GaNフライバックコンバータICシリーズをSTが発表

STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、高効率の小型USB-PDチャージャ、急速バッテリチャージャおよび補助電源の設計と構築を簡略化するGaNフライバックコンバータICシリーズとして、700V対応のGaNパワートランジスタを搭載した50W品の「VIPerGaN50W」を発表した。

電源設計の簡素化が可能に

同製品は、フライバックコントローラとゲートドライバを最適化して小型のパワーパッケージに集積。ゲートドライバを集積したことで、ゲート抵抗やインダクタンスを微調整する手間がなくなるため、製品開発期間が短縮できるほか、電力密度が向上し、部品点数も最小限に抑えることができるようになると同社では説明している。

  • 「VIPerGaN50W」

    「VIPerGaN50W」のパッケージイメージ (提供:STMicroelectronics)

この50Wのフライバックコントローラは、ゼロ電圧でのスイッチング(ZVS)による擬似共振モードで最大負荷まで動作することが可能で、軽負荷時には周波数を低減する周波数フォールドバック、中負荷から高負荷時は独自の電圧の谷をロックする機能により、スキップする谷の数を安定化する技術「バレースキッピング」によりスイッチング周波数を制限し、効率を最適化することが可能だという。バレースキッピングを活用することで、オーディオ周波数では変動が生じず、負荷範囲全体で静かに動作するとしているほか、無負荷時はバーストモードで動作し、消費電力を30mW以下に抑えることで厳しいエコ設計規制にも対応するとしている。

また、高度なパワーマネージメント機能により、電源電圧が変動した場合でも、出力パワー性能とスイッチング周波数は安定した状態を維持できるという。例えば、ライン電圧をフィードフォワードで制御することにより、過度な出力電力を抑えることができるため、設計者は過剰なスペックの電源部品を使用する必要がなくなるとするほか、ダイナミックにブランキング時間を変える機能では、周波数を制限することによってスイッチング損失を最小限に抑えることができるとする。加えて、入出力の過電圧保護、過熱保護、過電圧のブラウンイン/電圧降下のブラウンアウト保護機能も備えているともしている。

なお、VIPerGaN50Wはすでに量産出荷済みで、5mm×6mmのPower QFN(PQFN)パッケージで提供される。単価は1000個購入時に約1.09ドル。このほか、15V/50Wの絶縁型フライバックコンバータ、2次側には同期整流を実装することで、同製品を用いたコンバータ開発の期間を短縮できる評価ボード「EVLVIPGAN50WF」も入手可能な状態となっており、90VAC~265VACで動作する汎用アプリケーション向けに利用することが可能だという。