この半導体ニュースのまとめ
・北海道大学が半導体デバイス試作の主要工程を実習できる「半導体プロトタイピングラボ」を開所
・ISOクラス5/クラス7のクリーンルームを備え、前工程や評価を含む実践的な教育・研究拠点として運用
・道内大学、高専、企業のリカレント教育にも活用し、北海道の半導体人材育成を推進
半導体プロトタイピングラボを開所
北海道大学は7月29日、「実践的なプロセス実習による教育」と「次世代半導体の研究開発」をリードする新たな拠点として、「半導体プロトタイピングラボ」の開所式を創成科学研究棟で開催した。
前工程や評価を実習できる設備を整備
半導体プロトタイピングラボは、半導体デバイス試作の主要工程の実習が可能な設備を備えた施設。ISOクラス5(旧米国規格のClass 100とほぼ同等)/クラス7(旧米国規格のClass 10000とほぼ同等)のクリーンルームを備え、ウェハ上に電子回路を形成する前工程や作製したデバイスの性能評価を行うための設備を整え、教育と研究の実践拠点として本格的に稼働を開始する。
ラボでは今後、2027年度末までに、設計、前工程、後工程、評価を行える主要設備を順次整備していく予定であり、実際の製造現場に近い環境で半導体の製造プロセスを学べるという点は、今後の半導体人材を育成するという観点で重要な意味を持ってくると思われる。
文理を問わず半導体を学ぶ場に
開所式では、北海道大学 半導体フロンティア教育研究機構(IFERS)の石森浩一郎機構長が、同ラボの狙いについて、単に半導体を作る人材だけでなく、新しい使い方を考え、使う人と作る人をつなぐ人材も育成したいと説明。そのためにもプロトタイピングラボで製造過程を自ら体験することが重要であり、文理を問わず広く学生に活用してほしいとの考えを示した。
半導体人材育成では、設計やプロセス、装置、材料、評価などの専門知識に加え、半導体をどのように活用するべきかといった産業側の視点も求められることとなる。単に高性能な半導体があれば良いというわけではなく、その半導体デバイスで企業の事業内容を含め、どういった社会課題が解決できるか、といった視点を持つことが、自社製品やソリューションに最適な半導体はどのようなものかという考えにつながり、それによる価値の創出にもつながる。そうした意味で同ラボは、製造プロセスを経験しながら、半導体技術と社会実装をつなぐ人材を育てる場として位置付けられるものといえる。
企業のリカレント教育にも活用
半導体プロトタイピングラボは、北海道大学の学生だけでなく、道内の大学や高等専門学校(高専)も利用可能な施設として運用される予定であるほか、松尾保孝 半導体プロトタイピングラボ運営室長は、企業のリカレント教育にも活用してほしいと説明。半導体がどのような環境で作られ、どのような準備が必要なのかを知る場としてラボを活用し、新しいチャレンジにつなげてもらいたいとしている。
北海道では、半導体産業の集積に向けた動きが進んでおり、産業界で半導体の基礎やプロセスを理解する人材の重要性も高まっている。大学や高専、企業が共通して使える実習拠点の整備は、地域全体の人材基盤を強化する取り組みとなる。
北海道の総合力で半導体人材を育成
同大の寳金清博総長は、プロトタイピングラボについて、イノベーションやアイデアを試す挑戦を最初に行う場所、試作品を作る場所、トレーニングする場所という3つの意味があると説明したうえで、北大、ひいては北海道の総合力を活かしたいとし、半導体は職人的な技術領域も含めると「総合芸術」であると表現。理系だけでなく文系も含めた総力を挙げて取り組む必要があると強調した。
同氏は、同ラボを活用して、頭も体も手も動かせる半導体人材を育てていきたいとの展望を示している。
地域の産業政策と研究開発をつなぐ拠点へ
半導体プロトタイピングラボは今後、道内の大学や高専の活用も含め、半導体にかかる人材育成と研究開発の実践の場として、北大が核となって運営していく。
北海道は現在、先端半導体製造や関連産業の集積に向けた取り組みが進んでおり、設計、製造、評価、装置、材料、システム応用までを理解する人材の育成が地域課題になっている。北大としては、国や地域の産業政策、地域社会の活性化にも貢献する拠点として、同ラボを活用していく考えである。

