Terafabの初期投資は「550億ドル」、最大で1190億ドル規模に
イーロン・マスク氏がスペースX、xAI、テスラ向けの半導体内製を視野に掲げる一大計画「Terafab」を巡り、初期段階の資本投資額が550億ドル(約8兆5600億円、1ドル156円換算)、追加段階を含む推定総資本投資額が最大1190億ドルに達する可能性があることが分かった。
この投資金額は、グライムズ郡庁が公開した6月3日開催予定のスペースXの固定資産税に関する減免の是非をめぐる公聴会に関する告知資料に記載される形で明らかになったもので、スペースXが、同郡の「SpaceX Reinvestment Zone No. 1」において、「半導体製造と先端コンピューティングの統合製造施設」を多段階で建設する計画として記載されている。
自社消費半導体の製造工場としての位置づけとなるTerafab
Terafabはファウンドリではなく、スペースX、xAI、テスラの3社が使用する半導体の製造を担当することを目的に建設が計画されている自社ファブ的な扱いの存在。計画を主導するイーロン・マスク氏はたびたび、Terafabは3社(スペースX、xAI、テスラ)が必要とする半導体を外部ファウンドリで調達しようと思っても、必要量が確保できないとの見方を示してきており、地政学的リスクを含めて、米国内で自社で製造を行うことが重要との認識を打ち出してきた。
研究用ファブはテスラ、量産初期はSpaceX — 役割分担を明確化
2026年3月にイーロン・マスク氏がプロジェクトを公にして以降、4月のテスラの決算発表時に研究用ファブの建設をテスラが行い、Terafabの初期段階をスペースXが担当することを明らかにしていた。具体的には、テスラのテキサス州の自社工場「ギガファクトリー・テキサス(ギガ・テキサス)」のキャンパス内に約30億ドル規模の研究用ファブを建設し、Intel 14Aプロセスを活用して月産数千枚規模のウェハの生産を行うことを予定しているという。
1つの拠点でロジック、メモリ、先端パッケージングを実施へ
この研究開発ファブの経験を踏まえて建設されることとなるTerafabが、ほかの半導体工場と異なる点は、AI処理を担うロジック半導体のみならず、半導体メモリの製造も行うことを掲げていること。また、Rapidusも同様の動きを見せているが、同一拠点にて先端パッケージングまで行うことも計画しており、1つの拠点でロジックとメモリの前工程、そして先端パッケージング(後工程)も一貫して行われることとなる。
IDM回帰の発想と、その現代的な意味合い
米国以外の半導体メーカーの出自を見ると、もともとが電機メーカーの一部門であった場合が多く、各社が自社製品の競争力の源泉として半導体を内製してきた歴史がある(例えば独Infineon TechnologiesはSiemensの半導体部門がカーブアウトして設立されたし、日本のルネサス エレクトロニクスは日立製作所と三菱電機のロジック半導体部門が合併してルネサス テクノロジとなった後、NECの半導体部門であったNECエレクトロニクスが合併する形で誕生した経緯がある)。こうした自社の欲しい半導体を自社で設計・製造して調達するという時代を踏まえると、TerafabはそうしたIDM中心時代の発想に近いアプローチと言えそうである。
ただし、当時と現代で状況が異なるのは、GPUを中心とするAIアクセラレータやHBM/従来型メモリの需給がひっ迫し、調達がボトルネックとして健在化しやすいことがある。マスク氏も外部から必要な量を確保できないといった発言は、こうした供給制約の構造化があることがうかがえる。
一方で、550億ドル(最大1190億ドル)という投資規模は、税の減免措置に関する議論が先行するほど地域への影響も大きく、計画がどこまで具体化され、スケジュール通りに進むのかが今後の焦点となる。少なくとも、現時点で確認できるのはマスク氏がテスラの決算発表時に語った研究開発ファブへの30億ドルの投資と、今回、グライムズ郡の公聴会資料で明らかになった半導体製造拠点に対する初期投資としての550億ドルという投資インパクトである。自社に必要な半導体の生産量を安定的に確保しようという動きがこうした投資額に見合うか否かを抜きにすればAI時代における半導体消費企業によるIDM化は、1つの選択肢としてありうるという考えも理解できる。