬や吊り上げ作業を支援できます。1回の充電で12km以上飛行できるとのことです。
「高所や人がアクセスしにくい高リスク区域へ物資を運ぶことができ、従来の吊り上げ方法で人が物を移動させる際に伴うリスクを回避できます。また、この種の作業にドローンを活用することで、吊り上げ作業の効率を大幅に向上できます」(担当者)。今後実証実験を経て導入が進められていく予定とのことでした。
香港エレクトロニクス・フェアは家電などの製品を扱う商社やメーカーにとって重要なイベントの一つですが、米ラスベガスで行われる「CES」や独ベルリンで行われる「IFA」ほど最新テクノロジーが集まるわけではありません。
一方で、ロボットやドローンをはじめとする最新テクノロジーは、中国において急ピッチに導入が進んでいます。これらの最新動向を探る展示会として、InnoEXはかなり注目度の高いイベントだと感じました。

















