この半導体ニュースのまとめ

・日本の半導体ベンチャー「ロジック・アンド・デザイン」が独自開発のASSP「LISr-RISA」の開発完了をアナウンス
・4K@60fpsの画像をリアルタイムで高コントラスト化
・TSMCの40nm LPプロセスで製造、OSATは日本のパートナーを活用予定

日本の半導体ベンチャー「ロジック・アンド・デザイン」が7月31日、都内でパートナー企業などを対象とした「“より視える化”セミナー2026 ― Build into the future with LISr ―」を開催。2023年より開発を進めてきた独自のリアルタイム画像鮮明化技術を搭載した次世代画像鮮明化チップ(ASSP:Application Specific Standard Product)「LISr-RISA(リサリサ)」の開発を完了したことを明らかにした。

半導体技術の進化とともにイメージセンサの高画素化・高感度化が進んできたが、その進化の方向性は主にスマートフォン(スマホ)での用途に適したものが多く、産業用途で求められる、ものや人の認識や検出距離、異常検知といったニーズとは異なる部分が多かった。

ターゲットはインフラ、FA、モビリティ、防衛、医療

そうした産業分野で使用される画像から価値ある情報を取り出すことを可能とするべく開発が進められてきたのがLISr-RISAとなる。LISrは、同社独自の画像鮮明化技術の名称で、ダイナミックレンジが狭くなった画素領域を独自アルゴリズムで周辺まで拡大することでコントラストを高め、カメラが記録した画像データの再現性を高めることを可能と知るものだという。一方のRISAは、リアルタイムイメージセンサアクセラレータの略で、これらの技術を1チップ化したものがLISr-RISAとなる。

LISrは、画像のコントラストをどこから見ても一定にするという処理を実施することで、画像の諧調を増やすことで鮮明化を実現する。暗い画像を明るくできる点は高感度カメラと同じだが、高感度カメラのように画像全体を一律に処理するのではなく、画像をある程度の領域に分け、その中で最適なコントラストを高める処理をリアルタイムレベルで行える点を特長としている。

  • 4ms以内に画像の鮮明化を実現できる

    独自アルゴリズムにより、4ms以内に画像の鮮明化を実現できる (出所:ロジック・アンド・デザインのプレスリリースより抜粋)

従来、リアルタイムで高コントラスト処理を行おうと思えば、それなりの回路規模のFPGAにアルゴリズムを搭載する必要があったが、回路規模の大きなFPGAは高価であり、組み込み用途などでの適用は高コストでも許される特殊用途に限られていた。LISr-RISAは、15mm角の416ピン WB(ワイヤボンディング)-BGAパッケージで同様の処理を可能とし、その適用範囲をインフラ、FA、モビリティ、防衛、医療などに拡大することを目的に製品開発が進められてきたという。

  • LISr-RISAの基本仕様

    LISr-RISAの基本仕様 (出所:ロジック・アンド・デザインのプレスリリースより抜粋)

また、ASSPとしたことで、イメージセンサと直接接続できるようになり、複数の伝送経路を経た結果、伝送時のフォーマット変換や画質の劣化などによる情報の欠落を防ぎ、より高い画質をベースに高コントラスト化ができるという点も特徴となる。

そのため、内部回路構成をブロックで考えるとかなりシンプルな作りとなっている。大まかにはイメージセンサからのデータ入力をMIPIで行い、それを内蔵のISPでYUVに変換し、LISrで鮮明化した画像をMIPIで後段に出力するという流れとなり、LISrの画像処理パラメータ制御やISPの制御用にCortex-M3を搭載しているほか、画像データの一時保管用のDDR4 DRAM(外付け)向けコントローラがそこに付随するような形となっている。

DRAMは2グループ構成だが、これは4K@60fpsの処理を行う際に必要なメモリ容量で、2K@30fpsにするのであれば1グループのDRAM構成で対応できるという。そのため、MIPIについても、現状入力が1.5Gの4レーン、出力が2.5Gの4レーン構成だが、そこまでの用途は不要というニーズに対応することを目的に各2レーンのモデルも開発を進めているという。

  • LISr-RISAの機能ブロック図

    LISr-RISAの機能ブロック図 (出所:ロジック・アンド・デザインのプレスリリースより抜粋)

4msで60fpsの画像を高コントラスト化

LISr-RISAは基本的に最大4msで60fpsの画像を高コントラストするためのASSPという位置づけだが、いくつかのサブ機能も搭載されている。

  • LISr-RISAの実チップ

    LISr-RISAの実チップ(エンジニアリングサンプル)

例えばISPスルー機能は、RAWデータではなく、YUVで出力するイメージセンサを用いる場合にISPを介さずにLISrにダイレクトにYUVを受け渡したい時に用いるものとなる。また、暗部補正機能は、暗い映像を明るくすることに特化したアルゴリズムで、基本的には鮮明化(LISr)と同じだが、よりノイズを抑えて暗い部分だけを明るくすることができるようになるとする。

ノイズリダクション機能は、一般的なメディアフィルタと特許取得済みの3次元フィルタの2種類を用意しているとするほか、鮮鋭化機能(簡易復元)により、ボケた画像や粗い画像をシャープにすることも可能だという。この鮮鋭化機能はカーネルフィルターを用いているが、ユーザー側でパラメータのカスタマイズが可能で、任意の空間フィルタを設計して活用するといった使い方ができるという。

このほか、ヒストグラム取得機能やカラーシフト機能、トーンアップ機能、オートフォーカス機能なども用意されているという。

製造はTSMCが担当

LISr-RISAはTSMCの40nm LPプロセスで製造され(後工程は国内のOSATを活用予定)、イメージセンサ、ならびに電源IC、DRAMをセットしたモジュールとしての消費電力は6Wとしている。

  • 評価ボードの1種「LISr-ISPボード」

    評価ボードの1種「LISr-ISPボード」。左右にDRAMチップが2つずつ搭載されているが、この2個で1グループという構成。容量は1チップあたり1GBでクロックスピードは2666MHzのSamsung Electronics製のものが搭載されていた

現在、エンジニアリングサンプルが完成し、評価用モジュールならびに評価用カメラモジュールを中心とした評価環境の整備も進めており、Jetsonとの接続も可能とする。会場では、イメージセンサ(カメラ)基板、電源基板、LISr-RISA基板(メイン基板)、そしてHDMI出力基板(2枚構成)の50mm角基板を5枚重ねたモジュール形式でのデモなどを見ることができた。

  • デモの様子
  • デモの様子
  • デモの様子。左型の「LISr-Camera」モジュールの構成が前から、カメラ基板、電源基板、メイン基板(+冷却ファン基板)、HDMI基板(2枚構成)となっている。モニターに映っている映像の左側が未加工の画像、右側がLISr-RISAでリアルタイム処理をして高コントラスト化した画像

同社では、顧客への提供形態としては、ASSP単体での提供(リファレンス回路の提供含む)のほか、メイン基板と電源基板の2枚セットでの提供、顧客側でのカスタムASIC/FPGAへの搭載ニーズに応じる半導体IPとしての提供、顧客のシステムそのものを受託開発として請け負う形式などを検討しているとする。

なお、量産に向けての検討項目としてソフトウェア周りのチューニングなどが残っているとのことで、この数か月以内に、そうした体制整備を進めて、量産品の提供に向けた対応を進めていきたいとしていた。