2025年10月14日から17日までの4日間、幕張メッセでは「Society 5.0」の実現に寄与するさまざまな技術が一堂に会する展示会「CEATEC 2025」が開催された。

「Innovation for All」をテーマに掲げた同展示会にて、TDKは、CEATEC AWARD 2025にてイノベーション部門賞を受賞した「エッジ向けアナログリザバーAIチップを用いたリアルタイム学習機能付きセンサシステム」を用いた“じゃんけん”デモンストレーションを実施。エッジ処理での素早い応答性・正確性をアピールした。

  • CEATEC 2025のTDKブース

    CEATEC 2025のTDKブース

必勝じゃんけんデモを支えるアナログリザバーチップ

TDKが披露したリアルタイム学習機能付きセンサシステムは、北海道大学と共同開発した「アナログリザバーAIチップ」を使用したもの。リアルタイム学習機能を有する同チップの活用により、エッジ側でも低遅延での演算処理を行うことが可能になるといい、今回はそれにTDKの加速度センサを組み合わせることで、“手の動き”という時系列変化情報を高速で処理し、出された手に対して勝利する手を表示するじゃんけんデモンストレーションが行われた。

  • “じゃんけん”デモンストレーション

    TDKブースで注目を集めた“じゃんけん”デモンストレーション

同システムへの挑戦者は、手先に1つセンサデバイスを付けた状態でじゃんけんを行う。その動きをセンシングした情報はシステム内で処理され、即座に画面が変化。このプロセスではクラウドを介する必要が無く、速度だけでなく消費電力削減というメリットも得られるとする。

AIが当たり前の存在となりつつある昨今だが、今度は新たな課題として、それらの処理を行うデータセンタなどの消費電力の急増、あるいは通信遅延の問題が表出している。そうした中で、エッジ側での高速処理を可能にするアナログリザバーAIチップは、将来的に新たなイノベーションに貢献することが期待され評価を集めているという。なおTDKは今後も北海道大学と連携してリザバーコンピューティングの研究をさらに進めつつ、同社のセンサシステムズビジネスカンパニーやエッジ領域でのセンサソリューションビジネスを展開するTDK SensEIとも連携して、AIエコシステム市場の発展に貢献するとしている。

  • アナログリザバーAIチップによるリアルタイム学習機能付きセンサシステム

    アナログリザバーAIチップによるリアルタイム学習機能付きセンサシステム

TDKのセンサを活用した“スマート白杖”とは

またブース内では、TDKのセンサをはじめとする電子部品を搭載することで、障害物検知機能やマップとの連携などを実現した、WeWALKが提供する視覚障がい者向け“スマート白杖”も展示された。同製品は1月に米・ラスベガスで開催された「CES 2025」で公開されており、国内では今回が初公開となった。

  • WeWALKのスマート白杖「Smart Cane 2」

    TDKのセンサ・電子部品が搭載されたWeWALKのスマート白杖「Smart Cane 2」

WeWALKが開発するスマート白杖では、持ち手部分に搭載されたセンサにより、通常の白杖が検知対象とする路面や足元だけでなく、腰ほどの高さにある障害物なども発見が可能とのこと。またスマートフォンと接続すると、マップと連動し目的地までの道筋を音声で案内することができるという。これまでは、すでに杖で片手が塞がっているため、スマートフォンを手に持ちながら移動するには課題が残されていたとのこと。しかし音声案内などの機能を有するスマート白杖を用いれば、片手の空いた状態で移動できるようになる。

そして、WeWALKが発表したスマート白杖の新製品である「Smart Cane 2」には、TDKの電子部品が多数搭載されている。IMUモーションセンサやMEMSマイクロフォンは、ナビゲーション機能や音声認識において重要な役割を果たす。そして障害物検知にはToFセンサが用いられ、赤外光を活用した測距により物体の接近を確認し、利用者に危険を知らせるという。その他にも数々の電子部品が採用されているといい、TDKの担当者は「新たな角度から社会課題の解決に貢献する事例。全員が抱えるわけではなくても、視覚に問題を抱える方は必ず一定数いる中で、その課題解決に貢献していくことは非常に重要」と話した。

提携発表されたポルシェのシミュレータも展示

なおTDKブースではこのほかにも、グループ会社であるInvenSenseが開発しすでに量産も始まっている「PositionSense」“9軸”位置センサや「VibeSense360」音声・動作認識センサなどのセンサシステムソリューションなどを紹介。また10月8日に技術提携を締結したポルシェモータースポーツのマシンを模した、Eスポーツ向けのドライビングシミュレータなども展示された。