物質材料研究機構(NIMS)は6月15日、安価なシリコンウェハ上への縦型窒化ガリウム(GaN)デバイスの実現に不可欠な、極めて低抵抗かつ優れた熱安定性を持つGaNエピタキシャル成膜技術の開発に成功したと発表した。
同成果は、NIMS 電子光機能材料研究センター 超ワイドギャップ半導体グループの川村史朗主幹研究員、NIMS マテリアル基盤研究センターの三石和貴副センター長らの共同研究チームによるもの。詳細は、応用物理と基礎物理を扱うオープンアクセスジャーナル「Advanced Physics Research」に掲載された。
そこでの課題は、シリコンとGaNの間に設けるバッファ層(中間層)の電気抵抗が高く、縦方向に電流を流しにくい点だった。そこで研究チームは今回、シリコンウェハ上でGaN薄膜をエピタキシャル成長させると同時に、GaN/シリコン界面で低抵抗な縦方向伝導を実現する新しいバッファ層形成技術を開発したという。
具体的な手法としては、シリコンウェハ上に1nm未満の金属膜を形成し、急速加熱処理を行った後にスパッタリングでGaN成膜を実施。これにより、シリコンと窒素を含む極薄の「アモルファスライク中間層(AL-IL)」が形成された。この中間層がシリコンとGaNの格子不整合を緩和し、GaNのエピタキシャル成長を可能にすることが、透過型電子顕微鏡観察などにより確認された。
さらに、このスパッタGaN膜を下地層として有機金属気相堆積(MOCVD)法でGaNを追加成膜させ、「室温フォトルミネッセンス測定」で品質評価をした結果、GaN本来の発光が明瞭に観測され、高い結晶品質が実証された。
続いて、シリコンウェハ裏面とGaN膜の上面に電極を形成し、電圧を印加して測定が行われた。その結果、GaN/シリコン間の界面抵抗が非常に低く、電流と電圧が比例関係を示す「オーミック特性」が得られることが判明した。これは、シリコンウェハ上の縦型GaNデバイス実現に向けた最重要要件の1つを満たす成果としている。
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(a)アモルファスライク中間層(AL-IL)形成技術によってエピタキシャル成長したGaN膜のイメージ。(b)(a)の上下方向に電圧を印加した時の電流-電圧特性。(c)GaN膜のエピタキシャル成長の度合いを示すXRDφスキャンの測定結果。(d)良好な結晶品質を示す室温フォトルミネッセンス測定結果。(出所:NIMSプレスリリースPDF)
シリコンウェハ上の縦型GaNデバイスは三次元的に電流を流すことができるため、二次元的に電流を流す横型デバイスと比較して大電流を扱うことが可能である。さらに、シリコンウェハ裏面に電極を形成できるため、製造コストを大幅に低減できる。今回の技術によって縦型GaNデバイスが実現されれば、マイクロLEDの普及やAIデータセンタの省電力化、EVの高効率化など、次世代デバイスの普及に弾みがつくことが期待されるとした。
研究チームは今後、今回の技術を用いた縦型GaN系LEDやパワーデバイス構造の試作を進め、実デバイスとしての動作実証や耐圧、オン抵抗、発光効率、信頼性などの評価を行う計画だ。また、GaN薄膜の結晶品質向上や大口径シリコンウェハへの適用性を検証し、産業応用に向けたプロセス最適化を進める方針である。これらの研究が進展すれば、低コストなシリコンウェハを用いた縦型GaNデバイス製造につながり、高効率パワーエレクトロニクスやマイクロLEDデバイスへの応用が期待されるとしている。
